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シンデレラ

「本題とは何ですか?」


ゴルビーは神妙な面持ちで馬を降りた。


「はい、それは、ホヤンスク臨時司令部にご足労願いたいとのことです。

グスタフ司令が今後のことで相談があるということであります」


「そうだろうねえ。こんなことがあった直後では、グスタフ大佐も司令部を離れられないだろうね〜。

もちろん、行くよ。

ハニーたちも連れて行って大丈夫だね?」


「大丈夫ですよ。強力な魔法師の三方、司令も歓迎すると思います」


「あとはタケル殿も一緒の方が良さそうだね」


「そうですね。私も参謀長に話した後、タケル殿にも依頼する所存でした」


「僕も呼ばれるならもちろん、司令部へ行きますよ」


「タケル殿、ありがとう」


「さて、これから司令部に向かうとして、このモスラスクイーンの周辺は少し解毒しておいた方がいいだろうねぇ」


「わたしも同感です」


モスラスクイーンの頭部の20メートルほど先にはホヤンスクの城壁があった。


このままほっておいたら、翅の毒気が城内に入っていくだろう。


「処分がまだ決まっていないから、城壁に近い場所だけでも、清めておこう。

僕も魔力が回復して来たしね」


ゴルビーが魔杖を掲げた。


「森の精霊よ。エルフの御祖(みおや)よ。

やんごとなきエルフの天地(あめつち)を清めたまえ。

清き光を以って(かたき)の穢れを払いたまえ」


新派と旧派を語っていた時とは対極にある厳かな文言と口調であった。


魔杖に白い光の玉が生じ、それが城壁に近い、モスラスクイーンの頭部と翅の先端に放たれた。


数秒間、まばゆい光が辺りを領する。


これで城壁の方に毒気は流れなくなったことだろう。


ゴルビーとタケル、エリナはそれぞれ馬に乗り直す。


「エリナはんが後ろなら良かったなり。

貧乳のうちが後ろだと、タケルはんも残念ならずや?」


背中越しにリズが言う。


「そんなことないですよ!

胸の大きさは関係ないですよ。

リズさんは後ろに乗るのが慣れているので、僕も馬を走らせやすいです。

それと僕がいた世界では、小さい胸を美称で、シンデレラバストって言ったりもするようになっていました」


「シンデレラバスト?」


「シンデレラというのは、僕がいた世界のお伽話のヒロインなのですが、靴が小さかったので、小さいサイズをシンデレラサイズ、小さいバストをシンデレラバストと言ったりするのです」


「シンデレラはどんなヒロインなるか?」


「貧しい少女でしたが、美しい容姿と心に恵まれていました。

あるとき、舞踏会で王子様に見初められ、いろいろな試練を経て、王子様と結ばれます。ハッピーエンド」


「さなるか。それ良き話なり」


「シンデレラバストか、覚えておきましょう」


こう言ったのは、ラビーネだった。


「タケル殿のいた世界にも、新派がいるようだね。

可憐な胸部にお伽話のヒロインの名をつけるとはなかなか秀逸だ。

ぼ〜くも覚えておこう」


ゴルビーも賛同する。

確かに前向きないい名称だとタケルも思う。


もし比較せよと言われれば、タケルは大きいのが好きなのだと自覚はする。


しかし、もしもその異性が本気で好きなら、胸のサイズは二の次なのだ。


大きなサイズの人を好きになることもあれば、シンデレラサイズの人を好きになることもある。

もちろん、中間サイズもだ。


リアルな世界に関する限り、胸の大きさだけで女性を本気で好きになることはない。


大事なのは、人柄や容姿、雰囲気、相性などのバランスだ。


そんなことをタケルは思った。


タケル、リズ、ゴルビー、ラビーネ、ミーシャ、エリナの6人はホヤンスク防衛臨時司令部に向かったのであった。

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