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駆けていくタケル

親衛モスラスと毒霧の中で、絶体絶命の淵にあったエリナの部隊。

しかし、救いが見えた。


魔虫の女王に別方角から放たれた青白い大きな光球。

それは、大きな(はね)にあたり、まぶしく弾けた。


その後、二発目も放たれたのであった。


翅の一部が欠けていた。

ダメージゼロではない。


モスラスクイーンは、別方向からの魔法攻撃を受けたあと、飛ぶ方向をやや南に変えたのであった。


黄色い毒の息吹はこちらに向かってくることはない。

新しい攻撃対象にモスラスクイーンの敵愾心は向かっているようだった。


エリナはまだ飛んでいる親衛モスラスを風魔法で蹴散らし、他の者が弓矢で仕留め始めた。


他の魔法師も風魔法で毒霧とモスラスを押し返す。


また、親衛モスラスの多くは先ほどの主への攻撃を察知して、別の方角へと移っていった。


束の間の安堵の中、前方やや南側を飛ぶモスラスクイーンの方へ眼をやる地上から魔虫の巨魁に馬で駆けていく者があった。


(誰? 一人で立ち向かうつもりなの?)


(え、あれは!)


遠めに黒馬ペガサスにまたがるタケルだと理解される。


(いったいどうするつもりなの?)


エリナは驚愕した。

そして、根拠のない期待感が胸に萌した。


ゴブリンの大群を倒し、虐殺トカゲを討ち、闇魔法師の攻撃を回避し、剣聖ルートヴィヒとも手合わせをする。


そんなマレビト、タケルには、何か不思議な運命があるのではないか。


もちろん、今回の敵は、これまでにない、余りにも強大な存在だ。


モスラスクイーンの前で、タケルは、けし粒のように映る。


しかし、でも、


(タケル殿ならもしかしたら…)


エリナは祈るように駆けていくタケルを見つめた。


***

ホヤンスクの城壁に立つ者たちの目にも巨大なモスラスクイーンの姿は見えていた。


徐々にその姿は大きくなっている。


ホヤンスクに向かっているのは瞭然としている。


恐怖が城壁に立つ者たちに共有されていた。


しかし、遠くの黄色い薄靄(うすもや)の中で、モスラスクイーンに疾駆していく者の姿が見えると恐怖以外の情も生まれつつあった。


誰かが魔虫の女王を討ちに行くのだ。


昨日到着した剣聖ルートヴィヒだろうか?

大魔法師ゴルビーだろうか?

あるいは…。


「あれはにいちゃんやなぁ」


「うん、そのようにゃん」


「にいちゃん、頼むで」


東門付近でのガルフとミーニャの会話だった。


***

「あれ、タケルよね!」


「さようだな」


アスカの言葉をドゼルが首肯する。


(タケルさん、お願い。モスラスクイーンを倒して…)


フォクラは魔杖を置いて、タケルの方を望み、両手を組み合わせて祈った。


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