飛翔
ゴルビーたちは黄色い薄煙の中にいた。
モスラスクイーンはそこを目掛けて飛来するようでもあった。
前方にはたくさんの親衛モスラスが集まりつつあった。
「そろそろ僕が風魔法でをタケル殿を噴き上げる。
この魔法でぼ~くは魔力をかなり消費する。
ぼ~くのハニーちゃんたち、着地は任せたよ。
強い魔法は発動できないからね。
君たちの空気の褥で優しく彼を受け止めてあげて」
「は~い、ゴルビー様!」
3人の獣人魔法師たちが唱和した。
ゴルビーは安心した表情で、魔杖を掲げて、風魔法の文言を唱え始めた。
「森の精霊よ。エルフの御祖よ。森を吹き抜けて好みを噴き上げてゆく風を起こしたまえ。その風に乗りて勇ましき者を天原に運ばん」
魔杖の先が光った。
その時タケルは、モスラスクイーンのもとへペガサスに乗って駆けていた。
望月の光が彼を照らしている。
モスラスクイーンも月明りを浴びて、200メールぐらい、上空を飛んでいる。
この魔虫の巨魁は地上のタケルのことを気にもかけず、ゴルビーたち目掛けて再び黄色い毒霧を吐こうとしていた。
タケルとペガサスがあと100メートルほどで魔虫の女王の真下に来る頃に急に風が吹き付けてきた。
上昇気流のような風。
体が持ち上がる感覚に包まれた。
(ゴルビーさんが言っていたタイミングだ!)
タケルは鐙を思い切り蹴って天翔ようとした。
体は急激な勢いで上昇していく。
タケルの視界が次々変わっていく。
ルートヴィヒたちとの共同訓練で体験した風魔法による上昇よりもずっと加速が早い。
しかし、あの訓練のお陰で戸惑わなくて済んでいた。
前方で見上げていたモスラスクイーンがいつの間にか目の前に近づき、やがて頭上を大きく超えた。
クイーンの目は黒光りする大きな目だった。
飛翔の頂点に来て速度が0になるとタケルは背負っていた太刀の鞘に手をかける。
そして、言葉にする。
「武甕槌神、経津主神、八幡神、我に強さを!」
抜刀!
そして、白い神々しい光が刀身を覆っていく。
タケルはゆっくり前転しながら、落下し始めた。
モスラスクイーンの頭部が前方下に見えて、もうすぐに達する。
タケルの目の前にグロテスクな魔虫の女王の、巨大な頭部が出現した。
蝶のような目の上の、黒い触覚が生々しく見える。
タケルは握る手に力と思いを込めた。
その刹那、刀身からの白光は大きく伸び、あたかも長大な剣に変化したかのようだった。
タケルは渾身の力で太刀を、というよりも長大な光を振りぬく。
「ズバッ!」




