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大捷

太刀には確かな手応えがあった。

滑らかにモスラスクイーンの額に刃が入った。


神々しい光の帯もクイーンを貫いていくようだった。


そして、落下に合わせて、太刀を縦に振り抜くことができた。


結果はどうなのかは、神のみぞ知る。

あとは落下するだけだ。


地に落ちて行くタケルの眼下には、モスラスクイーンの黒い影が、その周りには畑や疎林や草原が混在していた。


ホヤンスク城外に布陣しているエリナたちの部隊の姿も見えた。


タケルは太刀を背中の鞘に収めて手足を伸ばし大の字の姿勢をとった。


鳥はこんな光景をいつも眺めているのか。

心地いい。

経験はないが、スカイダイビングやバンジージャンプはこのような気分なのだろう。


空気の抵抗を全身に浴びて、タケルは墜ち続ける。



心地よいとともに怖くもある。地に叩きつけられたらいのちはない。


しかし、信頼があった。

ゴルビーと3人の獣人少女への信頼である。


少女たちの魔法が毒霧を防ぎ、大魔法師の魔法がタケルを天空に運び、そして今、着地のための魔法をタケルは待つ。


そういえば、エルゼの家の寝室階から地上に降りる際に右手をエルゼに、左手をエレーヌに握られ、タケルは空中をゆったりした速度で降下したことを思い出した。


両手に花と思ったけれども

、あれも着地魔法の一つなのだろう。


地上に残した黒馬ペガサスの姿が大きく見え始めた時、急に落下速度が弱まり、優しい風がタケルを包み始めた。


空気のクッションのようにタケルを受け止める。


タケルは地を眺める大の字の姿勢から、空中で立つかのような姿勢をとった。


ついには地に足をつけたのである。


そばにいたペガサスがタケルの元に近寄った。

タケルは黒馬の首を撫でながら、視線で空中のモスラスクイーンの行方を探した。


魔虫の女王は、大きく高度を下げていた。


ホヤンスクに向かっていたが、大きな(はね)は動くことなく、城壁には達し得ないだろう。


程なくして、


「ズシーン」


という地響きの音が轟く。


魔虫の女王は城壁の手前に墜落したのだった。


時を同じくして、親衛モスラスも通常のモスラスも地にバタバタと墜落した。


魔虫を統べる存在、つまりモスラスクイーンが息絶えたのであろう。


「やったー」


「うおー」


どこからともなく歓声が湧き上がった。


エリナの部隊の隊員たちは感涙にむせんだ。


絶体絶命の状況下、タケルの行動が隊を救い、ホヤンスクを救ったのだ。


「タケル殿、ありがとう」


エリナは1人つぶやいた。


東門のそばでは、


「にいちゃん、やりおるな」


ガルフが言う。

ミーニャも


「凄すぎるニャン!」


と応じる。


東門のそばでは、


「拙僧感激した!」


「タケルさん、凄いわ」


フォクラは涙を流していた。


アスカもうっすら涙を浮かべながら、


「タケルのやつ、なに凄いことにしてるのよ」


(助かったわ、この町が。

あたしが好きなだけあるわ…)


城内の救護班の天幕の中にも歓声が聞こえた。


エルゼは何があったのかと思っていると、外にいた同僚の1人が飛びこんで来た。


「モスラスクイーンが倒されて、魔虫たちが次々と死んでいるわ。

助かったのよ、私たち。

クイーンを倒したのは、タケルという剣士らしいわ!」


エルゼは不意に涙がこぼれた。


ホヤンスクの危機をタケルが救ってくれたのだ。

自分を救ってくれたあのタケルが。


(自分は凄い人と知り合ったんだ、あの日)


エルゼは感慨にふけるのであった。


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