その正体
「いたたたた……まさか突っ込んでくるとは思わなかったのです」
体勢を立て直すと、先ほどまで見えなかった姿がうっすらとだが見えるようになっていた。
そこにいたのはカンテラを片手におなかを抑えてうずくまっている、自分よりは年が上に見える少女だった。
「あ、えっと……ごめんなさい」
「ふにゃ?いやいやこちらこそ……って、やっぱりボクのこと見えてるんですね!?おかしいなぁ透明化してたはずなのに」
「あぁ、さっきまでは見えていたっていうか……なんていうか」
「今も透明化してるのに完全に把握してるのです、うう」
そういって涙目になって落ち込む少女にこうやって会話しているのも原因なのではと思うキルヴィであったがそれを言うとなぜかもっと落ち込む予感がしたためキルヴィはいわないことにした。片手を差し出し、それでも立ち上がらせることができなかったので今度は両手を使って少女を立ち上がらせる。
「ふぅ、ありがとです。……でもなんでこんな森の奥深くに人の子が?」
「それを言うならお姉さんだってそうでしょう?」
「ボクは見た目通りの年齢ではないですし……いやいや、ごまかされませんよ?それであなたは」
「僕は住んでいた集落から追放か自害を迫られ、追放を選び、ここにいます。でも後悔なんてありません」
「お、おおう……なんか達観している子ですね。実は私と同じように見た目と年齢が一致していなかったりするです?」
「ほかの種族はあまり知らないですが、僕は数え年で6歳となります」
「幼子に何を迫っているんですかあなたの集落は!?」
「ついでに言うと僕は族長の息子で、その選択を迫ったのもその族長である父にです」
「おかしい!おかしいからあなたのお父さん!……いやでもなんかそんな風に達観せざるを得ない環境だったんですねぇ」
彼女は突っ込みを終えるとうんうんと何かに納得しだした。僕は気になったので聞いてみる。
「お姉さんも10代に見えますが、違うのですか?」
「10代……うふふ――違いますよ。そんなに幼く見えますかねボク」
なんとなく少しうれしそうに見える彼女……
「そういえば名前を知りませんでした。僕の名前はキルヴィ・アースクワルドといいます」
「名乗ってませんでしたね、でも知らない人にはそんなに簡単に名乗っちゃだめですよ?」
「教えて、下さらないんですか……?」
「うう、そういわれると困ります。わかりました、キルヴィ君に免じて名乗りましょう!私こそは夜灯の精霊!すべての旅人の夜の旅路を見守る精霊が一人、ラタンです!」
お姉さんはカンテラを灯し、片手を胸の前に構えてふんすと聞こえるようなどや顔で名乗りを上げたのだった。