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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
1区画目 幼少期
34/301

旅行の話

いつもありがとうございます!

 昼に大人組が食堂にやってきた。突然の話であるが、今度町に出かけるという。町というものを話でしか知らない僕にとってとても楽しみな話である。


「あぁ、美味しいのです!美味しいのです!朝たべれなかったからお腹が空いてしまってたのですよー!」


「あなたはお腹空かないでしょうが」


 そんなやりとりをするラタン姉とアンジュさん。いつも通りのラタン姉に見えるのでやはり朝のは見間違いか何かだったのだろう。ぼーっと眺めているとツムジさんがこちらに身を乗り出してくる。


「キルヴィ君、この間の地図って何枚でもいけるのかい?あれはいい商売になるよ。自分でお金を稼いで見るのもいい経験になると思うよ」


「あれですか。何枚でもいけるはずですけどあまりこの辺に人が来られても困るので作りたくないですかね……」


「なら町に着いてから作るといい。町の周辺の地形こそ、多くの人に需要があるのだよ。森の中は冒険者か同業者くらいしか食いつかないだろうし……数枚あれば十分だろう。紙はほら、ここにあるから検討してみてくれないかな?」


 そういって10枚くらい上等な紙を渡される。……あとで森のも必要になるなら試しにここで1枚作ってみようか。そう思い前回同様ペンを持って印刷すると念じる。


<MAPは前回使用された後にアップデートされています。この辺りに住む魔物や生物のデータを添付可能になりました。それらのデータを反映しますか?はい/いいえ>


 これもはいを選択する。そうして出来上がった地図は、前回よりも範囲が広く、若干縮尺されたようになっていた。そして所々に何か印のようなものが浮いている。試しに1つ、つついてみると半透明な文字が空間に浮かび上がり、そこに住む生物の名前が記されていた。ツムジさんが食い入るように新しい地図を見出す。そして一通り眺めた後、折りたたんでふうとため息をついた。


「キルヴィ君、これはダメだ。売ってはいけない」


「そうなんですか?前よりも正確に情報が引き出せるようになったように感じましたけど……どうダメなんですか?」


「いや、内容に文句はない。正確なのはいいことだ。しかし使われた技術が問題でね……これはもう魔法の地図の領域だ。この空間に出ているのは魔道書によく見られる空間文字の技だ。使用できるものは少なくてね……国は躍起になって使用できるものを探しているのさ。前回の普通の地図なら売れると約束できるがこれは売ったら最悪国に目をつけられかねない……ここに付箋という、糊がついた色付きの小さい紙があるから、書きたい情報はこちらに別で書いてくれればセーフだ」


 空間文字。魔道書と聞いてとっさにラタン姉の方を向いてみる。ラタン姉とアンジュさんはツムジさんの手にある畳まれた地図を真面目な顔で眺めていた。


「空間文字は特定の条件がないと開けない暗号魔法の一つなのですよ。この地図の場合は指でつつく、ですかね?条件を変えることができるなら国は本当に黙っていてくれないでしょう」


「できると思うけど……でも、ラタン姉だってこの夏に空間へ文字を書いてみせたじゃないか。ラタン姉も使えるんじゃ?」


「キルヴィ違うのですよ。空間に文字を書くというのと空間文字は似てるようで全然違うのです。空間に文字を書くのは魔法を使えるものならたいてい書けるのです。留めること、みるのに条件が必要なことが重要なのです」


 聞けば戦争状態故にどこに敵の手のものがいるかわからなく、情報をいかに秘密裏に伝えれるかで国はやきもきしているらしかった。そのため、空間文字を使える魔法使いは国に高待遇で迎え入れられているそうだ。自分にもその能力があるとは驚きである。


「他のものは書けるのですか?自由にできるのなら役に立ちますよ」


 ラタン姉にそう言われて、とりあえず先ほどのメニューを頭に浮かべながら空間文字の記入を念じてみる。しかし書けなかった。


「どうやら地図に関することだけという制限があるみたいだねぇ。それでも十分すごいんだけどね」


 アンジュさんがパシパシと背中を叩きながらいう。今までもたまにやられていたがいつもと違い、なぜか今日は少し痛かった。


「で、この地図どうする?」


 ヒラヒラとさせながらツムジさんは聞いてくる。世に出せない以上、ツムジさんが持っているのはツムジさんもこちらも危険だ。破棄してしまったほうが安全だろう。ラタン姉にお願いする。ラタン姉は頷くとその地図をランタンの中に入れてしまった。地図は新しい紙だというのに一瞬で燃え尽き、灰すら残さなかった。それを見届けて、アンジュさんがパンパンと手を叩いて注目を集めた。


「よし、憂いはなくなったね。では各自旅行の準備に取り掛かろうかね!」


 アンジュさんのその宣言で場は解散となり、ツムジさんも帰路に着いた。


 庭に吹く少し肌寒い風が秋の到来が近いことを告げていた。

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