エルフの住まい
「タケルさんが元気になったみたいだから、お昼ご飯にしましょうか。タケルさん、食欲は?」
「ありますよ。お言葉に甘えて、食事をいただきます」
こうタケルが答えると、
「じゃあ胃に優しいものを作ってもらいますね」
窓側にいたエルゼが、
「その前に、こっちへ」
と言って、薄手のカーテンをパッと引くと、両扉式の窓はすでに開けられていて、緑の木々と空が目に入った。
タケルは窓から身を乗り出すようにすると、眼下には背の低い緑樹が、前には大枝の樹木が、そして上方には青い空が広がっている。
この部屋は随分高いところに位置しているらしい。
そして、大木の枝の上に作られていることが理解された。
タケルは嘆声を漏らし、眺めに見入った。
ツリーハウス?
エルフの家って、こういう所に建てるのか。
「驚きました、タケルさん?」
「うん、驚いたよ、こういうお家、初めてです。木の上に建てるのですね」
「そうなんです。エルフの家はほとんど木の上にあります。でも食事は地上の建物でなんですが」
「えっ、地上なのですか?」
エルゼは軽く頷いて
「食事やお風呂、洗濯、馬小屋などは地上に小屋を作ります。水や火を使うので」
「なるほど。水は上に送るのは面倒ですね。もちろん、馬も。ところで、どうやって下に降りるのでしょうか?」
「魔法ですよ」
という声は、エレーヌのものだった。
「魔法で地上に降ります。私とエルゼが下ろしますから安心くださいね。その前に着替えを」
と言って持ってきたのは、カーキ色のズボンと白い肌着に白い厚手のシャツだった。
エルフの男性はおそらくブリーフやトランクスのようなものは履かないのだろう。
「タケルさん、私たちは部屋の外で待っていますね」
と言ってエレーヌはエルゼとともに部屋を出ていった。
タケルは布団を直して、寝間着を折り畳んみ、新しい服に着替えた。
あの刀や転移のときに着ていた服がどうなったのかは気になっていたが、ここで聞くのも食事を遅くしてしまう、この家の人は悪い処置はすまいと考えて、部屋を出た。
ビルの5、6階の高さはあっただろう。
玄関のような場所から降り始める直前は、少し怖かった。
しかし、右手をエルゼに、左手をエレーヌに握られ、両手に花の状態で、タケルは空中をゆったりした速度で降下し、難なく地に達した。
二人に案内された家は木のそばに建っていて、素木の別荘風の建物だった。
家の作りや調度品を見ても、エルフが森の恵みを生かしながら暮らしていることが分かった。
地上の建物には、使用人らしい兎耳の女性の獣人とハーフエルフらしい女性が働いていた。
食卓につくと3日間何も食べていなかったタケルの胃をいたわるため、最初に胃に優しいとされる豆乳のようなものが供された。
食事作りはエルゼも手伝っていたので、エレーヌとタケルは二人きりの会話だったが、エルフの森や食生活のことを聞いていると
程なくして、エルゼの姉、エリナが帰宅した。
「やあ、タケル殿!」




