アルズという穀物
思いを巡らせていたエリナが突然、
「ナンファンで食べられてるアルズかな?あれは白い粒だったわ。炊いて食べるてる。ナンファンの軍人が持参していたのを思い出したよ」
「あ~なるほど~、アルズ。
確かに条件に当てはまる。
黒いものもあれば、白いものもあると聞いています。
炊いて食べるものです。わたしも本で読んだことがあります」
「炊いて食べてるところを一度だけ見たことがあるが、タケル殿のいうコメというものかもしれないなあ。
白くてふっくらしてた」
「本当ですか!アルズって言うんですね!
それ、エルフィニアで手に入るでしょうか?」
タケルはこの世界で米を食べるのは難しいと考えていたが、それは嬉しい誤算だったようだ。
「う~ん、ここら辺では、難しいと思う。
エルフィニグラードだったら或いは手に入るかな…」
「そこは遠いんですか?」
「そうだな~、ここからだと馬で最低10日はかかるよ。エルフィニアの南西の端っこに位置してるんだよ」
「最低、10日ですか。当分は行けそうにないですね。
エルフィニグラードは交易とかが盛んなんでしょうか?」
「盛んだよ。黒川に面しているからね。大きな港がある。
エルフィニア最大の都市で一番賑わっている町なんだ。
外国の公館もそこに集中している。ナンファン地方の国々の公館ももちろんあるよ」
「それなら期待できそうですね!いつかその町に行ったら、ぜひ探してみます!」
「タケルさんは、アルズが本当に食べたいんですね〜。覚えおこうっと」
「タケル殿、私も覚えておくよ~」
「ぜひ、覚えておいてください!」
笑顔を浮かべるタケルだった。
そうこうしているうちに、メインディッシュが運ばれてきた。
鱒類の包み焼きだった。
腹のなかには、刻んだキノコと長ネギ、香草が詰められていて味は抜群によかった。
鱒類は渓流魚の山女魚の味に似ていて、サイズはそれよりやや大きい。
エルフィニアは森林に恵まれているというから、清流も多いのだろう。
タケルは口元を緩めた。
この料理を食べただけでもこの食堂に来た甲斐があったかもしれない。
「これは美味い!」
「タケル殿、喜んでくれて嬉しいよ。注文のし甲斐があった」
「エルフィニアでは、魚も食べるんですね」
「うん、神官以外は結構食べるよ。
四つ足の獣や鳥は食べないけど、渓流魚はエルフも食べる。
宿場町にはいろいろな種族がいるので、魚介類ばかりでなく、普通に肉も供されてる」
「そうだったら、肉が食べたい時は、宿場町に来たらいいんですね!」
「そういう事になるかな。タケル殿は、トカゲの肉が食べたいらしいな」
「トカゲは、今は遠慮しておきますよ〜」
エリナとタケルのやり取りで、エルゼも笑いを漏らした。
「タケル殿、最後に飲み物など何か頼もうか?」
「いいですね! 僕は麦珈琲を頼もうかな」
「了解。エルゼは?」
「姉さん、ちょっとメニューを見せて。果物かお菓子も食べた〜い」
エリナがメニューをエルゼに手渡した。
回覧板のような木の板に紙1枚が留められていた簡単なメニューであるが、タケルの目には、気になったことがあった。
「あのエルゼさん、そこに書いてるのは、もしかして数字ですか?」
「そうですよー」
タケルは驚いた。
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そこには、解読できない文字とともに、タケルに馴染み深いアラビア数字が載っていたのであるから。




