表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/170

勝負の決着

バキッ!


円盾が砕け、ヴィルフェルミナは木剣を手放して後方に倒れ込んだ。


周りの者は一瞬何が起きたのかわからなかった。

だが、ルートヴィヒには見えていた。


三本突き。


タケルの突きは、ヴィルフェルミナが一本打つ間に三本放たれていたのである。

いずれも強力な刺突で。


最初と二本目の突きで円盾を破摧(はさい)し、最後の一本で彼女の右肩を撃った。


「それまで!」


ルートヴィヒの声が再び響いた。


「タケル殿の勝ちじゃ。ヴィルフェルミナは剣を握れまい」


ヴィルフェルミナは立ち上がって、苦痛で歪みかけた顔を正し、タケルに向き直った。


「タケル殿、見事な突きでした。円盾が壊れるなんて初めての経験です」


「ヴィルフェルミナさんこそ、攻防が一体となった見事な戦いぶりでした。

防戦する一方でした。

実はある事情で突きがちゃんと打てなくなっていました。

しかし、あなたが僕の力を引き出してくれました。

あなたの剣に接してどうしても勝ちたいと思ったのです」


「そういう事情があったのですね」


ヴィルフェルミナは突きだけが鋭さを欠いたタケルの剣技に違和感を覚えていたが、話を聞いて納得できたのであった。


この人は強い。

木製とはいえ、盾をも砕く突きができるのだ。

しかも同じ材質の木剣でだ。

的確で力が集中された刺突でなければ有り得ないことだ。

ここまで粘れた自分をほめてやってもいいのかもしれない。

しかし、悔しい。


「目に見えないおりを破ることができました。

ありがとう、ヴィルフェルミナさん」


タケルの真っ直ぐの視線がまぶしく感じられた。

言葉だけではない感謝の思いが込められている眼差しだった。

この人は文字通り全力を出して自分を倒しに来た。

悔しさもあるが自分も感謝したい。


「こちらこそ、手合わせを受けて頂いて感謝します」


ヴィルフェルミナがカールのかかった長い金髪の頭を下げると、ルートヴィヒが口を開き、


「フェルト様、ヴィルフェルミナは右肩の骨が砕けています。すぐに治癒魔法をお願いいたします」


「分かった。ヴィルフェルミナ、こちらへ」


「フェルト様、お手数をかけます」


ヴィルフェルミナがフェルトの前に佇むと、


「世界を作り給いし偉大なる神よ。

この世をべる慈悲深き神よ。

命を与えられし我ら子羊をよみしたまえ。

迷える我ら子羊を癒したまえ。

聖なる光を恵みたまえ」


詠唱が響くとフェルトの両手は白い光に包まれた。

そして、フェルトがヴィルフェルミナの右肩をやさしくさすると光は肩に宿りそして数秒後に消えた。


「フェルト様、ありがとうございます。肩の痛みがなくなりました」


「そうか、では、木剣を握ってみよ」


ほかの騎士が彼女に地面に落とした木剣を手渡すと、彼女はそれを右手で握り振ってみせた。


「その調子なら、大丈夫そうだな。

ヴィルフェルミナ、お前はよく戦った。

宝具を使えるような剣士を相手にあそこまで追い込んだのじゃ。

わらわも誇りに思うぞ」


「フェルト様!」


ヴィルフェルミナの頬に不意に熱いものがこぼれだした。

それは、気遣ってくれる主人のフェルトへの感謝からとも敗北のくやしさからとも思われた。


タケルは治癒魔法に驚きながら、静かにその様子を眺めていたが、ルートヴィヒがタケルのそばにやってきた。


「ところでタケル殿、拙者からお願いができました」


「なんでしょうか?」


「拙者も一つ手合わせを願いたい。

タケル殿のあの三本突きを見て剣を振るいたい気持ちが高まりました。

そして、大人気ないが、弟子が倒された以上、拙者も報いねばなりません。

ノルトラントの名折れにもなりますので」


初老の剣士は穏やかな口調と表情ではあったが、その目は厳しい光を放っていた。

タケルはその気迫に呑まれそうになりながらも真っ直ぐに見つめ返していう。


「望むところです」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ