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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
2区画目 少年時代
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踏み出す一歩

忙殺されておりました。

「グミさん?町のような人の多くて騒がしいところはまだやめておいた方がいいのでは」


そう尋ね、反応を伺うとグミさんはかぶりを振った。


「私は十分に休養を取れました、というよりもセラーノ達直接被害を受けた人が前に進もうとしているのに何もできない自分が悔しく思えてきちゃいまして……。迷惑をかけるつもりはありません、どうか連れてって下さいませ」


そう言って、頭を下げられる。どうしたものかとセラーノさんやカシスさんの方を見ると2人からも頭を下げられたので、ある程度は事前に話し合っていたのだろう。


彼らはもう、前を見据えてくれているのだ。


「わかりました。それでは当日は僕、スズちゃん、ラタン姉と共に回りましょうか。クロム、後で集合場所と時間も決めておこうか」


「そうですね。……あ、そうだラタン姉さん。以前話をしていた激選スフェンのおススメグルメ紀行について後で詳しく教えてもらってもいいですか?」


モーリーさんに聞こえないように小声でラタン姉に話しかけるクロム。なんか大仰な、本の名前のような言葉が聞こえてそちらを見るとラタン姉は小さくサムズアップして、同じく小声で応えていた。


「良いのですよー。じゃあメモしておくので参考にしてくださいなのです」


ああ、クロムはできる感じでリードしたいのだなと思いつつ、実はモーリーさんの耳が持ち上がって2人の方へと向けられていたため、このことが筒抜けだという事には気がついていないようであった。僕の視線に気がつくと人差し指を口元に立てられる。楽しそうで何よりです。


各々自分のやりたいことを再確認しつつ、今度こそその日の会議はお開きになったのだった。


後日、すぐ戻るからと何重にも約束をして僕単独でスフェンまで縮地で移動し、ツムジさんに次回訪問時の日程を伝え、グリムへの伝言もお願いする。今度にはモーリーさんやグミさんが訪れると聞き、短い間とはいえアムストルで共に過ごしたツムジさんはどことなく安心したように見えた。


◆◆◆


「はー、ここがスフェンの町ですか。全方向を高い壁に阻まれてるなんて、アムストルとはずいぶんと違って見えます」


「どちらかと言えばこっちの造りの方が一般的なのですよ。ボク達もアムストルに初めて訪れた時とても驚きましたのです」


この地域が初めての2人に周りの景色を覚えてもらうための散歩と縮地を繰り返しつつ、スフェンの町まで辿り着く。今は真昼の手前くらいだろうか。すっかり顔馴染みの門番さんに事情を説明しながら2人分の通行証を認めてもらい、町の中に入る。


大通りは冬ということもあって、人影はまばらであったがそれでもなかなか賑わっているようであった。その様子を見てグミさんはアムストルのことでも思い出したのだろうか、少し遠い目をしていた。事前の約束通り、まずはツムジさんの家に向かうと彼は庭先で僕たちを待ってくれていた。


「ようこそスフェンへ。話したいことはいろいろあると思いますが、まずは中へ」


主にグミさんに対してそう言いつつ、家に招いてくれる。中ではツムジさんの家族の面々がやや格式張った服装で、しかし1人足りない状態で待っていた。ヒカタさんを家内と、そしてナギさん達を娘夫婦と紹介する。ナギさんの説明の後にツムジさんの紹介の手がどこかをさそうとして虚空をさまよった事に、いくら記憶が消されてしまったとはいえ、イブキさんという存在がここにあった事を感じさせられた。


グミさんがスフェンの町としてのあり方をツムジさんに少し尋ねてみたいと言うので、その間にこれからのスケジュールを再確認する。


まずはグリムの代表との会談。ヨッカさん達はどうやら既に指定の場所に集まっているようで、その中にはハドソンの名前もある事から今日問題なく子供グループとも顔合わせができることがうかがえた。


その後は自由時間。集合場所をツムジさんのとして日が暮れるまで今日初めてスフェンに来た2人に町の事を教える時間だ。クロムは平静を装っているが、モーリーさんと行きたい所が、それこそ全部回るとしたら3日かかるのではないかと思う量がびっしりと書かれているメモと昨晩僕が作成した魔法地図が服の中に入っているのを僕は知っている。……まあ、実質デートだから気合いが入るのはわからないでもないけれどもモーリーさんのペースに合わせてあげてね。


自由時間が終わったら転移で家まで帰る。別に行きと同様に縮地をして帰っても良いのだが、夜なので見通しも悪く経験にはならないだろうと皆と話し合った結果である。連発しているわけでもないので問題ない範囲だ。


「お待たせしました。お時間取らせました」


そのタイミングでグミさんがこちらに話しかけてくる。聞きたいことはひと通り聞くことができたらしい。僕達は頷くと、グリムとの待ち合わせの場所まで移動をするのだった。

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