猫獣人と狼獣人
「ガルフ、一緒に買い物に行くゆうた約束、どうなとるニャン?」
「それは…」
ガルフの視線は少し泳いでいた。
ミーニャの表情はちょっぴり怒気を含んでいたが、
「ミャア、お互いに無事やったのはよかったニャン」
緩んだのであった。
「そうやなぁ。お、お互い無事でよかったで~」
「ガルフは、タケル隊員と知り合いニャンか?」
「そうや。エルゼ殿とタケル殿がゴブリンに襲われていて、エリナ大尉と助けに行ったんや」
「ふ~ん、そうニャンや」
「なぁ、タケル殿!」
ガルフは「約束」の話題をそらすのに必死のように思えた。
タケルは諾い、
「そうですよ。ガルフさんのお蔭で助かりました。馬で運んでも頂きました」
「ふ〜ん。それにつけても、ゴブリンが襲って来たっていうの、けったいな話ニャン」
「ゴブリンって襲ってこないものなんですか?」
猫耳を持った獣人の言葉がタケルの興味に刺さった。
「そうニャン、ここらへんのゴブリンは、おとなしいものだニャン。
結界の外の森の奥で、採集や植物栽培して静かに暮らしているニャン。
余所の土地みたく、家畜を襲うたり、女性をさろうたり、せんはずニャのに〜」
「統率者が現れたんちゃうか」
ガルフが話に復帰した。
「統率者ですか?」
「そうや。
ミーニャがゆうようにここいらのゴブリンは、悪さをほとんどしない、おとなしい奴や。
肉より芋が好きという珍しいゴブリンや。
簡単な焼畑農業までやっとるで」
「焼畑農業!? 」
「芋、栽培してるで」
タケルは驚いた。
ゴブリンと言えば、人や家畜を襲ったり、女性を拉致したりする、獰猛な小鬼というイメージばかりだ。
焼畑農業とは…。
そう言えば、襲われたときに、ゴブリンたちが松明を持っていたのは、少し違和感があった。
魔物は夜目も効くだろうし、火を恐れるようにも思っていたから。
けれども焼畑農業ができるのなら、松明を使っていてもおかしくはない。
「他の土地のゴブリンもそんな風なんですか?」
「ゴブリンもいろいろやなぁ〜。わしの故郷の方は、悪さするのが多いから、駆逐対象になってるで。
余所の土地行っても冒険者ギルドにはゴブリン退治の依頼は多い。
ここいらのおとなしいはエルフの森の影響があるんちゃう」
「そうなんですね…」
タケルを襲ってきたゴブリンは、残忍に見えた。
タケルの命を狙っていたし、エルフを攫おうとしていた。
普段はおとなしいのか…。
「悪さしないゴブリンでも、統率者が現れると変わるニャン」
「どういうのが統率者になるんですか?」
「そうやニャ〜、ゴブリンの群れなら、進化したゴブリンロード、大鬼族、竜人族、吸血鬼、あと魔族とかいろいろ。邪悪な魔術師なんかもあるニャン」
「そうですか」
この世界はやはりいろいろな異形の者がいるのだ。
異世界モノのコンテンツに接していなければ、理解は追いつかなかったことだろう。
タケルがそう考えていると、
「今回の魔獣の襲撃もゴブリンの襲撃と関係があると思うで」
「うちもそう思うニャン」
「統率者を討ち取らなあかんなぁ」
ガルフの顔に少し影がさした。
「ガルフ、辛気臭い顔したらあかんで。そん時はそん時や。
今できることして、時が来たら戦う。
その前に今度ちゃんと、買い物、付きおうてや!
ほったらかしやったから、罰としてお魚料理もうちに奢るニャン!」
「わ、分かった」
「ところで、タケル隊員、隊長がうちら呼んどるようやで」
グスタフの元に小隊の他のメンバー4人が集まっていた。
「ほな、ガルフ、また」
「ああ、ミーニャ。
にいちゃんも又会おうや」
「はい、ガルフさん」
タケルとミーニャはガルフの元へ向かった。




