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獣人の主人公やキャラクター

「僕が数日前までいた世界は、言葉を話せるのが、ヒューマンのみで、獣人族もエルフもいない世界でした。魔獣も存在しません。

でも僕には、獣人族やエルフは意外に親しい存在でした」


「実際にいいへんのにどうしてや?」


「それは物語や娯楽コンテンツでよく出て来るからなんです。異世界ものという分野なのですが、僕は好きで小説やマンガをよく読んだりしていました。

ちなみにマンガというのは、絵本みたいなものです」


「ほう」


ガルフは興味深い表情を見せた。


「異世界もの作品には獣人族、エルフ、魔族、天使がよく登場するのです。

ですから、こちらに来て、実際に出会ってみて、違和感はあまり覚えませんでした。

リザードマンだけはちょっと驚きましたが…。

狼型の獣人は、僕の好きな作品で主人公として登場するんですよ」


「どんなやっちゃ?」


「強くて漢気おとこぎがあって、魔法使いの始祖のような美少女を守り続けるのですよ~」


「かっこええ役回りやで!」


「かっこいいですよ〜。犬ではなく狼の獣人でした」


その主人公は実は呪いで狼型獣人の姿になっているのだが、そのことをタケルは言う必要はないと思った。


「ヒューマンの国で獣人が主人公の物語で活躍するというのもおもろいな」


「特に僕がいた日本という国は森羅万象に神性を認める文化が基層にあって獣を人と同じように扱ったり、神様や神の使いとして尊重することもあります。

狼を祀る神社も実際にあります」


タケルは埼玉県秩父にある狼を守護神として祀る神社を思い出していた。


「そうなんか?狼が守護神か。わしの故郷にもそんなお社、あるで。

にいちゃんのいた所、少しエルフの文化に似とるかもな~」


「タケルさん、エルフの宗教観も森の中の万物に霊性を認めて、命は種を問わず尊重するというところがありますよ」


「聖なる森とつながる命ということですね?」


「そういうことにもなりますね」


タケルもエルゼやエリナ、エレーヌから聞く話から、宝嶺島このせかいのエルフの価値観には、森羅万象に霊性を認めるアニミズムが根底にあることを感じていた。


食事での殺生を嫌うのもその表れであろう。


日本では、近代化とともにアニミズムは薄らいできた。

しかしながら、まだそういう感性は残っていることも確かだ。


以前ドイツに留学していた先輩から聞いたが、ドイツの映画館で日本映画を見ていた時に夏の蝉時雨の音がカットされていたという。

夏を感じされる風物詩だというのにである。


これはドイツでは蝉の声を雑音とみなすため、わざと流さなかったということを先輩はあとで知った。


その後日本の映画が海外の映画祭に出品する際に蝉しぐれをカットして上映するということも知ったという。


ドイツに限らず、虫の声を雑音や機械音と同じ扱いをして聞いている地域は多い。

脳が人の声ではなく、雑音や機械などの音として主に右脳(音楽脳)で処理されるのである。


日本やポリネシアなどアニミズムの感性が残っている一部の地域では、虫の声を人の声と同じように主に左脳(言語脳)で処理するという。


測定器の発達で分かったことであるが、示唆に富む話である。


現代日本で今でも地鎮祭を執り行ったり、虫の声を愛でたり、パワースポットめぐりとして滝やご神体の山を訪れたりしている。


そういうことを鑑みると、森羅万象に霊性を認める感性は残っていると言えよう。


グローバリゼーションの中でそのアニミズム的感性を保つのは大変なことであるし、それを失った地域の民に対して、アニミズムが決して野蛮や未開でない事を説明する姿勢も大切なことかもしれない。


生物多様性と地球環境問題が論じられる今日、アニミズム的な感性はいっそう重要になって来ているのではないか。

そんな事をタケルは考えた。


「ニャーニャー、タケルたん、うちに似た猫型獣人は出てこないの?」


「その作品には出てきませんね。ただし、ミーニャさんにやや似たキャラクターが乙女に人気でした」


タケルが想起したのは、某文具メーカーが生み出し、テーマパークまで出来ている猫型のキャラクターであった。


地域限定のグッズやお菓子でもよく見かける、日本発のあの可愛いキャラクター。


「そうニャンや~。イイ世界だニャ~」


「赤い鎧をかぶった猫のキャラクターも人気です。これは男性の猫獣人ですが。

城のある町のキャラクターで、その地名の一部にニャンと付いた名前が付いています。お土産にいっぱい使われています」


ゆるキャラで有名なあの、滋賀県の「にゃん」である。


「へ~」


ミーニャが少し目を輝かせた。


「僕がいた国は、獣人キャラクターがいっぱい活躍する世界なのですよ~」


「わしも行ってそんな光景、みたいものや」


「うちもニャン!」


ガルフもミーニャも笑っていた。

和やかなひと時だった。

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