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エルゼの母

「タケルさん、初めまして。エルゼの母、エレーヌ・マグノーリヤ・インナ・ウートロです。

エルゼを救ってくださってお礼申し上げます」


エレーヌは改まった表情でタケルを見やった。


「こちらこそ、ありがとうございます。いろいろお世話になり…」


タケルは上半身を起こしていた態勢から立ち上がろうとしたが、下半身を起こそうとすると右太腿がやや痛い。


「まだ無理はされずに」


と言って、近寄ったミレーヌが膝をついて座るのであった。

ほんのりと甘い香りがした。

ワンピース的な服に白いタイツのようなものを履いている。


改めて気づいたが、エルフの生活は室内では靴を脱ぐスタイルらしい。


タケルが寝ている夜具も床に敷かれているし、エルゼも円座のようなものに腰を下ろしている。


靴+ベッドの暮らしでないのは、日本と同じようだ。


タケルは立ち上がらず、上半身を起こした姿勢のままで、距離が短くなった彼女の双眸を見つめた。


その奥の瞳にはエメラルドカラーを薄めたような色合いが宿っている。

エルゼの紫色の瞳とは、また違った落ち着きを感じる。


目元も綺麗な人だなぁとタケルは思う。

先程、彼女の豊かな膨らみのことを強く意識したことが少し気恥ずかしく感じたが、


「僕は一乗タケルと申します。

エルゼさんからお聞きと思いますが、この世界に来たばかりでよく分からないことも多いです。

よろしくお願い致します」


と元気に言葉を継ぎ足した。


「タケルさんも当分何かと大変だと思いますが、何かお役に立てることがあればおしゃってくださいね。

こちらこそよろしくお願いします」


莞爾(かんじ)として応えるエレーヌにタケルは少しドギマギしてしまう。


こういう感情は、エルゼと会った時には余り感じなかった。

もっともエルゼには違う形の好印象を持ったが…。


タケルのいた世界の基準だと、エレーヌは30〜40代に見える。


異世界もののエルフの記述が正しいとすると、長寿の種族だから、100歳はゆうに超えているにちがいない。


100歳以上の異性に官能が揺れる自分は一種のマザーコンプレックスなのだろうか?

しかしながら、容姿はそうではないし、人類の基準で考える方がおかしいのかもしれない。


異世界では、種族が違えば、歳は余り気にする必要はなさそうだが、祖母より生きている経験があるというのは…。


「タケルさん、どうしたんですか?」


というエルゼの声は、銀の鈴のように清々しかった。


「あっ」


考え事に没しそうだったタケルは、エレーヌに向かって


「はい、よろしくお願いします」


と軽くお辞儀をすると、エルゼに視線を移して、


「ちょっとぼーとしてしまって」


と言い訳した。


エルゼの表情がちょっぴり不満げに見える。

母親に見惚れていたと感じ取ったのだろうか。


「タケルさん、体の具合はいかがですか?」


エレーヌが訊くと


「おかげさまで、だいぶ元気になりました」


「それは何よりですね。右脚はどうかしら?」


タケルは一瞬迷ったが、


「太腿に力が入ると少し痛むようです」


と正直に応答する。


「槍の傷だったみたいですね。治癒師(ヒーラー)のおかげで、傷はだいぶ治ったと思いますが、痛みが取れるまでは、まだかかるかもしれません」


と心配そうな顔つきで


「ちょっと傷口を診てみましょう」


と言い添えた。


エレーヌはエルゼに目配せした。


「お母さんは、治癒魔法も使えるんですよ〜」


と言って、エルゼは立ち上がり部屋から退出しようとする。


「タケルさん、いったん横になってください」


「分かりました」


タケルが仰向けに寝る姿勢を取る頃には、エルゼは部屋の外に消えていた。


エレーヌは毛布を除けてタケルのパジャマのズボンに手をかける。


「えっ!!!」


手際よくタケルのズボンは下ろされることとなった。


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