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風の刃

大魔法師ゴルビーと行動をともにしていたタケルは剣を振るう機会は無かった。


しかし、拱手傍観していたわけではない。

馬を馳せてゴルビーの伝令役を献身的に務めていた。


例えば、街道の南側を護っていたフェルト親衛隊の元に駆け、中央部まで北上し、場合によってはホヤンスク城内の防衛を頼みたい旨を伝えたのもタケルであった。


街道に張った結界は今のところ不要だった。

ゴルビーの攻撃力が桁外れだったのである。


圧巻は魔虫の群れの頭上に巨大な青白い球だ。

空中に作り出されたこの球体がゴルビーの意思で破裂するのである。


それは凍結魔法であり、モスラスの群れは地に墜ちて沈黙した。


魔虫の群れは街道に近づくこともできず、ジリジリ後退を続けていた。


ゴルビーが率いる部隊は少数を街道に残して、横一列になって、北東に進みつつ、魔虫の群れを追し返していく。


北部森林結界の大門はおろか、ホヤンスクの南門にたどり着ける魔虫はもはやいなかった。


主戦場はホヤンスクの東門から北門にかけての領域に限定されつつあった。


「まだか…」


ゴルビーはひとりごちた。

彼は折々探知魔法で魔虫たちの進行状況を掴んでいた。


これほどの群れになるとモスラスクイーンが同行していることが多いが未だ探知できない。


今回の魔虫の襲撃、今のところ、どうやらしのげそうである。

しかし、クイーンが出てきた場合は別だ。

強大な体躯、強い毒、並外れた攻撃力と防御力、通常の部隊では敵わない。


エルフィニア東部の精鋭部隊なら討ち取ることはできよう。

あるいは森林結界の内側なら勝算は大きい。


又は、結界内でなくても、森林での戦いであったならば、エルフに地の利がある。

大木からクイーンに網をかけて拘束すれば良い。


しかし、ホヤンスクは別だ。

町の周囲は畑と牧場と疎林。

地の利は悪い。


また、この地の装備と武人たちでは討伐は困難に見舞われよう。


とは言え、倒せないというわけではない。

モスラスクイーンのはねを破壊し、地上に落とすことができれば、倒すことは十分可能だ。


地に堕ちさえすれば、剣聖ルートヴィッヒの剣技も期待できる。


問題はいかにして翅を破壊するかだ。

自分の魔法を直撃させられれば、可能性はあるが。


そんなことを慮るゴルビーのもとにノルトラント一行の元から伝令役のタケルが戻ってきた。


「タケル殿、ぼ〜くは、ちょっと試したいことがあります」


「なんでしょうか?」


「宝剣を抜いて、遠隔攻撃ができないか試してほしいなぁ。

その宝剣は風刃ふうじんができるかもしれない」


「そんな技ができるんですか?」


タケルは馬上で太刀を鞘から抜いた。


「タケル殿、その刀が刃の風を生み出しことを思い描いて、向こうのモスラスに振り下ろしてみて」


「分かりました」


タケルは半信半疑だったが、言われた通りに太刀が刃のように鋭い切れ味の風を生み出すことを強く思い描いた。

そして、振り下ろす。


「ひゅっ」


数十メートル向こうの魔虫には何ら影響がないように思われた。


「もう一度、やってみて。もっと具体的な想像で。

ありありと想像してみてほしいなぁ〜」


「分かりました」


「タケルさん、気合いも込めて、気合いで〜す」


と言ったのはクマ獣人のミーシャ。声が少し太い。


タケルは先ほどとは違って、実際に風でモスラスが切り裂かれる様をありありとイメージしてみた。

気合いも込めてみた。

そして、縦の打ち込み。


「びゅっ」


直後に数十メートル先のモスラスが1匹地面に堕ちた。


「あっ、落ちたよ!」


兎型獣人のラビーネが驚きの声をあげた。

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