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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
1区画目 幼少期
54/302

イベリ王国戦9 勧誘

いつもありがとうございます!

「敵将だ、殺せぇ!」


 兵士の1人の掛け声とともに、門の前に集まっていた戦闘員はマドール将軍を囲い込もうとする。だがーー


「しゃらくせえ!」


 昨日と同じ、銃の先にナイフをつけた槍の構えで殺気のこもった一振り。たったそれだけで皆気圧されてマドール将軍へ近づくことができなくなる。ずん、ずん、と一歩ずつこちらに進んでくるがそれに合わせて味方も下がる。時折矢を放つ兵がいるようだが、全て槍に払われる。


「どうした?俺はここにいるぞ、かかってこないのかこの腰抜けどもが……先ほどの攻撃、あれのせいで我が軍は大ダメージを負った……放ったのはどいつだ?答えよ!」


 その声にざわつく兵士たち。壁の上にいたキルヴィ達ならともかく、彼らは閉ざされた門の先で敵軍にダメージを与えていた出来事を知らないのだ。お前知ってるか?いや、知らないという言葉であふれる。そんな光景に苛立ちを隠さないマドール。


「この反応、少なくともこの町の代表的な奴の力ではないのか?……役に立たぬ雑魚に用はない、失せよ!」


 そう強く言い放つ。たまらず数人が激昂し、飛びかかっていったが一瞬後には体が2つに切り飛ばされた。一瞬マドール将軍はつまらなそうな顔をする。が、どういうわけか壁の上にいるこちらを見つけたようで、凶悪な笑みを浮かべながら向かってきた。


 僕はそれに応えるように昨日よりも正確に、そして一部土魔法で直接狙いを定め数多くの投石を行う。マドール将軍は致命傷になりえるものだけを槍と発砲で弾きながら、多少の怪我を無視しながら突っ込んでくる。距離がだんだん近くなり眼前に迫ってきた。


 この時、僕は自分の力を無意識に過信していたことに気がつく。いくらMAPで遠くにいる敵の姿を捉えることができようとも、いくら正確に投石ができようとも、素早く力も上という戦闘力が自分より上の者を倒すには力不足ということで、つまりは現在すごくピンチであった。棍棒を抜くが、馬上の相手の刃の方がずっと早い。間に合わない。


「しまっーー」


 割り込む影と何かに抱きつかれた衝撃と金属音。そして相手の槍の勢いのまま遠くへと吹っ飛ばされるが、うまく着地したようだった。


「キルヴィをやらせはしませんよ……!」


 守ってくれたのは、今まで見たことのない無表情なラタン姉だった。先日買った盾を使って相手の攻撃を防ぎつつ、うまく間合いを取ったといったところのようだ。自分の攻撃を防いで見せたのが少女といった事に驚いた顔をするが、マドールはすぐに笑顔になる。馬上で姿を正す。


「そこの……たしかキルヴィ?といい、先ほどの攻撃といい、そして俺の一撃を防ぐお嬢ちゃんといい、この町には磨けば光るような奴がゴロゴロいやがるな!つまりは最重要な攻略対象として間違ってなかったって事だ。ここまで実力があるのが敵だと思うとちと惜しいがな」


「あら?ボクはこれでもあなたよりもオトナな女性なのですよ?……っとあなたでしたか、夜灯の加護持ちは。全く、同族も厄介なことをやってくれたものですよ」


「はっ、精霊さんかよ。姿を見るのは初めてだが割と世俗的なんだな?」


「しまったのです、加護だけ与えて精霊にあったことがない人でしたか」


 それを知ってれば透明化で少しは楽ができましたのに、と悪態をついてみせるラタン姉だが、抱きしめられている僕にはわかった。おそらく先ほどの攻撃でダメージを受けたのだろう、盾を構える腕が小刻みに震えている。先ほど魔力消耗もしているので、身体、精神ともにギリギリなのだろう。無表情なのは表情を作る力もないのか、それとも敵前だからと隙を見せないためか。こうして会話をすることで少しでも回復できるように時間稼ぎをしているのだ。


「気が変わった……なあ、あんたらこの町に、この国にこだわる必要あるのかよ?特に精霊のお姉さん。うちの国に、イベリ王国にこないか?あんたらを失うのはあまりに惜しいんだ」


 武器こそ構えたままだが、少し優しい声音と表情になり、マドール将軍はそう勧めてくる。ラタン姉は眉をひそめる。


「勧誘、ですか。ボク達の力を認めてくれるのは嬉しいですが、そうした場合町の人はどうなるのですか?」


「そりゃ後は必要ないから殲滅よ。それともその子の身内でもいるのか?ならその家族分くらいなら保護してやるよ」


「戦争を持ち込んだのに勝手がすぎるのです、ふざけないでください!」


 そういって僕を近くに置いてから数少ない魔力を赤、白、黒の光に変え纏うラタン姉。対して、やれやれといった顔になったマドール。


「これでも譲歩したつもりなんだが……残念だ。最悪勝手に持ち帰るかね、死んでも恨むなよ?」


 再び攻撃が始まる。僕は石と棍棒で、ラタン姉はランタンシールドで、対してマドール将軍はあの短槍で打ち合いが始まる。


 その頃、視界の端にあるMAPを見る限りでは門の前でも戦闘が始まっていた。敵の残りが足並み揃えて突撃してきたようだった。それを通すまいと緑の点でできた壁が防いでいる。今のところは拮抗しているようだった。


 戦闘は激化していく。

イベリ王国戦もいよいよ大詰め!

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