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店主ヤーコブ

「あっ、タケルたんにゃ。

すっかり冒険者の服装やニャア」


「そうなのですよ。着替える服を持っていなくて。

一式買いました。

ミーニャさんとガルフさんたちは、昨日言ってた買い物、今日、もう実現したのですね」


「そうニャンや!素早いでしょ」


猫型獣人のミーニャは、自分の手のひらで自分の頬を撫でたが、猫っぽい仕草に見えた。


背中には薙刀(なぎなた)を背負っていた。

夜中タケルと一緒だった時と同じスタイルだ。


「昼前からずっと買い物の付き合いや…」


狼型獣人のガルフの声には疲れが付着していた。

腰には昨日と同じようにサーベルを帯びている。


「余計なこと言わニャイの!」


タケルは苦笑しつつ、


「ガルフさんの小隊は僕らより早めに任務に出たんですね。

昨夜食事から戻ったら、いなかったので」


「そうや二時間くらい早かった思うで。

今日も20時から任務や。西門と街道に行くんや。

にいちゃんたちは東門周辺を警備してたそうやなぁ」


「そうなのですよ!今夜は僕もミーニャさんも22時から任務です。エリナさんの話だと、また、東門周辺だと思います」


「あそこらへんは、いっぱい魔獣の死骸が残っとるからなぁ〜。

ま、今日、明日でだいぶ片付くんちゃうか」


「西門の方は如何ですか?」


「魔獣の襲撃は比較的少なかったんやけど、ビザウム帝国領との馬車の行き来が多いで。わしらは警備ゆうより、交通整理や馬車の争いごとの仲裁や。

光源魔法があっても夜はやはり衝突しやすいよって」


タケルとガルフが話し込んでいると、タケルの背後に佇んでいたエルゼが前に出てきて、


「ガルフさん、ミーニャさん、こんにちは」


「エルゼたん、こんにちはニャン。

救護班、どやったニャン?

初めてやろ〜、魔獣討伐の場所でするニョ」


「はい、慌ただしくて、目が回りそうでした。

せめて必要最小限のことぐらいはしようと思って励みましたが…」


「エルゼたんは、薬師(くすし)の力がある。きっと救護班も助かっているニャン」


「それならいいんですが…。

タケルさんを案内しにさっきこの店にきたんですが、ミーニャさんは、この店にどんな用で?」


「それは、この薙刀を研ぐためニャン。店主は刀研ぎもできるニャよ。

昨日、魔獣をぎょうさん切ったからお手入れというわけニャン。

そうや、うち、預けてこな」


ミーニャが店主の男性エルフの方へ早足で向かう。


「にいちゃん、ここの店主、紹介しとくで。今後きっと何かと力になってくれる」


「ありがとうございます。じゃエルゼさん、ちょっと行ってきます」


「わたしもヤーコブさんに挨拶しに行きます。久しぶりなので」


ミーニャに続いて残りの3人も店主のいる番台に行く。


「よう、ヤーコブ、今日は忙しそうやなぁ」


「当たり前だよ、ガルフ。魔獣がいっぱい襲ってきたんだから。

武具と魔緑石がだいぶなくなった。

今日はミーニャにお付き合いかい?」


「まあ、そんなところや。

ところで、ヤーコブ、こっちはタケルいうにいちゃんや。剣の腕、めっぽう立つで。

虐殺(マッサーカー)トカゲを斬り倒したのはこのにいちゃんや」


「そうかこの御仁がタケルさんか。昨日、噂になってたよ」


「エルフィニアに来たばっかりなんや。

今後、いろいろ相談、乗ってやってや」


「あい、分かった」


精悍な体つきのヤーコブがタケルに目を向けて、


「この店『冒険者(アバンチュリスト)』の店主、ヤーコブです。

タケルさん、よろしく。

ガルフとは、冒険者仲間だったんだよ。

いろいろ気軽に相談してくれたらいいよ。

それと当店でのお買い上げ、ありがとう!」


「タケルです。

こちらこそよろしくお願いします。

ホヤンスクにいる間、いろいろ相談すると思いますがその時はお願いします。

早速、服装を相談して一式揃えさせて頂きました」


「ヤーコブさん、お久しぶりです」


「ああエルゼさん、久しぶりだね〜。今日はエリナ大尉と一緒じゃないんだね」


「そうなんですよ。さっきまで一緒だったんですが、用事があると行って、わたしがタケルさんをお店に案内するように言われたんです。

わたしも今日は靴を見ていこうかなと」


「ぜひ見てって!」


「ここにいるみなさんには言ってもいいと思うんですが、先ほどタケルさんが魔法攻撃を受けたんですよ。

それで姉さん、私たちと別れたんです」


「魔法攻撃?魔獣がかい?」


ヤーコブが驚いたようだった。


「いいえ、魔法師らしき者に。突然、闇魔法の炎弾を撃ってきました」


「そうだったのかい。闇魔法とは厄介だなぁ。

攻撃されて、どうなったのかな?」


「タケルさんと姉さんが反撃して、魔法師は建物の屋根に登って消え失せました」


「もしかして、ダークエルフだった?」


「はい、そうでした…」


エルゼの声が低くなっていた。


「そうかい、この事が知られるとダークエルフへの風当たり、また強くなってしまうなぁ」


そばにいたガルフもミーニャも黙って聞いていた。

何か考えるところがあるようだった。


タケルはヤーコブに近づき、


「あのヤーコブさん、これはガルフさんやミーニャさんにも問う質問になると思いますが、剣士が手強い魔法師と戦うにはどう対策を取るといいのでしょうか?

今日はエリナさんがいたので助かりましたが、一対一なら危なかったと思います」


「それは、タケルさん、最善はやはり魔法師と組んで戦う事だよ」


ヤーコブの早い返答に、


「そうニャ、そうニャ」


とミーニャが相槌を打つ。


「冒険者の時には剣もふるったが魔法師だった。戦いには、やはり相性や役割分担がある。

剣士が対応できない魔法を使われたら剣士はかなり不利だよ。

とは言え、魔法師と組めない時はいくつかの対策はできるが…」


新しい客がこちらに近づいてくる。


「ガルフ、お前の得意分野だから説明を頼む。

魔法師と剣と弓でやりあってただろ。しかも勝ってもいる」


「ああ、そうやな〜。

分かったでヤーコブ。

にいちゃん、魔法師と一対一で戦う方法やけどな、よう聞いておきや」


タケルは身を乗り出した。

きっと今後の自分の在り方にも繋がると直感されたのである。

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