エリナと兎耳の獣人
颯爽としたポニーテールの美しき武人。
食事の部屋に入ってきたエリナは警備用に思われる服をまとっていたが、肩当てや胸当てなどの防具は全て外していた。
「こんにちは、エリナさん」
「タケル殿、だいぶ回復したなぁ〜、良かった!」
凛々しい声でタケルの横の席に着いた。
「エリナはこっちよ。お客人の隣ではなく、私の隣へ」
「お母さん、格式ばった席じゃないんだから、気軽にしていいはずよ〜。タケル殿は構わないでしょう?」
「ええ、構わないですよ」
といったタケルは、実際に迷惑だとは思わなかった。
エリナの率直なところに好感を覚えた。
「ところで、タケル殿、あの刀を警備番所で預かってるので、ご飯食べたら、取りに来ないか?
ガルフも渡したいものがあると言ってたし。
ガルフってあの狼顔の男ね」
刀の話は食事時に出そうと思っていたのでタケルには、タイミングがいい。
「でしたら、食後、その警備番所という所へ行きましょう」
「かたじけない。
タケル殿はエルゼの恩人だが、エルフの里に初めての来訪なので、武具は念のため警備担当部局で預からせてもらった。
それはそうとあの大剣、どうやら宝具のようだ」
「宝具とは?」
タケルは好奇心の宿った目で横のエリナを見た。
「簡単にいうととても価値ある武器や道具。
鑑定師が鞘から抜こうとしても抜けなかったというから、タケル殿だけが扱えるものなんだろう」
(そうなのか…)
「そうそう、ガルフが面白いことを言ってたよ。
タケル殿を背中に結わえて、エルフの結界の中に入って馬を走らせていたら、鞘が光って変化した、と」
「え、変化? どんな風にですか?」
タケルは少し驚きの声を出した。
「鞘が光って煌めく飾りが増えたらしい。
もちろん、私もその変化後の鞘を見たけれども、風雅な煌めきを宿したようなものが鏤められていて、綺麗だと思った。」
「風雅な煌めき?一体、どんな風になったんだろう」
タケルは独り言をつぶやいた。
(太刀の鞘は黒塗り単色だったはずだ。光るような飾りは付いていない。
何かに反応したんだろうか)
こう考えていると、エリナが、
「きっと、エルフの森の守護神や霊気に反応したんだと思うよ。鑑定師も同じ見立て」
「そうですか。まずはあの太刀を見て判断かな」
その時、
「お待たせ〜」
と部屋に入って来たのが、皿を両手に持ったエルゼだった。その後ろには、同じように料理の品を持った兎耳の獣人、メイド服を着ている。
「タケルさんが食べやすくて、そして胃腸に優しいものを作って来ました〜」
「メニューはエルゼ様が提案した薬膳です。体にいいですよ!」
とメイド服の獣人がエルゼに続く。
薬膳と言えば、中華料理で供される、漢方の理論に基づいた健康と味を追求したメニューだが、そういうものがエルフの土地にもあるのがタケルには興味深かった。
「エルゼさんが僕の体調を慮って考えてくれたんだね、ありがとう」
「どういたしまして。でも、調理の大半をやってくれたのは、厨房にいるペルシックなんです。
今、後ろにいるハーゼラも手伝ってくれましたよ」
とエルゼが言うと、兎の耳と人間的な顔立ちを兼ね備えた獣人が前に出て
「ハーゼラです。ここウートロ家でメイドをしております。よろしくお見知り置き下さい」
とぺこりと頭を下げた。
「ハーゼラさん、こちらこそ。一乗タケルです。エルゼさんから聞いてるかもしれませんが、この世界に来たばかりで分からないことが多いです。
いろいろご迷惑かけるかもしれません。
よろしくお願いします」
と噛まずにタケルは言えた。
「タケルさん、エルゼ様は薬作りの達人なんですよ。
薬草や治癒魔法にもお詳しい方です。だから、薬膳もバッチリです」
とニコリとして親指を立てたのはインパクトがあった。
当のエルゼがちょっと顔を赤らめて、
「ハーゼラは褒めすぎだよ〜」
とメイドの言葉を遮ろうとする。
「では、お給仕開始します。前菜にございます」
食卓に置かれた4枚の皿に盛り付けてある5種類の前菜は彩り豊かだった。
タケルは食欲をそそられた。
次話は食事のシーンです。エルフはどんな料理を食べているのでしょう(^^)




