町役場と食堂
警備の任務は何ら問題なく日の出を迎え、タケルたちの隊は次の隊と交替した。
エリナとは、昼過ぎに会って買い物に行く約束をし、タケルは天幕で眠りについた。
昼に目覚めると天幕の中は、数人が寝ているだけだった。
タケルが太刀を肩にかけて待ち合わせ場所に向かうべく、出入り口で外の空気に触れると、ちょうどエルゼが来ていた。
「タケルさん、こんにちは。いえ、おはようかしら」
エルゼは微笑んだ。
タケルも微笑み返して、
「じゃあ、おはようにします。エルゼさん、おはよう!」
「姉さんからタケルさんを呼んで来てと頼まれたの。
支度金を受け取ったら、買い物の前に食事しましょうって」
「それはいいですね!お腹がすきました」
「最初に町役場に案内します。
建物の中にある出納窓口で支度金を受け取ってください。
姉さんもそこらへんで待ってます」
「分かりました。
町役場は馬で行ったほうがいいですか?」
「歩きで大丈夫ですよー。
買い物の際、馬で行くと逆に少し不便かも」
「それなら、ちょっと馬に挨拶だけして戻ってきます」
と言うやタケルは天幕の裏手の臨時の厩に駆けていった。
黒馬ペガサスの前に来ると、
「昨日はありがとう。昨夜は休めたかな?
これから買い物に行ってくる。では」
と声をかけると、
「ヒヒーン」
とペガサスはいななきを上げて身震いした。
別れを惜しんでいるかのようだった。
タケルは再びエルゼの元に戻り、一緒に役場に向かった。
道々、昨夜の屋台街に差し掛かると、
「タケルさん、昨日はここで活躍したようですね」
とエルゼが話を振る。
「活躍はしてないですよ!つまらないいざこざでした。ちょっと大げさになってしまって…」
ところで、エルゼさん、なぜその話を?」
「治療救護班の1人がタケルさんの活躍を見たと言ってたんです。
素敵な冒険者2人と一緒だったみたいですね〜」
エルゼは強いて笑顔を拵えた。
「彼女のうちの1人と一緒に魔獣と戦ったんですよ。その縁で夜に軽食を一緒に取ったんです。
ピロークという料理がおいしかったです」
「そうだったんですね〜。やはり、一緒に戦った人と。
はい、ピロークはわたしも好きですよ!」
エルゼはちょっとホッとしたようだった。
それから10分ほど歩くと木造の役場の建物が現れ、玄関でエリナが待っていた。
武装服の略装といったいでたちであった。
「タケル殿、これを」
と言って渡されたのは、伝票のようなものだった。
字が記されているが、やはり読めない。
「これをあの窓口に持って行ったら、支度金を受け取れるよ。私はすでに受け取ってある」
両替所のようなところにタケルがその紙片を持って行くと、係りの者がタケルに硬貨を渡した。
銀貨4枚に銅貨50枚。
どれぐらいの価値なのか分からないが、昨夜注文したピロークが確か一つ銅貨1枚だった。身の回りの品は揃えられる金額だとエリナは言っていた。
タケルは受け取りのサインを求められたので、
「一乗 建」
と漢字で書き記した。
「珍しい文字ですね」
と係りの女性ハーフエルフが言うと、
「遠い国の文字なんですよ~」
とタケルは応答した。
「それじゃ~、タケル殿、食堂に行こう。好き嫌いはあるかい?」
「多分無いと思いますが、食べたことのないものが出てきたらちょっと分からないです」
苦笑いするタケル。
「この町の食堂は基本的にエルフ系の料理が多いので、そんなに癖がないから大丈夫ですよ~」
とエルゼが安心させる言葉を付け加えた。
町役場のすぐそばに位置した店は、賑わっていた。
パンや魚が焼けるような香ばしい匂いが鼻先を過ぎる。
彩り豊かな料理が載った皿を店員たちが運んでいた。
タケルの食欲はいやが上にも高まった。




