ガルフ対魔法師
ガルフによれば、魔法師との戦いを度々経験したのは、銅級の冒険者の時だった。
その頃、ヒューマニアで犯罪に手を染める魔法師を捕縛あるいは討伐するクエストを請け負ったという。
3〜6人のパーティーで剣士としてクエストを遂行していたが、いろいろな事情で魔法師との一対一の戦闘になることもあった。
例えばこんなことがあった。
数人のヒューマンを殺害したハーフエルフの男性魔法師を追っていた時だった。
たまたま1人で町外れを歩いていたガルフは手配中の彼と出くわした。
男はガルフに追われている事を知っていて、すぐに魔法による攻撃を放って来たのである。
土系魔法の石飛礫による強力な攻撃だった。
ガルフは負傷し、そのままでは命を失いかねない状況だった。
しかし、魔法師との戦いを見越して、ガルフが用意していたのが、魔緑石とポーションだ。
そして、内に着込んだ金属の網帷子。
中距離・遠距離からの攻撃への対策として、魔緑石で土系魔法の障壁を作る。
この時は簡単な障壁しか作れなかったが、無いよりはずっとましであった。
被弾した場合は、ポーションを用いて回復を図る。
不意打ちに備えた網帷子を着込んでいたこともあって、この時もすぐにポーションで負傷を軽減できた。
ガルフは障壁で攻撃をしのぎ、それが破壊されると二階建ての廃屋に逃げ込み様子をうかがった。
魔法師は、存在を知られた事を恐れたのか、ガルフは組し易しと考えたのか、逃走せずにとどめを刺しに来た。
この魔法師が火属性の魔法が得意だったのならば、ガルフは建物ごと焼かれた可能性もあった。
だが、土系魔法に秀でた魔法師だったので、大量の石飛礫の射出による攻撃が続いた。
建物そのものが倒壊しそうになった時、魔法師が建物に近づいて来た。
ガルフが負傷しているはずだと判断し建物が倒れる前に確認しに来たのだろう。
実はこの折、ガルフは石飛礫の攻撃に耐えながら、近づいてくるのを待っていたのである。
二階の屋根裏で。
魔法師が庇の陰に入りかけた時、ガルフは二階の屋根から剣を抜いて飛び降り、そのまま魔法師に斬り込んだ。
魔法師は呪文を詠唱する暇もなく、ガルフの剣戟に敗れ去ったのであった。
後でパーティーのメンバーたちは魔法師を1人で討ち取ったことに一様に驚いたという。
「出来るだけ、遠距離や中距離での敵との遭遇は避け、近距離では果敢に攻めていく。
これが秘訣や」
ガルフの話にタケルは頷いていた。
ばったり出くわした時は、すぐに斬る。
見晴らしの良い場所での戦闘は避け、屋内や町中で物陰や障害物を利用して戦う。
「戦う前の準備も大事やで。
生死を分けるのはここや」
ガルフは如何に気配を消して敵の魔法師に近づくかを研究していたという。
また、捕獲や討伐対象の魔法師をよく分析して、対応策を練っていたらしい。
剣の腕前をただ誇るだけの冒険者ではない。
経験者の重みのある言葉が、タケルには、ありがたかった。
「まあこんなところや。参考になったかいな?」
「勉強になりました。ありがとうございます、ガルフさん」
「そんなら良かったで」
「ガルフ、うちも参考になったニャン!」
「ポーションの大切をいっそう知りました!」
「ところで、にいちゃん、わしも質問、あるで」
「どんな質問ですか?」
「にいちゃんは、マレビトと聞いたが、元の世界には、わしみたいな狼型の獣人がおったのか?
最初にわしを見て、驚いてなかったし、気にせず普通に接してとる。
ヒューマンにしては、珍しいで」
タケルは麦珈琲を飲み干していた。
偽らずガルフに答えようと思った。




