遅れてきた援軍
最近感想を頂いたので嬉しくて仕方がないのです。これからも頑張りたいと思います。
宴が行われた次の日、門の外側に何やら集団が集まっているようだった。一瞬敵が戻って来たのかと思ったが、赤い点ではない。MAP上では白い点となっている。そのことを伝えると、ツムジさんは呼んだ援軍がたどり着いたのかもしれないと答えた。
「でも、もう戦いは終わったよ?その場合援軍に来た人たちはどうするの?」
疑問に思ったことを口に出す。
「なにも戦うだけが軍の仕事じゃないよキルヴィ君。町の修復を仕切るのも彼らの仕事なんだ。流石にラドンさんよりも上の人が出て来ているだろうし、もしかしたらなにがあったかを報告するよう呼び出しもあるかもしれないなぁ」
「えぇー、今日こそはグルメ巡りしたかったですのに……」
ツムジさんの言葉にがっくりとうなだれるラタン姉。でも、せっかく平和になったのだからその気持ちもよくわかる。
「……銃を買い取ってしまってたのはやばいかもしれないですね、あなた」
ヒカタさんの言葉にツムジさんはしまったという顔になる。ラドンさんの許可を得たとはいえ、お咎めがあるかもしれないとのことだった。その時、家の前に誰か来たようだ。家についている鐘を鳴らされる。
ツムジさんが出ると、そこには顔なじみとなった、あの夜一緒に壁にいた兵士さんがなぜか本屋のお姉さんと一緒に来ていた。お姉さんは、今日は質素で上品な服装に見えた。
「失礼、ここがツムジさんの家……ってツムジさん本人か。突然で申し訳ないんだけどもちょっとラドンさんの所について来てもらっていいかね?」
兵士さんのその言葉にツムジさんはやはり来たか、といった顔になる。
「行かないといけないのは私だけかい?ここにいる他のメンツは行かないでいいのなら教えてもらえると助かるんだが」
「そうだなぁ、ラドンさんは多分立役者の英雄2人にも来て欲しいと思うが……」
そういって、ラタン姉と僕の方を見る。僕達も活躍をしたが、恐らくは一番の活躍をしたであろうアンジュ母さんに話がいかないのだろうか?そう思い、母さんの方を見あげる。
「やれやれ、キルヴィは私も一緒がいいのかい?ならついていってあげるよ」
母さんはついて来てくれるようだけど、なんか白々しいような、そんな感じで腑に落ちなかった。その時ツンツンとラタン姉につつかれる。そして、耳に手を当てコソコソと話しかけてきた。
「あの魔法は持っている人が本当に稀なのです。みんなの中では不自然に思えたでしょうが、天が味方してくれたと解釈されたみたいなのですよ?」
それではあんな大仕事をしたにも関わらず母さんは何も関係ないようではないか。しかし、当人が主張しないのであればそれを尊重してあげるべきなのだろう。……ちょっぴり悔しかったので母さんの袖をぐいぐいと引っ張ると、あらあらと苦笑しながら頭を撫でられてしまった。そんな様子に周りが和む。むう。
「それで、そちらの方は何度か商売してる時に見かけたことがあるが……2人はどういった関係で?」
先ほどから兵士さんの後ろでなんだかもじもじしながら立っているお姉さんにツムジさんが声をかけると、お姉さんは慌てた様子でひゃい!と返事をする。
「ま、まままさかこの人の仕事に付き合うといったらソヨカゼ商会の会長さんの家に訪れることになるとは思わなかったので……商売をかじらせてもらっている身からしたらツムジ会長は天上人ですので緊張してしまいまして」
「いえ、この度お付き合いを始めまして」
「それはそれは……ん?仕事中だよね?」
喜ばしいことのように言おうとしたツムジさんだったが仕事と聞いてすごく複雑な表情になっていく。後ろで何してるんですかこの人達とラタン姉が突っ込んだのが頭に残った。
さて、兵士さん達に連れられて門の前まできたはいいが、ラドンさんと見たことのない鎧を着た人が何やらもめているようであった。
「来てみたのですが戦は終わったのですかな?慌てた様子の使者だったので急いだのだが……なんだ、大したことはなかったのか」
「いえ、大変でした。もう追い返しましたが、相手の将軍が攻めてきていましてね……前線がここまで後退しているとは聞いてなかったのですが本部は何をしているのですかね?」
「はっはっは、いや失礼。このような瑣末な場所まで攻めてくるとは思わなくてな」
何やらまた一波乱ありそうな予感だった。