タケル対モスラスクイーン
ゴルビーが遠距離からモスラスクイーンにめがけて撃ち込んだ青白い光球は、氷結と爆作を組み合わせた魔法攻撃であった。
物体を凍らせてそして破裂させる。
ゴルビーの得意な魔法攻撃であった。
東部国境の凶悪な魔獣を討伐してきた強力な技。
「あまり効かなかったか…」
ゴルビーは遠目に魔虫の女王の姿を眺めて呟いた。
翅を破壊して、地に落とすことを期待したがそれは叶わなかった。
おそらく魔法を緩和する結界を張ったのだろう。
しかし、無傷というわけではない。
翅の一部が少し欠けていた。
また、黄色い毒の息吹も止んだのはダメージが少しはあったのだろう。
ただし、モスラスクイーンの飛行には影響はなかった。
「タケル殿、出番だよ。
ぼ〜くの魔法攻撃では、余りダメージを与えられない。
ホヤンスクの上空に行かれたら厄介だ。
タケル殿に宝剣で斬ってもらう」
「斬るんですか?」
「僕らが空中に運ぶよ。空の上できゃつを斬りつけて欲しい」
「分かりました。どうしたらいいのでしょうか?」
「きゃつの方へ馬で駆けてくれたらいいよ。
僕らがタケル殿だけを魔法で宙に舞い上がらせる。
折り合いのいいところでさ。
そこできゃつの頭を斬ってくれたらいいよ」
ゴルビーはこともなげに言っているが、あんな巨大な魔虫を果たして斬り倒せるのだろうか?
タケルに一瞬の疑念がよぎる。
しかし、自分が背負う太刀がなんとかしてくれる予感もあった。
「きゃつがこっち向かってくるようにするから、タケル殿も最初はゆっくり馬で歩んでいってくれたらいい」
「リズ、タケル殿に結界魔法を付与してやって」
「承知しましたなり。
では、タケルはん、魔法をかけるなり」
リズがおもむろに魔杖を天に掲げる。
魔法の文言を朗々と唱え始める。
「森の精霊よ、森の樹木を渡り行く御祖みおやよ」
森の穢れを防ぐ羽衣もてこの男を包み装束もて馬を包みたまえ」
タケルと黒馬ペガサスが緑色の薄い靄に包まれた。
「タケルはん、これでモスラスクイーンに違づいても死なぬなり」
「ありがとう、リズさん」
リズは微笑んだ。
タケルは魔忠の女王が飛ぶ方向へ黒馬ペガサスの鼻先を向けた。
それを見届けると、ゴルビーは再び攻撃魔法の詠唱をなし、青白い光球をモスラスクイーンに撃ち放つ。
それはクイーンの頭部に当たり大きく炸裂したが、先ほどと同じように、取り立ててダメージがないように見えた。
しかし、先ほどとは異なり、モスラスクイーンがゴルビーの方向を向き直り、飛ぶ方向変えたのである。
やはり2度目ともなるとモスラスの女王も怒りあるいは、警戒心を覚えたのだろう。
黄色い息吹がタケルやゴルビーたちの方向に吐かれた。
3人の獣人たちがすでに結界を張っていたのでゴルビーたちは平気ではあったが視界が制限されたようだ。
「タケル殿、駆けて行ってくれよ~、きゃつのもとへ。体が浮き始めたら鐙を蹴り上げて空中に行く感覚でよろしく」
タケルはペガサスを促し、駆け出した。




