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宝嶺島の剣士たち

兵営の天幕に戻ったタケルは警備任務まで一眠りした。

ガルフは昨夜と同じく先に任務に出ていた。


この夜はグスタフが早めに呼びに来た。


「エリナ大尉から聞いた。タケル隊員は今日一日いろいろあったようだな」


「闇魔法で攻撃を受けたり、手合わせもありましたが、昨日の魔獣討伐よりは大したことないですよ」


「そうか。それと明日はタケル殿は警備任務はなしで、14:00にノルトラント一行のところへ行って欲しい。タケル隊員もルートヴィヒ殿との訓練に参加をしてくれたら良い」


「了解であります」


「ルートヴィヒ殿と手合わせして善戦したというのは大したものだな、タケル隊員は。

ルートヴィヒ殿は軍役から退いたとはいえ、宝嶺島北部で最強の剣士だった御仁だ。

彼に立ち向かえる剣士は、南部のヴァロワ王国のピピン殿だけだった。


剣術の世界は、この2人の御仁の時代が終わり、新しい時代が始まろうとしているのだろう。

タケル殿ももしかしたら深く関わって行くのかもしれぬな」


グスタフは目を細めていた。


「グスタフ大佐、あの、ピピン殿とはどんな剣士なのですか?」


「ピピン殿は今はもう亡くなっているが、南斗の剣の最高峰。

カウンター攻撃を得意として変幻自在の剣を繰り出す。

ルートヴィヒ殿と何度か手合わせをしている。

腕は互角と言われていた。


かつて2人の戦いを見たことがあったが、剣戟の応酬が凄かった。

競い合う者がいるからこそ実力を高め合える、そんなことを思ったよ」


「そうなのですね」


「ピピン殿の最後の弟子にシャルル・ブオナパルテという若者がいるが、今は彼が南部最強の剣士と言われている。

師と同じく、変幻自在の剣術を使うそうだ」


(若くして最強とは余程の剣士なのだろう。

名を覚えておこう、シャルル・ブオナパルテなる名を)


「今、北部で強い剣士は誰ですか?」


「やはりルートヴィヒ殿だろう。

それに続くのが、ブリッツェン王国のジークフリート殿。

火竜(ライバーン)を斬り倒した御仁だ」


「火竜をですか!

エルフィニアはどうですか?」


「この国は有名な弓手と魔法師は多いが、剣士はあまり…。

しいて言えば、チェーホフ殿かな」


「その方はどんな剣士ですか?」


「北斗系統の剣術の使い手だ。

東部方面で日々凶悪な魔獣と戦っている。

魔法戦闘もかなり強い。

剣士というよりは、魔法と剣術併用の戦士といった方がいいかもしれぬなぁ。

会うと優しげな御仁であるがな」


(チェーホフ殿か、エルフィニアにいるならいつか会ってみたいものだ…)


タケルの思いは広がって行く。

それにしても剣聖ルートヴィヒと知り合えたのは僥倖であった。

しかも明日からは教えも受けられるのだ。

タケルは期待感で胸が膨らむのだった。


「ああそれと、実戦的な剣術なら狼獣人のガルフ隊員もかなり強い。

恐らくホヤンスク周辺では一番の使い手だろう。

確かタケル殿も知り合いだったな?」


「はい、そうですよ!」


「奴のサーベルの扱いは抜きん出ててる。

だからエルフィニアの国境警備の仕事も任されている。

剣術は上級と謙遜してるが、実質的にはその上の仙級以上の実力だろう。

サーベルを学ぶならガルフからもいい」


「やはり、そうでしたか。強いとは感じていました」


「あ、そうだ。奴は、ノルトラントの出身だったな。忘れてた。

きっとルートヴィヒ殿のことも知っているだろう。

余りノルトラントのことをほとんど話さないから何かあったのかもしれないな…」


それぞれいろいろな事情があるのだろうとタケルは思った。

エルフではないエルゼが、エリナの妹であるように。


「そうだ、グスタフ大佐。お尋ねしたいことがあります。

湯屋(ミシタ)に行ったことはありますか?西門のそばの建物です」


グスタフは驚いていた。

そして、苦笑いをしてみせた。

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