女王討伐へ向けて
ゴルビーは二つのことを慮った。
一つはいかにして魔虫の女王を倒すかだ。
クイーンを倒せば、群れは秩序をうしないおのずと消散する。
飛翔したままのモスラスクイーンを討つのはかなり困難だ。
親衛モスラスも護っている。
自分の大規模魔法で、巨体魔虫の翅を破砕し、地上に墜落させて、包囲して倒す。
これが最善だ。
もしも、自分の魔法が効果がなければどうするのか?
魔虫もキングやクイーンのレベルになると、攻撃魔法をある程度無効化する魔力も備わっている。
ゴルビーはさまざまな打ち手を検討していく。
もう一つは、選びたくはないが、ホヤンスクを放棄するという策だ。
もしも、モスラスクイーンを倒せる見込みがないなら、撤退の準備は早い方が良い。
魔虫が手出ししづらい、森林の結界内に人々を誘導するのである。
街道から大門に避難させることになる。
しかしこれには、大きな懸念があった。
エルフィニアの上層部は避難民全員を受け入れるつもりはない。
エルフィニア国民はもちろん大丈夫だろう。
また、結界内への入境許可証や労働許可証を持つ者も受け入れるはずだ。
しかし、それ以外の受け入れは、拒むに違いない。
現に今次、北部に向かう際に、上層部からは、ホヤンスクの死守を要請されるとともに陥落の場合は難民を森林結界内には受け入れないという原則を示された。
これは先年の南部大森林の騒擾の際に避難民を受け入れ、そのまま南部結界内に住み着いて問題になっている前例を恐れてのことだろう。
ホヤンスク放棄の場合は、森林結界内に入れない者は、街道沿いに西へ向かうしかないだろうが、頭上から絶えずモスラスに襲われて、餌にされる結末が見える。
また、ホヤンスクを拠点にしたモスラスは周辺の集落や都市を襲うことだろう。
もしもクイーンがいっそう強大化した場合、森林結界を破って侵入することも大いにあり得る。
モスラスクイーンをここで討伐できるのが一番良いのだ。
何かしっかりした策はないのか?
ゴルビーは思案を続けた。
「ぼ〜くのハニーたち」と呼ばれる獣人の乙女たちもこういう時のゴルビーには話しかけない。
「パチン」
ゴルビーが突然自分自身の頭髪のない頭を掌で打った。
決断や気分転換の合図だ。
馬上のタケルにゴルビーが突如声をかけた。
「タケル殿、これからモスラスの女王の元へ馳せ参じよう〜。
タケル殿にも活躍してもらおう」
続けて、
「ここにいる魔法師たちよ。ぼ〜くは、少人数で毒虫の女王を討ちに行く。
君たちは横一列を保ちながら北部にゆっくり上げてきてほしい」
今度は3人の獣人乙女に向かって、
「馬でこれからホヤンスクの北東に行く。
危険は大きいが頼むよ
決して命を落としてはいけないよ」
「我らが心臓はゴルビー様に捧げています」
3人の獣人魔法師たちが背筋を伸ばして、胸に手を当てた。
その仕草は、タケルの目には、巨人を討伐するという人気のコミック作品で見た光景であったかもしれない。
「タケル殿、今度は単独で馬に乗ってよ〜。
リズはラビーネの後ろに乗ってもらうので。
詳しくはモスラスクイーンを見てから頼みたい」
「はい、分かりました!」
元気な返事だった。
ゴルビーは頼もしく思った。
タケル、ゴルビー、リズ、ミーシャ、ラビーネの5人は3頭の馬に分乗し、モスラスの巨魁を討つべく駆け出したのであった。




