イメージトレーニング
タケルが真剣のサーベルによる200回の突きの素振りを終えるとルートヴィヒはいったん休憩を入れた。
騎士たちはタオルで汗をぬぐっていた。
ヴェルフェルミナがタケルのもとにやってきて、
「私の刺突の足捌きはどうだろうか、タケル殿」
「僕の型とはやや異なりますが、悪くないと見ました。
両手の場合は足の踏み込みに力を入れるといっそう威力がましますよ」
年上らしいヴィルフェルミナに丁寧な口調で答えた。
「ハッ」
ヴィルフェルミナはその場で両手握りの突きをタケルに見せた。
助言を取り込んで良い踏み込み方だと思った。
その旨をヴィルフェルミナに告げていると小休憩は終わり、ルートヴィヒの指示が響いた。
「次は魔獣との戦いに備えた想像上の訓練を行う。
エルフィニア軍の話によると今回襲撃してきた魔獣は主に邪悪ウルフと略奪トカゲだ。
トカゲの方とは戦ったことがある。
ウルフの方は円盾で攻撃を防いで斬るつけるのが有効だろう。
トカゲの方は地を這うように来る。
円盾なしの両手握りで、上から振り下ろす、上から突き刺す、そんな剣戟が有効だ」
ルートヴィヒは実際の剣のふりを交えて説明した。
タケルもなるほどと納得していた。
「タケル殿、実際に戦ってみてどうだったですか?」
ルートヴィヒに問われて、
「対応はいまおっしゃったようにすれば有効かと思います。
邪悪(イ―ヴィル)ウルフの方は、かなり飛び跳ねました。
城壁に上るくらいでした。
円盾はそんな跳躍の攻撃を防ぐのに適していると思いました。
攻撃は突き技がものを言うことでしょう。
略奪トカゲの方は、足に攻撃して来ますから、致命傷を与えるには、剣を振り下ろす剣戟や槍の刺突が効果的と思いました」
「やはりそうですか。
各自、邪悪ウルフや略奪トカゲを想像して、剣で戦ってみよ」
ルートヴィヒのいうのは一種のイメージトレーニングだ。
タケルもサーベルでの戦いを念頭に魔獣との戦闘を想像して、剣を構え、そして振るった。
以前格闘技マンガで、地上の最強レベルの主人公が恐竜やカマキリと戦うイメージトレーニングをしていたが、タケルも剣道の試合の前にはよく想像上の相手と戦っていた。
それが試合での対応力を磨いていく実感があった。
その格闘技マンガは、主人公とその父親が核兵器並みの脅威とされて、米国の人工衛星に常時監視されていたまでは良かったが、だんだん現実離れをしていった。
氷漬けから蘇生した原始人と戦ったり、死んだ剣豪の魂を召喚し試合をさせたりして、収拾がつかなくなってきているように感じられたのである。
しかし、イメージトレーニングの大切さを改めて実感させてくれた作品である。
一子相伝で経絡秘孔をつく拳法を伝えるマンガ、数百年無敗の流派を継承して現代格闘家たちと闘うマンガ、神戸を舞台とする父子の武術マンガ、それらとともにタケルを楽しませた格闘技マンガだった。
かつて愛読したマンガ作品を思いを馳せて、対魔獣のイメージトレーニングをするタケルであった。




