騎士たちとの訓練
タケルが貴賓館玄関近くの待合室で待っているとルートヴィヒが現れた。
タケルは冒険者の格好であった。
ルートヴィヒは昨日同様に武人の服に身を包んでいた。
「こんにちは。お世話になります」
「タケル殿、練兵場の方へ案内します」
ルートヴィヒについて一度建物の外へ出て裏手の方へ回る。
程なくして大きな運動場に似た場所が視界に映った。
小部隊を駐屯できる広さである。
その一角ではエルフィニアの軍人らしい者たちが魔法の訓練をしていた。
ルートヴィヒは軍人たちとは反対側の一角へ歩く。
そこには、フェルト以外の前日に会った女性騎士たちが集まっていた。
親衛隊の隊長、ヴィルフェルミナの長い金色の巻き髪が遠目にも目立つ。
美しい人だとタケルは思う。
荷馬車の御者である鹿の獣人ピーターもせっせと武具を運び出している。
ルートヴィヒとタケルが合流すると騎士たちがそばに寄ってきた。
「今日はよろしくお願いします」
タケルが自分から頭を下げて
挨拶する。
「こちらこそ、よろしく」
騎士たちも一礼する。
ルートヴィヒが前に出て、
「旅の移動で訓練があまり出来ていなかった。
対魔獣の訓練の前に今日はまず素振りを行う。
基礎中の基礎だが、いつも言うようにこれが非常に大切だ。
サーベルを抜いて上下の型で素振りせよ。
我が掛け声に合わせよ」
6人の騎士たちが表情を引き締め、腰のサーベルを抜く。
タケルも太刀を鞘から抜いた。
「一! 二 ! 三 !」
ルートヴィヒの声に合わせて騎士たちの横に並びタケルも長い剣を縦に振り下ろす。
(やはり、素振りが基本だ)
タケルはエルフィニアに転移してから素振りをしていなかった。
次々もろもろの事が起こり、素振りをするようなゆとりがなかった。
タケルはインターハイ決勝の後も素振りだけは欠かさず続けていた。竹刀や木刀は一乗流を加味した剣道の型で、真剣は一乗流の居合術の型で。
それは幼い頃からの自分を自分たらしめる日課であった。
対戦相手に重傷を負わせた、「突き」の型はする気になれなかったが、面、胴、籠手の型は日々続けていた。
転移の日、多家良神社へ詣でる前にも素振りをしていた。
ほぼ1週間ぶりの素振りは、すこぶる気持ちが良い。
ルートヴィヒは刀剣が持たず、各人のそばを回りながら、数を数える。
100まで数えると次は横に薙ぐ型を求め、同じように100回させた。
心地よい汗が流れる。
その次は突きだった。
ルートヴィヒがタケルを不意に呼び、騎士たちの前に立たせる。
「タケル殿の突きをこの者たちにしっかり見せてやってほしい。200回お願いする」
「分かりました。
私もサーベルを借りましょう」
「ピーター、練習用のサーベルを」
ルートヴィヒが指示するとピーターが早速持ってきた。
タケルは太刀を背中に負う鞘に戻し、サーベルを抜く白刃が煌めく。
「皆よ、サーベルは両手で握れ。魔獣にとどめを刺すイメージを持って。
そして、タケル殿の足の踏み込みに注目せよ」
タケルは回数を数えながら、突きを見せる。
それは気合が込められていた。
美しい騎士たちも同じように刺突を行う。
彼女たちも真剣な表情だった。
魔獣が再び現れてもおかしくない状況だ。
彼女たちは魔獣討伐の助力に来たのである。
剣の腕を磨くことが魔獣を倒し、生き残ることにつながる。
また、タケルとルートヴィヒの手合わせを見て思うところもあったであろう。
特にヴィルフェルミナはタケルの突きの技を吸収しようという意気込みが見えた。
それはタケルにも伝わるのである。
この麗人はきっと幼い頃から剣の修練を積んできた事だろう。
昨日の手合わせで、そう思った。
片手の一撃にあれほどの強さを載せられるのは、日々の努力の結果だ。
タケルは折々騎士たちの刺突に目をやった。
あとでの助言に役立たせるためである。
特にヴィルフェルミナに目線が流れがちだった。




