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第2話 高速道路(という言葉)が無いかも

 もっと鉄道の話をしたいのですが、時期的に微妙な話をすることになりそうなので、少し趣を変えて道路の話をすることにします。


「サムライー日本海兵隊史」の世界では、日本のモータリゼーションは、史実から言うと(小説上の辻褄は一応は合わせてはいますが)火葬極まりないレベルです。

 何しろ、第一次世界大戦終結後の陸海軍再編制に伴い、例えば、陸軍の新兵教練過程において、1920年代以降は自動車教練が必修課程になっています。

 つまり、1920年代以降に陸軍に徴兵された方々は、全員が自動車免許を取得しているのです。

 海兵隊に志願した面々になると、更に極端で第一次世界大戦後の(常備の)海兵連隊等は完全自動車化されており、海兵隊員はそれに慣れ親しんでいるという状況です。


(史実の第二次世界大戦時の米海兵隊員が墓場から飛び出してきて、この世界の日本海兵隊は何て贅沢極まりない、と暴れかねない話です。

 史実の米海兵隊は、第二次世界大戦時の自動車化は米陸軍より後れており、1945年の沖縄戦時さえ完全自動車化はされていなかったとか。


 この世界では日本は海兵隊を中心とする部隊を第一次世界大戦の際にいわゆる西部戦線に派兵しており、その際に英仏米から大量の兵器、自動車等が提供されたことから、第一次世界大戦時に戦車師団を保有できたことや、更に第一次世界大戦終結後にその兵器、自動車等を日本国内に大量に持ち帰ったことから、このようなことになりました。)


 そして、このような状況に伴う相乗効果により、国鉄の改軌が行われましたが、それによっていわゆる地方ローカル線は「サムライー日本海兵隊史」世界では敷設されていません。

 その代わりに道路の建設が進み、更に自動車産業が振興されることで、いわゆる地方ではバスが史実よりも遥かに早期に多数、運行されること等が起きています。


 こういった状況から考えていくと、自動車が史実よりも遥かに速く普及していることで、史実では1943年に策定された「全国自動車国道計画」が前倒しとなり、1930年代前半には策定されて実行へと移されている公算が大です。

 更に日本を取り巻く様々な状況が、これを後押しします。


 1929年に勃発した世界大恐慌に対し、「サムライー日本海兵隊史」世界の日本は、英国のオタワ協定に加入して、英国のブロック経済の庇護下に入り、更に満州の黒竜江省油田(史実の大慶油田)開発等に伴う満蒙開発を米国と共同して行うことにより、乗り切ろうと図っています。

 とは言え、これは国外に乗り出すことで、日本経済を救おうとすることで、友好国である英米からすれば日本はいわゆる他人のふんどしで相撲を取っている事態です。

 英米両国政府は日本政府に国内経済対策をしろ、と少なくとも陰では求める筈です。


 こうした状況から日本国内の経済発展を日本政府は図らざるを得ません。

 更に世界大恐慌で疲弊しているいわゆる地方の農村を救う事業を、日本政府としては行わないと農村の票はそっぽを向きます。

 また、1932年には独のヒトラー政権はアウトバーン建設をぶち上げてもいます。

 こうしたことから考えていくと、田中角栄氏の「日本列島改造計画」ではありませんが、「全国自動車国道計画」を1930年代前半の日本政府が唱えるというのは、大いにあり得る気が私はするのです。

 実際、僅かではありますが、作中において、高橋是清蔵相が、地方に道路等の整備を進めて、世界大恐慌からの脱出を策す描写もありましたし、その後、更なる道路事業が、斎藤實内閣時代に推進されていても全くおかしくないです。


 そして、アウトバーン計画でもそうでしたが、全国自動車国道は、いざという際に戦時の簡易飛行場にも転用できる訳です。

 また、戦車等を移動させることを考えると、自動車国道の整備は更に重要になってきます。

 何しろ国鉄改軌の代償として、鉄道全体、特に地方路線の整備が史実よりも進んでいないのです。

 日本の軍部はそういった点に着目して、全国自動車国道計画を推し進めるとも思えます。


 そうこうしていると幻の1940年の東京オリンピックも迫ってきます。

 東京オリンピックに間に合うように、東海道や東北道等の自動車国道の建設が、日本政府によって更に推進が図られることもありそうです。


 更に考えていくとアウトバーンが無料のように、地方対策も兼ねて、最初から通行料は無料の自動車国道が整備されることになるかも。

 こうしたことから、「サムライー日本海兵隊史」世界では「高速道路」(という言葉)は無いかも、とまで私は考えてしまいます。

 そして、それが更に進んだ結果。


「サムライー日本海兵隊」世界における現代においては、史実世界よりも日本中に自動車道路網が整備されて無料で利用出来るという事態までも起きているような気がします。

(だから、通行料自体、「サムライー日本海兵隊史」世界では理解できないかも)

 最も副作用も当然にあります。


 こちらの世界では、高速道路建設は通行料をもって基本的に賄うものですが、無料、つまり通行料が存在しない以上は、「サムライー日本海兵隊史」世界では、そういった方策は使えません。

 とは言え、道路が必要最低限必要な以上は、粛々と建設されていくでしょうが。

(「サムライー日本海兵隊史」世界では、軍部が21世紀でもそれなりに力を持っているので、軍事的な必要性からも道路網建設に奔るでしょう。)


 問題は大型プロジェクトの本州四国連絡橋等に与える影響です。

 利用料で建設費用を賄えない以上、利用者増で国の負担減少なんてことはありません。

 それだけ建設の際には、シビアな視点からの検討が要求されます。


 私としては、「サムライー日本海兵隊史」世界においては、例えば、本州四国連絡橋は、神戸・鳴門ルートか、児島・坂出ルートか、の何れか一つしか出来ていない未来しか思い浮かびません。

 どちらができるかですが、第二次世界大戦以降の日本における鉄道と道路の力関係で決まるでしょうが、そこまでは未来過ぎて私には分かりかねる話です。

 そう考えると道路関係は案外、夢のない世界に「サムライー日本海兵隊史」世界はなりそうな気もしてきます。

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