二日目
周囲が明るくなってきたことを感じ、キルヴィの目がさめる。半身を起こそうとするがいつもと違いなにか温かいものに包まれていて動けない。
「いけない、もう薪を集める時間だ……」
仕方がないので寝転んだまま周りを見渡し、自分が寝泊まりしていた小屋ではなく小高い丘の上にいることに気がつく。と同時に昨晩あったことが思い返されていく。
集落からの追放。
ユニークスキルMAPの発現。
そしてラタンとの会合。
今までの日常から新たな一歩を踏み出したことをキルヴィは感じたのであった。そういえばラタンさんはどうしたのだろうか。最後の方は疲れもあり、途中で寝てしまった気がする。
「んにゃ……すぴ」
キルヴィは現状を把握する。
自分が最後に大泣きしてしまったこと。
ラタンさんが優しく抱きしめてくれたこと。
安心して眠りに落ち、今に至るということ。
つまりは自分が感じているこの温もりは、ラタンさんによる抱擁で体をギュッとされているからであり、そのラタンさんは自分を抱きしめたまま眠りについているということだ。その抱かれ心地に身体の奥が温かくなってくるのを感じる。
「ありがとうございます……ラタンさん」
キルヴィは身体をよじり、ラタンさんの顔をみてそう呟いたのであった。
「んーっ、朝なのです!」
キルヴィの目覚めからしばらく後。ラタンは目を覚まし大きく伸びをした。
「キルヴィ君、朝なのですよ……ってまだ寝ていますね。……こうしてると本当に幼いのです」
安心感からか、キルヴィは再び眠りについてしまっていた。その頭を優しく撫でながらラタンはこの先どうするかを考えた。
自分は夜灯の精霊である。
夜に旅する者を見守り、灯をともす存在。旅をする者を気に入ればその者についていき、旅路の安全を願うのが仕事である。
だがこの子はどうだろうか。自分的には気に入り、見守る対象としたいが旅をするにはまだ、あまりに幼い印象を受ける。
「……どこか、良い場所があればいいのですが。この子を受け入れてくれる場所が」
しかし難しいだろう。冬も近く、備蓄もすでに現在の人数で調節しているであろう時期に手間のかかるであろう子供を受け入れてくれる集落はラタンの知る限りでは思い浮かばなかった。
が。集落でなく、ある場所ならもしかしたら……
「んう、決めましたです。一度たずねてみましょうか」
キルヴィの寝顔を見ながらそう決意したラタンであった。