アスカのパーティー
アスカはホヤンスクの北門のそばの城壁の上に立っていた。
そばには狐獣人のフォクラとリザードマン僧侶のドゼルもいた。
「向こうの方から羽虫どもがやってくるのぉ〜。憎き奴らだ」
ドゼルに応じて、アスカが、
「本当にそう! 明日ヒューマニアに出発だったというのに。
旅の準備が無駄になったわ」
午前中に宿屋ストロイカの浴場前でタケルと邂逅したアスカとフォクラは、一風呂浴びた後、アスカは別行動で旅の支度品を補充しに外出したのであった。
昨日は市場に足を運んだが、今日は冒険者の店に赴いたのである。
アスカは昨日買い忘れた備品を購入したり、槍先を研いでもらったりして早めに宿に戻った。
万全の状態で荷馬車の護衛ができると喜んでいたが、夕方に非常召集令が出され、ホヤンスクの防衛司令部の指示に従ったのである。
彼女たちは城壁の最終防衛線を受け持つことになった。
ここを魔虫がすり抜けたら、城内の住人たちが襲われる。
責任は重大と言えた。
アスカのパーティーは、フォクラが魔法で攻撃して、それが撃ち漏らすものをアスカが弓でいて、それでもダメな時は、ドゼルが特殊魔法で打ちのめすという方針だった。
「アスカ、うちから行くよ」
フォクラが詠唱を開始する。
「偉大なる狐神よ。
創造主とこの世を取り次ぐ我が御祖神よ。
八尾の白き狐神よ。
仇を痺れさせ討つべき御業を授けたまえ」
フォクラが魔杖を掲げると先端が青白く発光し大きな球体ができた。
「はっ」
フォクラの掛け声とともに球体はモスラスの群れに向かう。
一閃、光が弾けた。
魔虫たちは、ばらばらと地に墜ちた。
毒虫たちを焼くのでも凍らせるのでもない。
痺れさせて倒したのである。
絶命には至らないが、そのまま命の火は消えて行くのである。
「フォクラ、やるのぉ〜」
ドゼルの声は明るかった。
「拙僧も負けじと励むべし」
と言って、足元に積んでいた木片を手に取るとドゼルはやや近づいてきた魔虫に投げつけた。
「ブスリ」
投げナイフのように加工された木片が頭部に刺さり、魔虫はそのまま落下した。
魔法ではない。
ドゼルはナイフや木片投げの名手なのである。
遠くても投つける膂力に恵まれていた。
「あっ、ドゼルに獲物を取られちゃったわ」
こう言って、アスカが弓を構える。
弦を引き絞って、
「びゅっ」
モスラスの頭部に見事に命中した。
その毒虫は失速して、やはり地に墜ちた。
アスカは、ビザウム帝国の武芸学校を出ているから、大半の武芸は身につけている。
取り分け槍術が得意であったが、弓術も習得しているのであった。
アスカたちのパーティーのあたりは魔虫を寄せ付けかったが、他のパーティーは手こずって、撃ち漏らしもあった。
そんな魔虫が側面から数匹アスカたちに向かってくる。
この時ドゼルが、どこからともなく、分身のようなものを宙に出現させた。
小さい恐竜のようなもの、地球にかつて生息したラプトルのような身体を持っている。
これはリザードマンの魔法師や僧侶が持つ竜体と呼ばれる分身のようなものだ。
「我が竜体よ、いけ!」
小恐竜が動いた。




