フェルトの提案
「皆さんもこちらにいらしていたのですか。無事で何よりに思います」
タケルがフェルトに向けて一礼し、親衛隊の騎士たちに声をかけると、
「タケル殿、大した御仁だ。
モスラスクイーンを斬り倒すとは。
助かりましたぞ」
ルートヴィヒが答えた。
「ルートヴィヒさんから教わった空中からの斬撃を使いました。
うまくいったのは、貴賓館の広場で皆さんと練習していたお陰です。
ありがとうございました」
実際にそうだった。
ルートヴィヒの指南と風魔法による上昇と着地の訓練をしていなかったら、あれほど落ち着いて、空中のモスラスクイーンに対峙できなかった。
「いやいや、タケル殿に意思と能力があればこそ。
まだ、モスラスクイーンの骸は見ていませんが、見事な斬撃だったと目撃者から聞きましたぞ。
また、お手合わせ願いたい。そして、騎士たちに教えてやって下さい」
「こちらこそまたご指導をよろしくお願いいたします」
タケルが剣聖と言葉を交わしていると、エリナが、
「グスタフ大佐、フェルト様との打ち合わせが終わってなければ、一旦待合室に移りますが」
「妾たちはもう出るので遠慮は不要ぞ。
これから救護班のもとへ行く」
「エリナ少尉、そうなんだよ。
フェルト様が、治療魔法で重傷者を救ってくださるというご提案があった。もちろん、ご助力をありがたく受け入れた」
グスタフの言に応じてエリナが、
「フェルト様、ホヤンスクの為にありがとうございます」
「苦しゅうない。せっかく救援に来たのだからこういう時こそ役に立たねばの」
フェルトの声には気品が備わっていた。
傍には、親衛隊員たちが姿勢を正して立っている。
隊長のヴィルフェルミナ。巻き毛が多見される美しき金髪。
ハーフエルフ魔法師のクララ。
赤毛のセミロングのニーナ。
金髪で少しふくよかなゾフィー。
栗色のボブカットのパトリシア。
茶色のロングヘアーのヴァレンティーネ。
貴族の令嬢から編成されたこの親衛隊は、絵のように美しかった。
そして、ルートヴィヒ直伝の実力も有していた。
一緒に訓練してタケルにも分かる。
だからこそ少数精鋭でホヤンスクにやって来れたのだ。
至宝の治癒魔法能力を持つフェルト公爵を護衛しつつ。
「時にタケル殿、ルートヴィヒも言っていたが、大したものじゃ。
あんな大きい化け物を討ち取るとは。遠目に飛んでいるのを見たぞ。
また、騎士たちに稽古をつけてやってほしい」
「いいえ、こちらこそルートヴィヒさんはじめ、皆さんから稽古をつけて頂いています。
お言葉、ありがとうございます」
それを聞くとフェルトは、ゴルビーに向かって、
「ゴルビー殿、こたびの魔法、素晴らしかった。
タケル殿をげに高き空へ昇らせたそうじゃな。
それにしても、貴殿の異性の好みは一貫しておるなぁ」
と面白がる表情も浮かべた。
「恐縮致します。
フェルト様はぼ〜くの好みにも理解がおありのようですね。
獣人少女たちも頑張ってくれました」
「そうだろうなぁ」
というフェルトにミーシャ、ラビーネ、リズの3人は一礼した。
このやり取りの後、フェルトたちは退室する。
ヴェルフェルミナが、通り過ぎる時に、
「また宜しくお願いします」
と言ってくれたのは、タケルも嬉しかった。
明日以降も気兼ねせずに彼女らとの訓練に参加したいと思う。




