モスラスクイーンの顔
馬上から話しながら進んでいるとモスラスクイーンの頭部が視界に大きく入ってきた。
やはり、横顔はアゲハ蝶のようである。
薄クリーム色の顔ばせに大きな黒い目が配されている。
そして、アゲハと違うのは短い角が額から突き出していることだ。
先ほど斬りつける時は意識しなかったが、横側から見ると角の存在が目立つのである。
魔虫の証なのだろうか。
前方に回り込むと、額の真ん中から、切れ目が入って、左右に顔面が裂けていた。
「見事に切れてるね〜」
ゴルビーが感嘆の声をあげた。
パックリ奥行きのある三角形の空間ができて、青い血で台地が染まっている。
タケルの太刀で、頭部を真っ二つにしたわけだ。
無論、鉄の刃だけで出来ることではない。
この刀剣から発現していた光の刃が、モスラスクイーンの頭部を真っ二つにしたのであろう。
これを思えば、この太刀は通常の太刀ではまったくない。
ゲームの用語で言えば、宝具であり、マジックアイテムなのだろう。
宝剣とか聖剣の類と言ってもよい。
この宝剣に斬られる瞬間、モスラスクイーンの瞳に自分はどう映っていたのであろうか。
複眼が集まった巨大な目を見てタケルは思った。
また、長い黒い触角が生々しく見えた。
タケルは黒馬ペガサスから降りて言葉を発せず、ただ魔虫の女王の亡骸を眺めていた。
馬上には栗鼠型獣人のリズが残された形だったが、彼女は何も言わなかった。
「ゴルビー参謀長!」
聞き慣れた声がした。
馬に乗って近づいてくるエリナだった。
ゴルビーはエリナに手を振り、彼女が至近距離までくると、
「エリナ大尉。城外で部隊を指揮していたそうだね〜。
大変だったと思う」
「お心遣い、ありがとうございます。
参謀長こそ、タケル殿と組んでのモスラスクイーン討伐、お見事です」
「いやはや、クイーンはタケル殿が伐ったようなものだよ。
ぼ〜くは、お手伝いしたという感じさ。
それにしても、こんな巨大な魔虫を剣でひと振りで倒すとは、タケル殿は底が知れないなぁ〜」
と言って、ゴルビーが地に降り立っているタケルを見下ろした。
「いえ、エリナさん、ゴルビーさんたちのお陰でモスラスクイーンを倒せたんです。
防御結界や風魔法の加護が無ければ、まったく近づきすらできませんでした」
「タケル殿、よくモスラスクイーンを倒してくれた。
わたしも心からお礼を言いたい。
ホヤンスクを守ってくれた」
と言って、エリナが馬を降りた。
「エリナさんたちも懸命に戦っていたのです。
みんなの力がホヤンスクを守ったのだと思いますよ」
こう言ったタケルの顔には、微笑みが浮かんでいた。
エリナに会うとなぜかホッとする。
魔虫の攻撃の憂いが消えて緊張感がほぐれたせいか、タケルの視線は女性の胸元に行きがちであった。
ゴルビー側近の獣人少女たちのスレンダーもいいが、エリナのような大きな胸部もやはりいいものだなと思う。
多分、自分は豊かな胸にぎゅっと包まれたいのではないか、そんなことも考えるのであった。




