時間の体系
「エルゼ、注文が決まった?」
ロベスティーヌの話題に夢中になっていたところ、エリナがメニューのことを思い出した。
「姉さん、ごめん、忘れてたわ。
みんなでベリーの盛り合わせを食べましょう。
飲み物は、わたしも麦珈琲で」
「分かった」
エリナが店員を呼んで注文を告げた。
「ついでに質問なんですが、エルフィニアでは、時間ってどうなってるんでしょうか?
一応見張り台で鐘が鳴っていたのは知っていますが。
時計で時間を理解したりするのでしょうか?」
エルゼが反応する。
「え、と。わたし達エルフは、体内時計でだいたい分かるんです。
ただ不規則な生活なんかをしてるとずれてくるので、時々魔法道具で調整しています」
「そうそう、森の中だけで暮らしていたらさほど狂わないけど、結界をでたら、ずれていく時があるよ」
「そうなんですか。体内時計で分かってしまうのですね。
便利そのもの。
例えば、今、何時になりますか」
「今は青の時余り一つ三刻、ヒューマン風の言い方だと13時45分です。
あっ、これもロベスティーヌ様が関係していましたね!」
「多方面で貢献してるのですね。どんな関わりが?」
「えーと、時刻を細かくしたんです。
ヒューマンには、昔から1時間という単位はあったんですが、以前は1時間がエルフと同じく4つ刻みでした。
賢者様は60個に分けたんです。
もともと存在した24時間制の時刻表示をヒューマンの世界に定着させたのも功績と言えます。
そうそう、賢者様のお弟子さんたちが一層正確な時計を作るようになりました。
ヴァロア王国の時計は正確で有名なんですよ〜」
「時計があるのですね。安心、安心」
鐘の音、猫の目の形や月の高度などで時刻はある程度判断できるのだろうが時計の存在はやはり心強い。
「時計、ヒューマンは使いますね。エルフの町では、時計はそんなに置いていませんが、ヒューマンの町では、時計を結構見かけたりします。
エルフの時刻の一般的な言い方は
黒の時は0時
赤の時は6時
青の時は12時
白の時は18時
過ぎた時は余りをつけて、達してない時は足らずをつけます。
22時45分なら、黒の時足らず二つ三刻。
一刻が15分です。
エルフィニアでは分刻みでは余り言いません」
エリナが補うように、
「一般のエルフは賢者様の時刻表示を余り使わないけれども、軍関係者は頻繁に使っているよ。
実用的だからね。
今日の警備任務の開始は、軍人の言い方だと二十二時、マルマル分。
タケル殿、今夜の任務開始の時刻は分かっていたかい?」
「よく分かっていませんでした。夜遅めと聞いてはいましたが…。
今日、エリナさんにあった時聞けばいいと思って」
タケルは苦笑いを見せた。
「この店は時計がないけど、ヒューマンの利用が多い店には時計があったりするんだよ。
ちなみに獣人も体内時計で時刻を把握する種族が多い」
「獣人族もですか!」
人間にも体内時計があるはずだが、この世界のヒューマンも元の世界と同じように本能に備わる時計を生かせていないようだ。
タケルがそう思っているとハーフエルフの店員が近づいてきた。
大きな平皿にはいっぱいのベリー類が並んでいる。
濃い赤、薄い赤、青、緑、茶色、いろんなベリー類が両眼を楽しませる。
ラズベリー、クランベリー、ブルーベリー…。
干したチェリーもあるようだ。
エルフの国は、果実類に恵まれているんだなぁ。
ちょっと感動したタケルが大皿から視線をエルザに移すとその瞳は輝いている。
「エルゼさん、エリナさん、いっぱい味わってください。もちろん僕も楽しみます!」
3人は一斉に手で小さな果実をつまんで口に運ぶのであった。




