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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
1区画目 幼少期
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2回目の武器屋

いつも読んでいただきありがとうございます!

 次の日、ツムジさんに連れられてあの武器屋まで向かった。今日は昨日のメンバーにクロムやスズちゃんも加わり、ゾロゾロと大人数で向かっている。


「こんなに大人数で押しかけて迷惑じゃないかい?」


 母さんは少し心配そうにツムジさんにそう尋ねると、ツムジさんは笑ってみせる。


「商人にとって、大人数の集団はたとえ冷やかしでも嬉しいものですよ。なにせそれだけ店がはやっているように見えますからね」


「そんなもんなのかねぇ、邪魔になりゃしないならいいんだけど」


 その会話を聞いてやる仕事によっては迷惑になる基準ってことなるんだなあと思った。


「あの、私はどうすればいいのですか?ついてくるように言われましたが」


 困惑した様子でそう声をあげたのはクロムだ。ついてくるように言われたものの、荷物持ちを命じられるわけでもなく、かといって面識もない。母さんのように挨拶に出向くにしても使用人故にいささか不自然な立場だ。


「いや、前回買い物に行った時にクロム、一緒に行かなかったし何も買わなかっただろう?それじゃ不公平だからね、合う武器でもないかと思ってね……」


 母さんの言葉にクロムは驚いていた。


「そんな!恐れ多い……私はあり合わせのものでいいのですが」


「今更何遠慮してるんだい。それに、本当に冷やかしになるよりは少しでも何か買ったほうがそれこそ相手も嬉しいもんだろう、ツムジ?」


「ええ、それはもう」


 母さんの言葉にツムジさんは大げさに頷いてみせる。そんな2人を少し見て、クロムはありがとうございますと頭を下げたのだった。


「んー、キルヴィもこの間寄った後にナイフ手放しちゃったので、武器が心許なくないですか?」


 ラタン姉に尋ねられ、手持ちのものを見る。ランスボアの骨でできた棍棒は、まだ棍棒という形こそ保たれているものの、ボロボロになっていた。先の戦いでだいぶ砕けてしまったのだ。以前持っていたナイフも、あの本屋のお姉さんに巻物の代金の一部として渡してしまっているため、あるのはその巻物くらいだ。僕の1番の武器である石はその辺で拾えるし、魔法で作れるようになったから多少は問題ないが……


「棍棒もそろそろ危ないし、確かにちょっと不安かも。でもかさばるようなのはちょっとなあ」


 その言葉にラタン姉は顎に手を当て少し考えて見せた。


「それならいっそ、巻物に何か仕込んで見てはどうですかね?」


「巻物に?」


 そう言われて改めて巻物を手に取る。紙が無限に出てくる以外は特に変わった様子のない、あまり大きくもない巻物だ。


「例えば、この軸。小さな刃物くらいなら入れれるかもしれません。それか、魔力を込めるインクを買ってきて魔法陣を書き込み、設置できるスクロールにするのもいいと思いますですが」


 ふむ。軸に何か仕込む……のは、それならいっそ別で持ったほうがいいと思う。気になったのは後半で、魔法陣を設置できるとかそんなことができるのか。狩りの時の罠みたいにできるのならちょっと試してみたい。


 そんなことを考えているうちに武器屋にたどり着く。店主のお兄さんは頬杖をついて道行く人々を眺めていたようだが、こちらに気がつくと手を振ってくれた。


「やあこの町の英雄さん?今日はどうしたのさ大世帯じゃないか」


 そういって面々を眺め、ツムジさんがいるのを見つけたのか頬杖をやめしっかりと座った。本屋のお姉さんといい、そんなにツムジさんは別格なのだろうか。長く一緒にいたため、僕には偉いのかよくわからなくなっていた。


「いやいや、かしこまらなくていいから。すまないね、この間のお礼をまだちゃんとしてなかったからその挨拶に来たんだよ」


 お礼と聞き、お兄さんはがたっと席を立つ。嬉しさからかと思ったが違うらしく、真顔でこちらから何かを出さないようにジェスチャーをしだした。


「そんな!あの時にもお金を十分頂いておりますから結構ですよ!?」


 店主のお兄さんは恐縮のあまり席を立ったのだった。一体いくら出したのか、考えて怖くなる。


「はっはっは、ならこの子からということでひとつ。貰ってもらえないかな?」


 そんなお兄さんを意に介さず、ツムジさんは僕の肩に手を回してそういった。お礼を何度も断ることは失礼にあたると聞いたことがあるが、なかなかお兄さんはうんとは言わなかった。もっとも、最終的にはツムジさんは無理やり握らせていたが。


「それで、他に当店に何か御用はありますか?」


 店主のお兄さんは営業スマイルをしてこそいるが、その顔には疲れが見て取れた。……これって本当にお礼になったのだろうか。すごく気を遣わせてしまっている気がする。


「この子に武器を見繕ってあげてくれないかい?」


 母さんがそういってクロムを前に出した。お兄さんは少しクロムを見た後に箱に入っていた剣を一振りクロムに手渡した。それは、刃の部分が反対側が見えるくらいに透き通った薄い緑色をした剣。明らかに普通の素材で作られたものではなかった。


「これを君に贈ろう。なんとなくだがうちの商品の中でこの剣が君を選んだように思える。できれば大事に使って欲しい」


 その言葉にクロムは剣を眺め、軽く素振りをする。ちょっと振っただけで風切り音がなった。


「でもこれ、高いんじゃ……えっと、お代は」


「俺は贈る、と言ったんだよ坊や。……それを渡してもいいほど、十分すぎるほど貰っているんだ。受け取ってくれないかい?それとも気に入らないなら他のを見つけるかい?」


「いや、気に入ってます!気に入ってるからこそ気になったのです!ありがとうございます」


 どうやらその剣で決まりらしい。嬉しそうな表情で剣を眺めているクロムに、お兄さんは頷きながら革製の鞘をくれた。


「風の魔法石?いや魔晶石の一品物?ラタン姉の盾にしろ、珍しいものを扱っているな……」


 ツムジさんは何かブツブツと言っていた。商品の目利きを行なっているのだろうか。


 その後、やはり個人的にはピンとくる武器はなかったため、間に合わせの武器として雑多置きされていた中から丈夫な木でできた棍棒と鉄製のダガーを買って貰った。


 僕の武器に関しては難しい話ではなく、高い買い物をしなくてもまたランスボア辺りを狩ってその骨を棍棒にすればいいのだ。


 再度お礼をしながら、僕達は武器屋を後にしたのであった。

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