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国ざかい

2019年7月10日 誤字を修正しました。

しばらく果樹園に沿った小道を馬で歩んでいたヨハンたちであったが、初老の農夫が、遠くの丘を指差した。


「ヨハン様、あそこが国ざかいですぜ」


馬を辛うじて歩かせた小道は木の枝に遮られ、数十メートル先の丘ではすっかり獣道のようになり、そこは灌木がただ茂っていた。


「馬を降りねばなるまい」


ヨハンは下馬し、アマデウスもそれに倣った。


「この馬はお前にやる。役人には梨畑に迷い込んできたと言っておくといい。

没収されるかもしれないが、せめてもの礼だ」


「ヨハン様、かたじけなく存じます」


「ヨハン様の馬だけでなく私の馬も受け取ってくれ」


こう続いたのは、アマデウスだった。


「ありがとうございます」


「もうここを立ち去るがよい。警備兵や役人に見つかったら、お前も大変だ」


ヨハンが促すと、


「せめて国ざかいまで道を開きましょう」


こう言って、この初老の農夫は、ズボンにぶら下げていた、収穫用の鉈のようなものを抜き、道が途絶えたあたりから灌木の枝をうち払っていった。


ヨハンとアマデウスはそれに続いたが、やはり枝で腕にはかすり傷が増えていく。


突然、馬の(いななき)が響いた。木に繋いでおいた先程の2頭のいずれかであった。


誰かが近づいてきたのである。

それは灌木越しに警備兵のように見えた。


アマデウスはすぐに剣を抜き、農夫の背中に突きつた。


「われらに脅されている振りをしろ」


「承知しました」


農夫は脅されて枝を払っているように振る舞い始めた。

国ざかいはもう目の前だ


「お前ら何をしている!」


後方から大きく声がかけられた。続けて、


「そこは国ざかいだ。シュタインハルク伯爵の領地だぞ。

無断に国を抜けるのは厳禁だぞ」


アマデウスはわざと大きな声で、


「じじい、お前はもう不要だ」


と農夫を掴むと鉈を奪い取り、投げ倒した。


警備兵の矢が放たれた。

が、灌木に遮られてヨハンたちに届かない。


「ヨハン様、突破しましょう」


こう言ってアマデウスはかがんで、ヨハンを先立たせて、灌木の下の獣道を前進する。


追っ手の警備兵2人が、がむしゃらに追ってくるのだった。

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