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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
2区画目 少年時代
204/302

夕刻

「でも、本当に何をやったんですか?」


早速2人だけの空間を作り出した自分の兄を放って、リリーさんへと質問をするスズちゃん。


「さっきはあんな感じに行ったけどあんまり特別な事はしてないんだ。ただ、先に体力作りのためにこの街の外壁を全力で走って貰ったり、強襲の予行として壁から飛び降りて貰ったり逆に登ってきて貰ったりしただけで……」


「十分やばいですから!?そんなの、私でも無理ですよぅ。モーリーさん、よくついていけましたね……」


愕然とするスズちゃん。ラタン姉も首をふるふると振って想像したくないという様子であった。因みに僕はMAP上で確認していたので大体は知っていた。今の内容ならばやれ、と言われればできなくはないが1日でできるようになったのなら大したものだと思う。


「最初こそ息をあげていたが、途中から「体を動かすのもいいものですね」って笑ってついてくるものだからついペースを上げてしまってね。それでもついてきたときには私も流石に驚いたよ」


その言葉にスズちゃんとラタン姉はがくりと膝を折る。


「想定外だったのです……まさかクロムに続いてモーリーまでキルヴィ脳だったとは」


「でも、お兄ちゃんと似た者同士ってことを思えば予見できた事でしたね」


すぐそこで未だ2人の空間を作っているのに少々イラっとしてきているのか、やや眉を寄せながらリリーさんは続ける。


「ウサギ型ライカンスのハーフ、っていうこともあるんだろうけど脚力は凄いね。一応ブラックジャックも教えてはあげたけど、ありゃ蹴りの方が強いわ」


「ところでクロムも言っていたけど、ケモノ分が耳しか残ってないのはどうしてなのです?」


「ライカンスには時々、自身の獣要素をを部分的に集中させることができる力を持った者がいるみたいなの。多分見えていないだけで、足に力がたまっているんだと思うわ」


本人も今まで使ったことなかったし、どうやって調節できるのかがわかっていないらしく、やり方がわかれば元の姿に戻れると思うとのことだった。


「とりあえず蹴り中心の体術を教えてあげたんだけど、所詮付け焼き刃ってところね。それでも力技で押し切れるだけのパワーを持ってるから大きく戦力があがったと言えるわ。そちらは何か、変わったことはあったかしら?」


グリムのメンバーであるヨッカさんが同行をしてくれるという話をすると、リリーさんは少し懐かしむようなそぶりをしてみせた。


「ああ彼女ね……彼女のことは知っているわ。イベリとの戦いの時によく頑張ってくれていた子だもの。そう、貴方の傘下に入ったのね。役割として、今回兵站管理をするツムジさんの手伝いをしてもらえると助かるわね」


それならば彼女にはキャリアもあるし前線よりは危険性が少ないだろう。僕としては異論はなかった。


「さて、と。そこの2人?そろそろ戻ってきなさいな。あんまり浮かれていると命を落とすわよ」


「「はい、すみません!」」


「よろしい」


リリーさんの、怒りが混じったような少しだけ固い声を聞いて、クロムとリリーさんはビシッ!と背筋を伸ばして応えてみせる。おおう、もう統制が取れてるな……


「さて、キルヴィ君以外は明日に備えてもう休みなさいな。キルヴィ君、ちょっと付き合ってもらうわよ?」


その言葉に少しだけ不服そうな顔をするラタン姉だったが、リリーさんが「別に貴方から取る気は無いから安心なさいな」と、いつか聞いたような言葉でなだめる。最後はスズちゃんが肩を抱いて連れて行ってくれた。


「で、僕は何をすれば?」


恋人2人の後ろ姿を見送ってリリーさんにそう尋ねる。


「申し訳ないんだけど、うちの馬鹿どもを探す手伝いをしてもらえないかしら?まだ戻ってきていないのよ」


ああ……それは確かに僕とやったほうが効率はいいだろう。頷いて了承を示す。


「悪いわね。あの子達の名前は覚えているかしら?わからなかったら名前を挙げていくけど……」


「挨拶した時に名前と一緒に顔も覚えたので簡単に探せますよ。……どうやらばらけて行動しているみたいですね」


縮地をするからとリリーさんに手を差し出すと、彼女は反射的に手を乗せかけ、ピタリ止まる。そして少しだけ顔を背けながら「くっ、天然たらしめ」と何故か悪態をつかれた。解せぬ。


「いや、悪い。キルヴィ君自体は悪くないんだが、どうしてもあいつがチラついてしまって心ないことを言ってしまう。どうも、駄目だな」


本当に申し訳なさそうに弁明をし、今度こそ僕の手に手を重ねてくれた。母さん達に再開してから、リリーさんが「あいつ」と言うたびに心の奥がざわつく様な感覚を覚えているが、これこそが母さん達が言っていた僕の前世の記憶なのだろうか?……なんだか自分ではない、知らない自分がいるみたいで、ちょっとだけ怖いと思ってしまった。その気持ちを振り払い、まずは近くにいた華撃隊の所へと僕は跳んだのであった。


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