冒険者の店
タケルとエルゼは冒険者向けの店にいた。
店内は広めで、衣服、靴、防具類がコーナー別に並んでいた。
店内には、冒険者らしい猛者たちが見かけられた。
主に武具を見繕っているようだ。
タケルは先ほどの襲撃から気持ちを切り替えていた。
タケルは服を一式揃えたかった。
エレーヌから借りた亡き夫の武人服と日本から着てきた服だけでは心もとない。
現代日本から着てきたチノパン、カラーシャツ、ジャケットの服装は、急な戦闘に不向きであり、しかもエルフィニアでは浮いてしまう外観だ。
戦闘も想定した動きやすい普段着づかいの服を買い求めたかった。
洗濯しやすければ、いっそう良い。
それを思うと今の自分に適切なのは、冒険者が着ている普段の出で立ちに似たものとなるのではないか?
ホヤンスクでよく見かける彼らの服装が手本と言える。
そんな思いで店内のアパレル品を眺めるが漠然としたイメージはあるものの、具体的な組み合わせが分からない。
店内には2人の店員がいた。
1人は見た目が30代くらいの男性ハーフエルフ。
冒険者の経験がありそうな落ち着いた佇まいだ。
目下、冒険者らしい獣人の客に対応中だった。
もう1人は見た目が彼より若干若いハーフエルフの異性。
キビキビした立ち居振る舞いから、この人は武術の嗜みがあることだろうと予想された。
タケルは近くにいた女性店員を呼び止めて、
「すいません、普段も着られて、急な戦闘にも対応できる、そんな服装一式を揃えたいんですが。
予算は銀貨3枚までかな」
「そうなのですね〜。戦いでは主に剣を使うということでよろしいですか?」
店員がタケルが左肩にかける長剣に視線を向ける。
「はい、そう考えてください」
「普段も着られるものということですが、防具はつけますか?」
「いえ、今回は無しで。
普段着られて、動きやすいことを優先したいと思います」
「分かりました。旅はしますか?」
「そうですねえ…」
いつまでもエルゼの家にいるわけにはいかないが、まずはここら辺に滞在してこの世界のことをよく知りたい。
とは言え、今回の警備任務で泊りがけの移動ぐらいはあり得るだろう。
「長い旅は当分ないと思いますが、短い旅はあるかも知れません」
「それでしたら…」
店員は少し考えて、
「これから寒くなっていきますから、厚手のシャツ、革のジャケット、ゆったりした厚めのズボン、フード付きのマント。
マントは寒さ対策になりますし、短い旅でも敷物にしたり、重宝しますよ。
革のブーツもいいですね」
「それでお願いします」
「新品と中古がありますがどうしますか?」
「新品が望ましいですが、僕の体の大きさに合うかどうかで決めてください。
柔軟に対応してくれて良いですよ」
「はい、分かりました。
では、一式を取り合わせてみますね。
その前にお体のサイズを測りますから、試着室へどうぞ」
「エルゼさんは見たいものあれば、見ていてくださいね。僕のことは気にせずに」
「はい、それじゃ、靴を見ておこうと思います」
タケルは試着室に入り、店員は採寸に取り掛かった。
長さの単位は、エルゼから聞いていたエペというものだったが、自分の胸囲や胴回りの数値から推して、1セントエペは、1センチメートルとほぼ同じだと分かった。
単位の体系が同じなのはありがたいとタケルは賢者ロベスティーヌのことを想った。
売り場に戻った店員が持ってきたものをタケルが着込み、ブーツも履いてみた。
あまり映りはよくないが、一応鏡のようなものの前に立ってみる。
「いかがですか?
大きさが合わない場合は、お客様のお体に合うように仕立てます。
数日かかりますが」
「サイズはちょうどいいみたいです。
ちょっと一緒に来た女性を呼んできて頂けますか?
彼女の意見を聞きたいので」
「はい、お待ちください」
程なくして、エルゼが店員とともに現れた。
「エルゼさん、呼び立ててごめん。
この服装どうかな?
違和感はないでしょうか?」
「タケルさん、似合います!」
エルゼは目を見張った。




