フェルト親衛隊
2019年1月3日 人名の間違いを修正しました。
ヴィルフェルミナに剣技を教えて欲しいという師ルートヴィヒの申し出にヴィルフェルミナは驚きと感謝の念を持った。
これまでヒューマンと実戦で斬り合ったことは僅かとは言え、訓練を兼ねた魔獣の討伐は少なからず経験している。
ノルトラントの山岳部にもイエーナにも魔獣は出現する。
そこで感じたのは、師が間接的に言っている、決定力の不足だ。
強い魔物には片手での刺突ではなく、両腕の膂力を載せた決定的な一撃が必要だろう。
木の盾を砕いたタケル殿の剣戟の如くに…。
「ルートヴィヒ様がそう仰るなら…。
タケル殿、よろしくお願いします」
「分かりました。詳しいことは落ち着いたらまたは打ち合わせましょう」
「あのルートヴィヒ様、私たちも参加して良いでしょうか」
そばで聞いていた他の騎士が申し出た。
緑色のセミロングの髪に白い肌。耳は少し長い。
ハーフエルフだ。
彼女は左側の腰にサーベルを帯びていたが、右側には魔杖もさしていた。
魔法師を兼ねた騎士なのだろう。
「そうだな、クララも混ざるといい。対剣士の訓練になるだろう」
「ありがとうございます」
すると他の騎士たちも申し出をしそうな雰囲気だった。
ルートヴィヒは、
「そうじゃな、いっそのこと、ホヤンスクにいる間は、タケル殿も他の任務の合間、親衛隊の訓練に参加し、いろいろ教えあったら良い。
最初は拙者が指図しよう。
盾や魔法を用いた剣術との訓練にもなろう。
フェルト様、それでよろしいでしょうか?」
「親衛隊の訓練は、そちに任せておる。好きなようにしてくれたらよい。
蓋し、この親衛隊の戦力が向上するであろう。
タケル殿もよろしく頼む」
「フェルト様、ありがとうございます。
私にも貴重な機会です」
タケルはフェルトに一礼すると、他の騎士たちにも一礼した。
タケルは自己紹介が済んでいるフェルトとヴィルフェルミナ以外の騎士たちと自己紹介をし合ったが、その数5人。彼女らの長いフルネームは覚えきれなかった。
全員が貴族階級のということだった。
親衛隊のメンバーは一通り基本の武芸は身につけており、フェルトも含め、サーベルを腰に帯び、剣術は嗜んでいる。
ただし、その中にも得手不得手や役割があるということだった。
先ほどのハーフエルフは、クララ。やはり、魔法師の役割も担っていた。
赤毛のセミロングのニーナは弓手。
金髪で少しふくよかなゾフィーは剣と鞭を使いこなすという。
胸の丘陵がかなり大きい。
斥候や探査に秀でているのは、栗色のボブカットのパトリシア。
隊員で一番小柄だ。
キュートな顔立ちに幼児体型に見える。
茶色のロングヘアーで目がぱっちりしていたのが、ヴァレンティーネ。
医術に通じ、解毒や治癒魔法が得意らしい。
また、隊員ではないが、鹿の獣人はピーター。
荷馬車を御し、雑用をこなしているということだった。
このフェルト親衛隊は、フェルトが3年前にイエーナ侯爵に叙されたことを契機に正式に発足した。
イエーナ侯爵領は、ノルトラント本国から離れた飛び地で、エルフィニアには馬で2日くらいの位置にある。
ノルトラント大公国の第1公女が代々受け継ぐ所領であった。
歴代の公女は形だけの領主でイエーナに足を運ぶことは稀であったが、フェルトは積極的にイエーナの運営に関わっていた。
本国とイエーナの間には、シュヴァルツバルト山脈が横たわっている。
その往復の護衛役を担うのが、フェルト侯爵親衛隊である。
時にはイエーナの治安維持にも当たっている。
剣聖ルートヴィヒを指南役とし、ノルトラントの子女で、武芸や知力に秀でた者を集めた、そして見目良き女性たちの、少数精鋭の集団。
そんなフェルト親衛隊とタケルは大きく関わることになるのである。
隊員たちと自己紹介をすませると、西門の方から2人の人物がやってきた。
エリナとグスタフであった。




