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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
2区画目 少年時代
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寝耳に水な話

ユニーク10000越えました!PVも55000越え!

皆様本当にありがとうございます!

「ん……えっ?」


 僕がイブキさんと言ったことでクロムは思わず疑問が口をついて出て、ラタン姉とスズちゃんは揃って首を傾げた。多分、目の前の人物について皆が予想していた名前はナギさんだったのだろう。僕だってMAPで出ている反応を知らなければそう答えたかもしれない。


「あの、イブキさん……僕達が知らない間にだいぶはっちゃけましたね?」


 僕に一発で名前を言い当てられたことがよほど嬉しいのか、文字通り舞い上がっているイブキさんに対して思わずそう尋ねてしまう。その言葉にイブキさんはピタリと動きを止めてこちらを見てくる。


「うん、私ねもう我慢するのはやめたんだ。我慢してたらきっと後悔しちゃうもん」


 イブキさんは確か今年で23歳、何か悟ったような目をして割と恐ろしいことを言っている気がする。だめだ、なんか話をそらさないと狙われてる感が半端ない。


「ご、ご無沙汰してますイブキさん。皆さん元気ですか?」


 よし、ナイスアシストだよクロム!こちらに任せろというアイコンタクトを送ってくる。流石僕の親友!これで話がちゃんとそれてくれれば……


「うん、皆元気だよ!お父さんもお母さんも仲良くしてるしナギちゃんはいつの間にか恋人を作ったと思ったら2年前に結婚して今では子供までいる幸せな家庭を築いてるよ!あれ、どうしてかなぁ?皆いちゃいちゃしてて私だけ独り身っておかしくない?当時から欲望全開だった妹に先越されちゃったんだよねぇ、なら私も全開にするしかないよね?ね?そう思うでしょクロム?キルヴィ君?」


 クロムゥゥ!?まさかの地雷踏み抜いたみたいだぞぉ!?形成不利にしてからあとは任せたってアイコンタクトを送るんじゃない!


「えっ、ナギさん結婚されたんですか?」


 スズちゃんが今のイブキさんの発言で気になったところについて尋ねる。動揺してて気がつくのが遅れたがそういえば結婚……ナギさんが?えっ、相手は?


「うん、ナギちゃんは結婚したよ。それも、普段口にしている小さい子とか自分よりも若い子じゃあなくて歳上の人と。覚えてるかな?あの通りで武器屋を開いてたお兄さん。あの人と結婚したんだよ」


 なんと。ナギさんを知っている身としては意外すぎる顛末である。しかし、あのお兄さんならば人柄的にもできた人であった覚えがあるし安心である。……この町を出たら久々にスフェンに戻ってお祝いの言葉をかけるのもいいかもしれないな。


 そんなことを思っているとスズちゃんとラタン姉の手を取り、真剣な眼差しで語り始める。


「2人とも!若さはいつまでも続くものじゃないのですから、もっと自分に正直になりましょう?だからですねクロムかキルヴィ君と交際を認めていただきたいのですがそのところどうでしょうか?」


 本人を差し置いて2人に何言ってるんだ。


「いや、ボクはこのなりですが貴方よりも歳上ですし……それでキルヴィが幸せになるなら反対も何もないんですが、ちょっと」


 ラタン姉が言葉を選んでそう告げる。許容できそうにないと言外にそう言ったのだ。


「えっと……うん、ダメです!両方ともダメです!」


 対してスズちゃんはきっぱりとダメだと言い切った。その言葉にヨヨヨと大袈裟に崩れ落ちるイブキさん。……そういえば今見ていて思ったんだけどスズちゃんに対して反応しなくなったなぁ。


 それくらいイブキさん、結婚とかに対して焦っているのかな?……普通にしていれば良い縁談なんかツムジさんがコネでいくらでも持ってきそうなものなんだけどなぁ。


 その時、背中を遠慮がちにつつかれる。


「あー、盛り上がってるところ悪いんだけどねー、流石に店の受付前陣取られるとねー?」


 トトさんが、言葉を濁しながらそう言ってくる。話をしているのに夢中になっていたせいで気がつかなかったが、ここは大きな町の冒険者組合なのである。つまりは人が集まるということで後ろには長蛇の列ができ始めていた。


「す、すみませんでした!」


 僕達は慌てて後続の方に謝り、正面を明け渡した後近くにあった机に向かったのだった。


「ごめんねー?今からがちょうど混み始める時間なんだー。とりあえず、泊まるって感じでいいかなぁ?」


 受付対応で忙しいだろうに、ニニさんがわざわざこちらにきてお茶を差し出しながらそう聞いてくる。ひとまず3日ほど滞在しますと返事をする。


「わかったー、後でまた説明するねー?2時間くらいはピークの時間だから自由にしててね?そのお茶はサービスだからねー?」


 そういうとニニさんは再び受付対応に戻っていく。いただいたお茶を飲む。ちょっと変わった風味だったが、美味しかった。


「ふむ、数種のハーブに加えて柑橘類……これはオレンジかな?ほのかにレモンも混ざってるように思える。伝統的なノーラ首長国風の味付けですね。ここに来る度に味との出会いがあるので遠くてもついつい何度も来ちゃうんですよね」


 一緒に机を囲んでいたイブキさんがお茶について解説をいれる。そういえばこの人お茶とかお菓子とかの専門だったな。


「さて、改めてお久しぶりです。まさかこのアムストルの町で再開するとは思いませんでした。うちの家族についてはさっき言った通り元気です。皆も、元気そうで何より、かな」


 お茶を飲んだことで、イブキさんは平静を取り戻したようだ。記憶にあるイブキさんの言動にだいぶ戻っていた。


「ええ、おかげさまで五体満足、無事に旅をさせていただいてます。イブキさんはどれくらいの頻度でここまで来てるんですか?」


「だいたい年に2回かな?距離が距離だからね……知っているルートだとどんなに飛ばしても片道に一月かけちゃうんだ」


 そうだろうなぁ、西寄りのスフェンから北東の国境ラインにあるアムストルまで、MAPで見ている距離でもそれくらいはかかるよなぁ。


「最近何か変わったこととかありましたかね?」


 情報を聞くときの癖で銀貨を机の上へと並べようとするとパシリとイブキさんに止められた。


「私達の間柄でしょう?情報料なんて必要ないので、お金は大事に使ってください」


 そう叱られてしまった。手を引っ込めるとそれでよし、と頷かれる。


「それで、変わったことですか……あっ、最近になってイベリ王国とルベストが停戦協定を結んだのは知ってる?」


「ええっ!?」


 初耳だった。どういうことだ?

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