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アスカとタケル

門に着いたタケルとエリナは、駆け続けた馬を一旦休ませ、伝令役から現状を聞いた。


こちらから逐次送る武人とホヤンスク駐屯の警備員、滞在の冒険者が、一丸となって、魔獣の侵入を抑えていた。


しかし、武器や人員も不足し、防御側の疲労も溜まり、徐々に侵入を許し始めている。

周りにまだ魔獣が押し寄せているので、防御壁の一角が崩れたら、町が危ない。


そんな情報だった。


エリナもタケルもいきり立った。


ゆっくり日が落ちつつあった。

夜に入れば、防御はいっそう難しくなるだろう。


エルフの軍人を長にして、武人数人がパーティーを組み、急行すべきエリアの指示が与えられ、「門」が開かれ、出発していく。


いよいよタケルたちの番が来た。


「俺は今回の小隊の長を務めるエルフィニア国軍人グスタフ・ナサロークだ。今から南門周辺の防御壁に向かう」


グスタフはスキンヘッドで裸体の上半身に肘当て、肩当て、胸当てをつけていた。


こんなエルフもいるのか?

武具を持っていないのは、体術中心の武闘派なのだろうか?

あるいは魔導師?


タケルはそんなことを考える。


「目標エリアに着いたら、各自魔獣を征討せよ。特に防護壁を登ろうとしたり、破壊しようとしたりする奴を優先的に倒せ。分かったな!」


「了解!」


という声が一斉に返った。


門が開き、6人のパーティーが出発した。

グスタフ、タケル、エリナとハーフエルフ2人、そして猫の獣人である。


各自の馬が競い合うように危うい宿場町に向かう。


町の城壁が見えるとグスタフが指示エリアに誘導して、


「各自、行け!」


と号した。


エリナは防御壁をよじ登る、略奪(プランダー)トカゲ目掛けて魔法で強化され鋭い矢を次々放つ。


成人エルフよりもひと回りもふた回りも大きい、略奪トカゲの分厚い皮をも射抜く矢。

襲い来る邪悪(イヴィル)ウルフも一矢で仕留めた。



魔獣が食い荒らした、人や獣人の残骸を目の当たりにしてタケルはやり切れなさを感じるとともに思う。


魔獣も生きとし生けるものなのかもしれない。

だが、町を襲っている今、もはや気持ちは通じまい。

(まさ)に討つべし!


タケルはゴブリンとの戦いと同じく、


武甕槌神(たけみかづちのかみ)経津主神(ふつぬしのかみ)八幡神(やわたのかみ)、我に強さを!」


三柱の武神の御名を自ずから唱え、鞘から太刀を抜く。


一瞬白光で輝いたそれは、次々魔獣を切り捨てていく。


倒した魔獣が両手で数えきれなくなった頃、

数十メートル先で誰かが障壁の上から地面に落ちたのが見えた。


危ない。


主人の意を汲んだ黒馬が早駆ける。


邪悪ウルフがその人を殺めようとしたとき、タケルはすんでのところで、間に合ったのであった。


魔獣2匹を次々両断。


馬上から見下ろすと膝をついて顔を上げた女性の長い紅の髪が印象的だった。ヒューマンで歳は同じくらいだろう。

胸は…人並みだった。


彼女は、つまりアスカは立ち上がると、


「ありがとう、助かったわ」


と言って、


「あんたに見惚れてなんかないからね!

…あんたはあたしに見惚れていいけど」


こう付け加えたのは、タケルにとって想定外だった。


タケルは、手を差し出して、


「後ろに乗って下さい。ここは危ないので。そして、僕の背中を護って下さい」


アスカは手を取って立ち上がり、


「分かったわ。あんたの方からのお願いのようだから、その話に乗ってあげる!」


と言って、彼女は槍を背負い、馬具に手をかけた。


「それと丁寧語はやめて。まどろっこしい。タメ口で言って」


「了解。君の名は?」


「あたしは、ヴェレ・アスカ・アプリコーゼ。アスカって呼んで。

あんたは?」


「僕は一乗タケル。タケルと呼んでくれたらいいよ。じゃあ、アスカ、背中は任せた」


「うん」


アスカは、馬の進行方向の逆を向いて、つまりタケルと背中同士をくっつけて乗った。


(タケルが頼んで来たから、しかたないんだから)


アスカの頬は少し赤みを帯びていたかもしれない。タケルのあずかり知らぬことである。


また、黒馬はアスカの乗馬を一瞬嫌がったみたいだが、タケルが馬の耳元で、


「ペガサス、戦いでのことだから受け入れて」


と小声で囁いたことをアスカは知らなかった。


「アスカ、じゃあ、あそこの魔獣たちを倒すよ!」


「うん、OK」


と言って、アスカは槍を構え、タケルは太刀を掲げた。


程なくして、近くの邪悪ウルフも略奪トカゲもことごとく薙ぎ倒された。

真っ二つのものもあれば、槍の刺突で息途絶えたものもいた。


気持ちに余裕ができたタケルが小隊のメンバーの戦闘に目をやる。

まず猫耳の異性獣人の奮闘ぶりが目立った。


小柄な彼女は、巧みに薙刀のような武器を操り、時には攻撃を軽やかに避け、魔獣を連続して屠っていく。


隊長のグスタフの戦い方は破格だった。


風魔法で魔獣を地面に叩きつけたり、上空で静止させたりして、拳で殴り、とどめの手刀を突き刺すのである。


略奪トカゲの固そうな体皮を打ち抜くのだから高度なスキルであり凄い膂力(りょりょく)だ。


武具なしでもこんな戦い方ができるのか!


タケルはスキンヘッドのエルフを驚嘆の目で眺めた。


他のメンバーも魔獣を討伐できたようだ。

南門周辺はひとまず安全になった。


「今すぐ東門に来てくれ。虐殺(マッサカー)トカゲだ。門が破られた!」


と防御壁の頭上から、冒険者が叫ぶ。


「虐殺トカゲだと!あんな化け物も来たのか? 東門行くぞ!」


とグスタフが大声をあげた。


「アスカ、このまま一緒に行くよ」


「もちろんよ!」


頼もしい一言だった。

タケルはグスタフの馬に続いた。

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