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見えてきたもの

ガルフとミーニャの話によれば、エルフィニアはヒューマンの国に比べ獣人たちには滞在しやすいという。


森が育む命あるものを尊重する価値観が根強いため、差別待遇は少ない。


エルフの森の結界の中には、原則エルフの血筋に連なる者のみ居住できるが、獣人たちは信頼されてメイドや執事、農夫としても働いている。


ヒューマンの国々では戦争捕虜や獣人の奴隷制度が存続している国もあるが、エルフィニアでは、奴隷所有が禁止だ。


ヒューマンの領邦によっては、獣人たちへの差別待遇が結構あるらしかった。


分けてもクロイツ教新派の領邦はひどいらしい。


2人は具体的には語らなかったが、よその地でいろいろ嫌な思いも経験しているのだろう。


どの世界も不条理な区別、つまり差別は存在するのだとタケルは思った。

そして、不条理な区別はなくなっていくのが望ましいとも。


ただしそれは、世界史を(おも)うと国情に応じて段階的な道のりが現実的なのではあろう。


とは言え、急展開した歴史も存在する。


リンカーンの奴隷解放宣言は、人の良心が結実した偉大なメモリアルである。


真の平等とまではいかなかったが、勅令で数百年来の身分制度を一新した明治維新の解放令は、やはり画期的な変革だった。


もちろん、宝嶺島(このせかい)には、この世界の実情と価値観があろうが…。


屋台で1時間ほど話込んだ頃合いだろうか、タケルとエルゼは、屋台を後して、ガルフとミーニャと別れた。


エルゼの救護任務の時間が近づいていたからである。


タケルはエルゼが寝泊まりする建物まで送って、


「エルゼさん、じゃ。

また冒険者の店に行きましょう」


「はい、靴を選ぶの手伝ってくださいね」


お互いに手を振って別れたであった。


タケルは自分の天幕に戻った。


敷布に横になって一息いれる。

近くにいた若く見えるハーフエルフに時刻を聞くと体感時間を教えてくれた。


まだ任務まで時間がある。

日没までも2時間はあるだろう。


城外を少し見てみたいと思った。

臨時の(うまや)に行くとペガサスがいなないく。


きっと外に出たいのだろう。


タケルは首を撫でて黒馬の背に乗る。


南門の門番に昨日配布された臨時の認識票を示して、タケルと黒馬は南門から出た。


エルフたちが乗った馬車が何台か結界の森の出入り口である大門(ヴァロータ)へ向かっていた。

ホヤンスクから避難するに違いない。


タケルはまだ見ぬ西門へ至る道を選ぶ。


時折馬車や荷車を見かけるので、そのペースに合わせ、ペガサスの馬脚はさほど速めない。


所々に警備の人員が配されていた。


魔獣の死骸は少ないのは、襲来の数が少なかったのか、或いはだいぶ処分が進んだのだろう。


近くでは疎林と畑が視界に入っていた。


葉を見るに植えられているのは、里芋などの芋類だろう。


ブルーベリーの果樹園らしい一画も見えた。

昼のデザートで食べたその味をタケルは思い出す。


タケルのななめ後方には豊かな森が広がっている。


エルフの母なる森。

あの森から向こうは強い結界によって守られているのだ。



馬上のタケルは思う。

今日1日でタケルがこの世界で生き抜くために何をすべきかがだいぶ見えて来た、と。


剣技を一層磨くことが最優先だ。

剣の技量を落とさないためにも日々鍛錬が必須だろう。


道場や上級レベルの剣士がいればこの世界の剣術も学びたい。

相手の剣術を知れば、有効な対応を直ぐに取れるからだ。


また、魔法の習得も必要だ。

それには文字の学習が求められよう。

せめてエルフの文字は覚えたい。


理論を知るとともにまず風系魔法を身に付けたい。

回復魔法も試したい。


魔緑石やマジックアイテムへの理解も大切になってくるだろう。


剣技の上達も魔法の習得もエリナやガルフに相談んするのが近道だろう。


アスカのチームや冒険者ショップ店主の存在も心強い。


タケルはこれからやるべき事に思い巡らすと手綱を握る力も強まるのであった。



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