大魔法師ゴルビー
2019年1月4日 人称代名詞の表記を一部改めました。
「やあ、久しぶりだねー、ウスリー」
クララがゴルビーと呼んだ男は、執事風のエルフの中年男性に声をかけた。
「ここに来るのは2年ぶりかなかな〜。
元気そうで何より」
「ゴルビー様がお越しくださったので安心です」
「ぼ〜くにもできないことがあるよ。
ぼ〜くのハニーたち、降りておいで」
ゴルビーが馬車の中に声をかけると、
「ゴルビー様、分かりました〜」
と答えて、
初めに降りてきたのは熊耳の獣人だった。
赤茶色のボブカットに大きめのヘアピン。
「ミーシャ、先駆けはずるいよ〜」
と言って次に馬車から出てきたのは、兎耳の獣人だった。
白いのロングヘアーを赤いシュシュで束ねる。
「結局、うちが最後なり〜」
少し不満げに降りてきたのは、リス風の獣人だった。
栗色のセミロングに檸檬色のカチューシャ。
3人はともにゴルビーと同じように魔法師のローブを纏っていた。
弟子なのであろうか。
タケルは3人の共通点がローブを着た獣人であることの他に心付いた事があった。
可愛い顔立ちをしている点、
髪飾りのようなものをつけている点、
そして胸部が薄い点である点だ。
実際の年齢は分からないが、彼女らの姿が少女風で揃っているのは、大魔法師の好みなのだろうか。
タケルは自ずと微笑まれた。
「ウスリー、こちらの門の方は、大丈夫だったのかい?」
「結界のおかげで魔獣も来ず無事でした。
ホヤンスクの方は襲撃を受けて死者も出ましたが…」
「そう。
ホヤンスクも臨時の大結界が必要かもしれないね。
上層部と話してみよう」
ゴルビーは、ふと後ろを振り向いてタケルたちの方を見た。
「これはルートヴィヒ殿、お珍しい。
ノルトラント領から騎士団が来ると聞いていましたが、まさかあなたとは」
「お久しぶりです。ゴルビー殿。
7年ぶりぐらいでしたな」
「そうです。嘆きの崖の道行きをご一緒しましたね〜」
「此度はフェルト様の親衛隊の指南役として参りました。
ささやかなながら、防衛のお役にたてましたら幸いです」
「これは心強い。魔獣どももきっと震え上がるでしょう!」
「最近ゴルビー殿は東部の森林地帯で魔獣退治に当たっていると聞き及んでおりました」
「そうなんですよ。
ちょうど東部が一段落ついたところでして」
「ゴルビー様が巨大なサソリを倒したんですよ〜」
熊耳の乙女が話に入ってきた。
「これミーシャ、割り込んではいけないよ」
「ゴルビー殿、それがし気にしませんぞ」
「ルートヴィヒ殿の寛容に感謝します」
「大蠍をどう退治したのですか?」
「氷漬けにして砕きました。
きゃつらは冷凍攻撃に弱い。
大災厄の後、我らエルフは節足系巨大魔獣との戦い方を研鑽しました。
ジューコフ将軍が命と引き換えに残してくれた戦い方を発展させたんです」
(ジューコフ将軍と言えば、エリナさんの父で、フェルトさんがエルフィニアの英雄だと言っていたな…)
タケルは耳を澄まして聞く。
「東部の方は当分大丈夫と思ったところ、今回の事変。
魔獣の群れと言えば、東部国境と決まっていたのですが、北部国境とは。
今回は、ぼ〜くも驚きました」
「驚きですねー」
兎耳の獣人が同調する。
「魔獣の南下に長老たちがい動揺して、ぼ〜くが投入されたわけなんですよ。
ちなみに同じく東部国境にいたチェーホフ殿は嘆きの崖方面に派遣されるはずですよ。
あっこれは軍事機密かな?」
ゴルビーは笑った。
ルートヴィヒもつられて笑う。
(チェーホフ殿はルートヴィヒさんの話では、エルフィニア一の剣士…)
タケルの興味は高まる。
「チェーホフ殿も動くとは」
「嘆きの崖は各国の要人もお忍びで来ていますからね〜。
北部は100年以上平和でしたので、長老たちの衝撃も大きいんですよ」
ゴルビーは頭髪の無い頭を掌でパチンと叩いた。
「アニミニアで何かが起きているのでしょうね」
というルートヴィヒの言葉を聞いて、ゴルビーも真剣な面持ちになった。
「同感です…。
ところで、その御仁は?」
ゴルビーの視線はルートヴィヒの隣にいたタケルに動いた。
「ああ、タケル殿と言って、昨日知り合いになりました。
剣の腕前はかなりのものですぞ。
今日はそれがしらの訓練に付き合ってもらいました」
「ほう、背負う刀剣も大したものだ。
こんな宝具が使いこなせるなら、腕前も推して知るべし。
そして、魔力も未知数。
タケル殿は一体何者ですか?
うーん、マレビトかな」
ゴルビーとタケルの視線がぶつかった。
しかし、当たりは柔らかだった。




