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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
1区画目 幼少期
81/301

気ままな旅路

今回から2章でございます。

成長した少年達の物語、よろしくお願いします。。

 ガタゴトと音を立てながら僕を乗せた馬車は進む。……懐かしい夢を見ていたな。母さんと出会ってから、死ぬまでの夢。


 あれから4年が過ぎ、僕は11歳になった。そして次の秋を迎えれば12歳を迎える。まだ一人前とはいかないが、ほぼほぼ大人と変わらない、と僕自身は思ってる。あの当時伸び悩んでいた身長も、今となってはちゃんと成長し、あの頃のクロムよりは高くなっている。


「あっ、キルヴィ様目を覚ましたんですね」


 隣にいた黒髪の少女がそう話しかけてくる。その声に反応して向かい側に座っていた少女もこちらを見て、そしてにこりと微笑むのであった。


「スズちゃん、ラタン姉、おはよう。ちょっと懐かしい夢を見ててさ……」


 そう言って、首にぶら下げているちょっとだけくたびれたようになっているお守りを握る。それだけで2人とも察してくれたようだった。


「夢の中に出るくらい、アンジュはキルヴィのことを今も思ってるのです。アンジュは、寂しがりやですから」


 目の前の少女ーーラタン姉はそう言う。さっきまでの夢の中から出てきたかのように、その外見はまるで変わらない。ただ、内面的には記憶よりも大人びたように感じる。


「いいなぁ、私も見たかった。あの頃で覚えているのって言ったらなんか砂浜におっきな何か建てたなーとか、そんな感じだし」


 黒髪の少女ーースズちゃんだ。こちらの外見は大きく変わった。身長はラタン姉よりも高くなり(流石に今では2人よりも僕の方が高いが)、今は僕と同い年なのになんというか身体にメリハリがつきはじめている。家族としての贔屓があるかもしれないが、それでも十分に美少女に成長したと断言できる。


 あの頃のことをよく覚えていないというが、当時のことをネタにからかいをしてくるあたり本当は覚えているのだろう。内面はあまり変わってないように思える。


 その時、御者台から中を覗き込むように1人の青年が顔を出す。


「あ、キルヴィ起きたんだ。ちょうどよかった、この先がどうなっているか教えてくれないかな?」


 馬車を運転していたクロムである。クロムはなんというか、すっかり大人だ。背も未だ追いつかないし、スタイルはそのままなのに筋肉とかもたくましくなったと思う。なんでもこなす様からまさしく瀟洒な仕事人と言ったところで、今でも色々と助けてもらっている。あくまで自分は使用人だと遠慮をするが僕としてはいなくてはならない無二の親友だ。


 僕はクロムにだいたいの情報を伝え、クロムはそれに返事をすると顔を引っ込める。


 あの後のことをざっくりと言うとこうなる。


 屋敷は名目上、僕のものということになった。しかし、管理をするのは大変だし、何より物資を運ぶツムジさん達の負担も大きい。よって、周りを土の壁で覆い、さらに設置魔法の力でどうにかこうにか封印をした。何者にも入られないようにすることで僕達はあの屋敷を離れた。今もひっそりとあの森の中で母さんと共に佇んでいることだろう。……それでも念のためツムジさん達にときどき様子見をお願いしているが。


 屋敷の中にあった調度品は全部、とまではいかないがほとんどをツムジさんに渡した。受け取ってくれなかったのはツムジさんが知っている限り母さんと、その家族の思い出が詰まった品だ。あのかけた羽根の天使の像の他にも肖像画や食器など実に多くの思い出が残っていた。


 食器など実用的なものと、母さんが身につけていたような小物の類は形見として大事に使うよう念を押された後に僕達に渡された。中にはあの時のリボンもあり、それは今スズちゃんが時々身につけている。


 屋敷を出てしばらくはツムジさんのところにお世話になった。皆快く引き受けてくれたものの、僕達の方が次第に申し訳なさを覚えてある日、旅に出ることにしますと告げた。ヒカタさんは猛反対したが、ツムジさんが昔の俺の代わりに世界を見て回ってくれという強い後押しと、馬車やその他たびに必要な道具を揃えてくれたことでこうして旅をすることができている。


 時々、スフェンの町に近況報告をかねた手紙を書いているが、はたしてちゃんと届いているのかは……手紙屋さんを信じるしかないだろう。


 そんなこんなで僕達はMAPでまだわかっていないところを見て回ろうという考えのもと、動いている。山を越え、谷を越え、そして国境を越え好きなところへ気の向くままの旅だ。1番気がかりだったのは国境越えだが、外見上子供だけの旅ということで同情をされたのか、国境を越える際の審査は比較的緩くすんだ。海の先に世界が広がっていない限り、自分こそが1番正確な世界地図をかけるのではないかと自負している。


「次はどこまで行こうかなぁ?」


 僕達の気ままな馬車の旅はまだまだ続く。

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