表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/170

秘技太刀撃ち風車

夕日が傾いていた。

タケルとルートヴィヒ以外の者は黙して勝負の行方を見守っていた。


(速い…。2人の太刀筋がほとんど見えない。タケル殿はよくルートヴィヒ様の剣を防いでいるのだ)


ヴィルフェルミナがそう思った時に、

ルートヴィヒが目に見えぬ速さで間合いを詰め、縦の打撃を放った。


タケルが受け流し、閉じていた(まなこ)を見開いた。


そして、両手で木剣を握るやカウンターの突き。


ルートヴィヒは三段突きを予測して、三本とも見事に捌ききったところ、


突きはまだ続きがあったのだ。


想定外の4連続の刺突。


ルートヴィヒは剣聖と称されるだけあって、臨機応変に身のこなしで刺突を避けたが、


(なに?)


次の5番目の突きが襲いかかったのには、驚愕したのであった。


木剣の剣先が首の皮一枚に触れた瞬間、

剣聖ルートヴィヒは後ろ回転で突きに空を打たせ、その宙に浮かんだ右前足で木剣を蹴り上げ、後方に着地。


秘技、太刀撃ち風車。


タケルは刀こそ落とさなかったが体勢を崩す。


そこを見逃すルートヴィヒではない。

すぐに左の肩に打ち込む。


左手は剣から放され、タケルの顔が苦痛で歪む。

しかし、タケルは右手一本で持った木剣でルートヴィヒの姿に向けて再び鋭い突きを放つ。


「バスッ」


突き得たと思ったルートヴィヒの姿は消えて、背後から右肩に打ちこまれていた。


タケルは木剣を落とし、膝をついた。


両肩がやられた。

骨折しているのは確実だ。

木剣は握れず、もはや抗うことはできない。


タケルはそばに立つルートヴィヒに向き直り、


「参りました」


負けを認めた。


「2人とも見事じゃったぞ」


フェルトが拍手を始めた。

他のものも同じように拍手をした。


この手合わせ、時間にして10分も経っていないが、場にいた者には、もっと長い時間が経過したように感じられた。

それだけ緊迫していたのだ。



タケルは両腕をだらりとさせたまま立ち上がって、


「動きがほとんど見えませんでした。

連続した突きも防がれてしまい、ルートヴィヒさんの凄さを思い知りました」


「いやいや、タケル殿も大したも腕前です。

仙級以上でしょう。

5本突きにはかなり驚きました。

秘技の太刀撃ち風車を使ったのは20年振りぐらいです。

あれを使わなんだら、喉を突かれて倒れていたことでしょう。

とてもいい手合わせが出来ました。拙者も思う存分に剣を触れた。

タケル殿、ありがとう」


「こちらこそありがとうございました。

修行になりました」


「フェルト様、タケル殿の治療をお願い致します」


「もちろん、了解した。

ルートヴィヒ殿、大儀であった。

タケル殿の両肩を砕くとは案外弟子思いじゃな。

ノルトラントの武勇も示せた」


先に手合わせで肩をやられたとヴィルフェルミナと同じくタケルの肩は骨折していた。


これは弟子ヴィルフェルミナの敵討ちということもあるのだろう。


フェルトも口には出さないが満足している様子だった。


「では、タケル殿、こちらへ」


タケルがフェルトの前に佇む。


「世界を作り給いし偉大なる神よ。

この世を統すべる慈悲深き神よ。

命を与えられし我ら子羊を嘉よみしたまえ。

迷える我ら子羊を癒したまえ。

聖なる光を恵みたまえ」


フェルトの両手に白く光が宿り、タケルの両肩に手をかざす。


するとタケルの激しい痛みが嘘のように引いていったのであった。


「タケル殿、木剣を握って振ってみよ」


「はい、承知しました」


タケルは先ほど使っていた木剣を手にして振ってみる。

痛みはなく、いつも通りに動く。


治癒魔法とは実にすごい。

現代医学でも不可能なことができる。


広義の科学的なことは、何事も宝嶺島よりも現代の地球が上だという考えをしてしまいそうだったが、それは捨てた方だよいとタケルは思った。


「フェルト様、ありがとうございます。何ら問題ありません」


「そうかそれは良かった」


フェルトの微笑は高貴でかつ魅力的だった。


そばで見てみると体のラインも凹凸があって肉感的とも言えた。

気位は高いが、下の立場の者にも気遣いがある。


この人なら臣下もついていくだろうと思われた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ