剣士は魔法師と如何に戦うか
「にいちゃん、喫茶屋台に行かへんか?
多分、ミーニャの薙刀が研ぎ終わるまでしばらくかかるさかい。
麦珈琲でも一杯飲みながら話そうや」
「いいですね。その方が落ち着けますね。エルゼさんもどうですか?
もしも買い物があれば、その後、屋台へどうぞ」
「わたしも今、一緒に!
今日は見るだけと思ってこの店に来ましたから、気にしないでください」
「ほな、すぐ近くの屋台へ行こか。結構いい味やで」
ガルフが2人を促して店外に出ようとすると、
「ひどいニャン。うちを置いて行くんか!
うちも喫茶屋台に行くニャン〜」
「分かった、分かった。ミーニャ、かんにんや」
「ヤーコブはん、夕方また来るねん。研ぐのは、ゆっくりでいいニャン」
「了解した。こっちもありがたい。17時には仕上げておくよ」
4人が店を出てすぐのところに、木で作られた車輪付きの屋台があった。
タケルはヤーコブの店に入る前に香ばしい香りがするなぁと印象深く感じていたがまさかすぐ利用することになるとは想定の外だった。
「麦珈琲の好みあるん?」
ガルフの言葉に、
「うちは牛乳たっぷりのものがいいニャン」
「私は蜂蜜入りが好きですよ」
「僕はそのままストレートで」
「分かった。椅子に座っといて」
屋台の前には小さな椅子が5脚見える。
「おっちゃん、麦珈琲、4杯頼む。
一つは牛乳入り。
一つは蜂蜜入り。
後の二つはそのままのもの」
「毎度!」
主人は声に元気がある30前ぐらいのヒューマン男性だった。
慣れた手つきで注文の品を準備していく。
タケルはふと空を仰ぎ見た。
雲は浮かんでいたが概ね晴れ空だった。
地球で見る空と変わらない空が広がっている。
麦珈琲が出来上がるとガルフが奢りだと言ってそれぞれに渡してくれた。
タケルとエルゼにとっては、本日2杯目の麦珈琲だ。
食堂の店のものより苦味が強かったが、タケルの舌にはこの屋台の味の方が合っているようだった。
「では、にいちゃん、話すで。剣士が魔法師とどう戦えばいいかを」
カップを片手にガルフも椅子に腰掛けて言う。
「ぜひお願いします」
「そうやな、まず可能なら魔法を覚えることや。
素質があれば、ヒューマンでも魔法の習得は可能や。
上級は難しい思うが、中級レベルまでできたら、それだけでもだいぶ違うで」
「魔法の習得ですか…。僕でも可能でしょうか」
「素質があれば、できるで。
素質がない場合でも魔緑石で魔法を発動したらええ。
正確な朗詠法を覚えたら、適性のある系統の魔法は、魔緑石があれば使えるさかい。
後はスクロールという手もあるが、あれは高すぎるで」
「そうですね。スクロールは、値が張りますね」
「エルゼさん、スクロールってどんなものですか?」
「魔法陣が書いている巻物です。ほとんどのスクロールは、開くと詠唱なしで特定の魔法が起動出来るんです。
とても高価ですが、便利なことは確かですね」
「そんな手もあるんですね。
スクロールか。覚えておこう」
「では、どんな魔法が剣士には合いますか?」
この問いには、ミーニャが割り込んで答えた。
「剣士向きの魔法と言えば、風系の魔法と治癒魔法に決まってるニャン!
ガルフもそう思うやろ?」
「ああ同感や。
物理的な遠距離攻撃を風魔法で防げるし、特殊攻撃もその場からすぐに移動して躱せるで。
そして、風による加速や跳躍を得られたら、剣戟の威力が倍増や。
剣士向きと言ったら、ほんま風系魔法や!」
「なるほど。風系魔法ですか」
「治癒魔法は、どのスタイルの戦士も身につけるんに越したことはあらへんで。
まあ治癒は適性にかなり左右されるんけどなぁ。魔緑石があってもできへんこともある。
治癒魔法が困難なら、ポーションという手もあるで」
「ポーションは手軽ですよ。
わたしも作れるんですよ」
「ポーション、つまり回復薬ですね。
どこで売っていますか?」
「冒険者の店で売っとるで。
さっきのヤーコブのとこは、こんな時やし、売り切れてしもてたがな。
後は薬局や。エルゼちゃんが詳しいで、そこら辺は」
「タケルさん、ポーションを買いたい時はまた聞いてくださいね」
「その時はお願いします」
タケルは麦珈琲を一口飲んだ。
「後は月並みやけど、接近戦に持ち込むことやな。
複雑な魔法や強力な魔法は詠唱や発動に時間がかかる。
接近戦なら武器使いにもチャンスができる」
「そうでしょうね。やはり接近戦に持ち込むか」
「さっき兄ちゃんは、どのくらいの距離で戦ったん?」
「10mくらいでした。炎弾を散らして、防御するしかできませんでした」
「その距離はきついな。炎弾を躱して踏み込めたら勝機もあったかも知れんが、闇魔法を使う手練れなら、近距離の攻撃も防御も巧みなはずや。
無事だったのは、運が良かったで」
「僕もそう思います。第一撃を避けられたのは本当に運が良かったです。エリナさんのお陰です。
ヤーコブさんがガルフさんは以前魔術師と戦って勝ってると聞きましたが、参考にお聞かください、どんな風に戦ったのか」
「ガルフ、うちも聞きたいニャン!」
「武勇伝ちゅうものは、人に聞かせるのは、恥ずかしいもんやで。
でも、にいちゃんの頼みなら、話すしかあらへんな」
「お願いします」
ガルフが遠い目をして、若い冒険者時代のことを話し始めた。




