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解毒魔法

「エルゼさん! こっちに来てたんですね?」


「そうなんです! (ヴァロータ)のそばで負傷した人の治療を手伝っていました。

解毒が必要との要請で、わたしもこの町に移動してきたところです」


荷馬車が止まり、荷台から治療担当の者がエルゼを含めて、4人降りてきた。

この時、誰かが、


「森の精霊よ、光を灯し給え」


と唱えると、タケルも以前目にした光球が出現し、辺りが明るくなった。

日はもう没しかけていた。


「沿道の倒れてる者、優先で解毒に当たれ」


リーダー格の男性エルフが指示する。


「すまんが、今地面に座っている男に解毒処置をしてくれ。虐殺(マッサーカー)トカゲとの戦いで少しやられてる。夜の警備もあるかもしれない。今、頼めるか?」


グスタフが請うた。


「グスタフ大佐、了解です。

エルゼ君、その隊員の解毒を頼む。我々は先に行って、適宜、解毒や治療を施す」


「分かりました」


白衣と白いキャップを被ったエルゼが、黒馬ペガサスの傍でしゃがみ込むタケルに近づく。


「森の精霊よ、光を灯し給え」


と詠唱し、光球を間近に作り出すと、


「体調はどうですか?」


「眩暈がします。あとは少々吐き気が」


タケルは時間が経つにつれて、気分が悪くなっていた。

実はもはや立っていられないほどだった。

他のメンバーが佇むのに自分だけ座り込むのは気が引けたが、先ほどのグスタフの言葉を受けて地べたにやむを得ず座っていたのだった。


エルゼはタケルの顔色を診て、

「虐殺トカゲの毒が少し回りかけていますね。でも、良かった。わたしの魔法で十分治せるレベルです。

では、解毒しますね」


エルゼはタケルに手のひらを向けて、


「森の精霊よ、エルフを慈しむ母なる精霊よ。

その赤子に慈悲を恵まれたし。

霊妙なる力で魔の呪いの毒を和らげ、打ち消し給え!」


手のひらから淡い光のようなものが放出された。


その光は、タケルには誠に心地よく、身も心も洗われるようだった。


「終わりましたよ、タケルさん」


エルゼが微笑んだ。


心身ともに軽くなった

タケルは立ち上がって、


「エルゼさん、ありがとう!」


「妹は解毒の魔法が使えるんだよ。あと薬の処方も得意なんだ」


エリナが近くに現れた。

メンバーに配給される軽食をまとめて取りに行っていたのである。


「姉さん! 無事でよかった。皆さんで虐殺トカゲを倒したんだね」


「うん、まぁ。もっとも大活躍したのは、タケル殿だが。

エルゼも頑張ったようだな」


「姉さん、ありがとう。わたしも、引き続き解毒処置に当たるわ。

じゃあ、また」


エルゼは隊員たちにお辞儀して、解毒チームの後を追って行った。


魔法師のシロンが詠唱の後、光球をいくつか出現させた。

周りが明るくなる。


「みんな、食事だよー」


エリナは馬を降りて、竹筒とサンドイッチのようなものを各自に配った。

タケルは解毒に後、急に食欲が増していた。


竹筒の栓を抜くとハーブティーのような飲み物だった。

サンドイッチは、黒パンで中は卵焼きとキュウリのようなもの。


パサパサしていたが、結構うまい。


それにしても、魔法ってすごいなぁ。


タケルは光球を眺め、さっきの解毒の魔法を思い出していた。


「あんた、お腹空いてたんだね」


アスカが左側に座った。


「うん、腹が減ったよ、すごく」


アスカもサンドにかぶりついてから、


「ところで、あんた、強いわね。虐殺トカゲを切り裂くなんて驚きだわ。あんた何者? 冒険者? それともエルフの貴人の護衛?

エルフの武人服を着てるけどエルフじゃないし」


「うーん。何だろうね〜」


タケルは食べる動作を止めた。


マレビトであることを正直に言おうか…。


数時間前、警備局を出発するにあたって、エリナに言われたことを思い出していた。


マレビトはかなり珍しく異能を持つ者が多いので、いろいろな事に巻き込まれやすい。

自分がマレビトである事は、余り他人に告げない方がいい、と。


「最近、エルフの土地に来たばかりなんだ。さっき解毒してくれた()のお家で世話になってる。

事情があって詳しいことは言えないけれどごめん。

まだ、分からないことばかり。アスカにいろいろ教えてもらう事になると思う。よろしく!」


「うーん、マレビトの可能性大ね。ヒューマンで黒髪に黒い瞳って、かなり珍しいし。

まあ、今は詮索しないでおくわ」


「ありがとう」


アスカは笑いながら、


「あたしは南ヒューマニアの出身で、冒険者として旅をしてる。見ての通り、槍術師(ランサー)よ。

パーティーのみんなと、嘆きの崖に行く予定だったの」


「嘆きの崖?」


「あんた、知らないの? 有名な場所よ。聖地でもあるし、観光地でもあるし」


「そうなのか…」


今のタケルには地理の感覚がほとんどない。

エリナによれば、今いる場所が、エルゼの家から北東に位置しているというだけしか分からない。


「ホヤンスクには5日前に来たわ。いろんな町で稼ぎながら、移動してたのよ。

そういえば、パーティーのメンバー、無事だったかしら…」


アスカは残りのサンドを素早く食べてしまうと、


「パーティーのメンバーを探してくるわ。数日はこの町にいるから、また会えるわね?」


「多分」


「じゃあね。再会まで」


アスカはタケルの元を辞すと、グスタフに挨拶をし、町の中に消えて行った。

ぼんやりと後ろ姿を目で追っていると、


「お、にいちゃんも来てたんか!」


という声が後ろに響いた。

以前、タケルを助けてくれた狼顔の獣人であった。

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