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梨の畑

アイマール公国の公爵三男ヨハンとその従者騎士であるアマデウスは梨畑の細い道を縫うように馬でゆっくり進んでいた。


先頭では初老の農夫が彼らを導いていた。


つい10分ほど前にヨハンたちは国境に近づいてくると街道の道を選ばず、地元民しか使わないような狭い農道を選んだ。


公国の東側は警戒が薄いとはいえ、国ざかいの検問所には確実に敵の手が及んでいるだろう。


ヨハンは少年のころから農地や果樹園に行って領民たちと交流するのが好きだった。

これは乳母のアナシスがもともと農民の出であり、彼に農村の楽しさを語っていたところが大きい。


ヨハンは暇があると城を抜け出し、農場や牧場、果樹園に赴き、自然の中で遊ぶことを好むのであった。

時には農作業を進んで手伝う時もあった。


はじめのうちは農民も腫物を触るような態度で接していたが、ヨハンの庶民と打ち解けるわけ隔てのない人柄に魅了されていったのである。

この日も城下町の郊外の農地で野菜の収穫を手伝っていたのであった。

そこで敵の急襲を知ったわけである。


今、馬を歩ませている公国東部は、梨などのフルーツの栽培が盛んだった。アイマールは質の良い果物の栽培で知られている。


ヨハンも10代前半からこの地域に来ては、視察と称して、果物の収穫を手伝っ手は味わったり、農民と宴を楽しんだりしていたのである。

そんなヨハンは領民、特に農民に慕われていた。


敵の急襲をかわして、街道を駆けていたヨハンたちは、農道に折れたが、すぐに顔見知りの農民に出合ったのであった。


「事情があって、無実の罪で追われている。

検問所を通らず国境を通るにはどうしたらいいか?」


ヨハンは率直に打ち明けて尋ねた。


農民は驚きの表情を見せたが、


「ヨハン様、あっしが国境をうまく越えられるように案内いたしましょう」


と提案してくる。


「案内せずとも、道をこの場で教えてくれるだけでいい。

あとでお前に火の粉が降りかかったら困る」


気遣うヨハンの言葉に初老の男は、


「ヨハン様、水くせえこと、おっしゃいますな。

あっしは大丈夫。今まで十分生きてきましたよ。

これまで、この村はヨハン様に良くして頂きました。

いま恩を返さないでいつ返せましょう」


農民は真剣なまなざしでヨハンを見つめた。


「分かった。恩に着る」


ヨハンは農民の後について馬を進ませたのである。


左右に見える、梨の木には薄茶色の実がたわわになっていた。

洋梨ではなく日本や中国の梨に似ている。

ヨハンの大好物だ。


ヨハンは緊迫した中でも和むことができた。


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