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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
2区画目 少年時代
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スズちゃんとの侵攻④実験

「にしてもこれ、なんなんだろう。普通の水って事はないだろうし」


一息つけたのとどうやらもう安全そうだという事で少し余裕ができてきたのか、そんな疑問が浮かんでくる。


やばいものだと直感的に感じたのだ、流石に触りたくはない。もちろんスズちゃんに触らせるつもりもないが。


何かいいものがないかとMAPで辺りを見渡す。鳥の魔物が飛んで行くのを捉えた。……可愛そうだが、ちょっと犠牲になってもらおう。


肉眼で視認できる位置まで来たところで、投石。哀れ魔物は突然の襲撃に対応できず、水の中へと落ちていく。着水音の後、暫くはバチャバチャと水を掻き分けていたが、肉と皮はそのまま沈み込み、残った骨だけが溺れている有様となり、やがてその骨も沈んでいった。スズちゃんと顔を見合わせて、沈黙。


「これは……どうしたものか」


改めてヤバさを確認できたのは良いとして、現状進む事はできなくなったという事だ。連続でこの攻撃が来ないか、この水がいつ引くのか、他の隊は大丈夫かといくつもの不安がよぎる。


まあ、試せる事はなんでも試しておくべきか。せっかくサンプルも時間もあるのだ、次この攻撃が来た時に逃げる以外で対応する事はできないかとやってみることにした。


まずはスズちゃんが火球を叩きつける。接触後、勢いがあったのにも関わらず沈み込む事もなくその場で炎上。延焼する事もなく、ぶつかった部分のみが暫くの間燃え続けた。鎮火後、炎上していた所は何か膜のようなものが張っていた。


次、スズちゃんの熱線魔法を照射する。当たったところが硬化したのか、線が走った所は切れたように暫くそのままとなった。これは有効かと思ったが、硬化が解けたのか、それとも周りの水が充填させたのか、元に戻っていってしまった。


何度か試すも、同じ結果となった。時間制限みたいなものがあるみたいだが、結果としてあたりはそこまで悪くないといった所だろうか。


次、僕の番だ。まずはスズちゃんが火球で作った膜に向かって投石をしてみる。ボヨン、と投げた勢いそのままで弾かれる。どうやらあの膜には弾性があるようだ。徐々に大きい石を投げていき、投げれる重さで測り切れないとなってからは土魔法で岩石を射出してみたが、その何れもが弾かれてしまった。薄いように見えるがなかなか頑丈らしい。


比較として膜のない部分に投石をしてみるも、こちらは普通に沈み込んでいった。火で性質が変化したという事なのだろう。


スズちゃんに熱線をもう一度撃ってもらってそこに投石をしてみると、やはり、硬化しているのか何かが割れたような音とともに崩壊して飲み込まれていった。


次に水球を放つ。混ざる物だろうと思っていたのだが、水と油のような関係なのか、境目がはっきりとわかる結果となった。……だからなんだ、といった感じだが。


次、泥沼で作ったを流し込む。暫く浮かんでいたが、乾燥したような見た目になって沈んでいった。


次、光の定規。いつものように地形ごと吹き飛ばせるのかといったらそうでもなく、熱線よりも広範囲、より長く硬化させる程度で終わってしまった。


結果をみるに、僕の得意な技に対して対策がされている感じがし、技を封じてしまおうという魂胆が垣間見える。僕単体で行動していたら危ない目にあったかもしれない。


次で最後にしようと、ストックの少ない氷結魔法のスクロールを広げる。問題なく発動され、黒い水に着弾する氷。


ガチリ、と鈍い音がした気がした。


次の瞬間には着弾点を中心に、全ての黒い水が一気に凍りつきはじめ、あっという間に凍てつく大地が形成された。


「キルヴィ様、やりました!弱点を見つけましたね!」


嬉しそうにするスズちゃんに、しかし僕は曖昧な、気の抜けたような返事を返しただけである。


凍結が弱点、か。これがウル兄さんの放った攻撃だとしたら、母さんやおじいさんが得意としていた属性が弱点になってしまうとは、なんと皮肉なことなのだろうか。


暫くすると、凍結した黒い水は液体に戻ることなく、火球で変質した部分だけを残して溶けて消えていってしまった。安全を確認し、残った部位を拾い上げる。


ほんのりと透けているそれは思ったよりも硬く、すべすべとした感触であった。


「えぇ、キルヴィ様それどうするつもりですか?まさか持っていく、なんて言いませんよね?」


「ん?どうして?」


すごく嫌そうな顔をして手に持っているそれを見つめているスズちゃんの質問にそう返す。結構面白い性質を持っている、貴重な素材だ。害がないようならば持っていきたいのが冒険者の常だろう。


「んー、主人の判断には逆らえませんけど……それの何がいいのか私にはさっぱりです。以前から度々思っていましたが、キルヴィ様は変な素材マニアですよね」


が、スズちゃんはそうは思っていないようで、バッサリと切り捨てられてしまった。無念。

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