ステータス
「えっ、一部見れないし魔力量多いしパラメータはおおよそ平均越えってなんなのですかキルヴィは!?」
「今読み上げたのは本当なのかい?先祖返りって聞こえたが、ステータスに出るってことはアードナーってのはそんなのもいるんだね……どんなものなのかはわからないけど」
2人はキルヴィに詰め寄るが、そんなことはキルヴィにだってわからない。困った表情を浮かべたままでいるとステータスすら知らなかった子に聞いても無理な話だと理解したのか、2人で向き合って考察し合う。
「まず、ラタンの鑑定スキルはどれくらい正確なやつかはわかるかい?」
「ボクの鑑定スキルは中級クラスです。スキルのレベルについてはアンジュも知ってますよね?初級、中級、高級に加えて時々超級とかもっとその上のやつがあります。鑑定の場合、初級は対象の名前と職業、基本パラメータだけを、中級は加えて種族、称号や所持スキルを、高級はレベルと経験値、加護を知ることができるのです」
キルヴィのためにも各級毎に指を折りながら知ることのできる情報について話すラタン。
「鑑定を妨害することはできるのかい?前科持ちや隠密にしたい事情を持つ人だっているだろう?……キルヴィに言っているんじゃないからね」
「可能です。例えば鑑定持ちが自分より下位の鑑定を受けた時、鑑定されたと気がつくことができれば情報が掴めません。また、認識阻害や隠蔽系のスキルを持っていて、その対象にステータスを入れていると失敗します」
「キルヴィはそのどれかに該当するかは?」
「鑑定は持ってないので違いますし、事前に聞いていた限りでは隠蔽系のスキルもありません。そもそもステータスを知らなかったのですから対象にできないはずです。……だいたい、基本パラメータなどが出ている時点で鑑定自体は通っているはずなのです」
「つまり?」
「お手上げなのですよ」
そう言って両手を高く上げるラタン。そんなラタンにキルヴィは疑問をきくことにする。
「あの、ラタン姉……今の鑑定っていうのはユニークスキルもわかるものなの?」
「んう?わかりますですよ。スキル名の後にユニークスキルって表示されます……ってああ!読めないスキルはMAP機能とかいうユニークスキルですか!」
どうりで何か少ないと思ったと言うラタン。しかし、再びすぐに考え込む。
「いや、しかし単独で鑑定を弾くスキル……?生まれて約60年、旅をした中でもそんなのは見たことも聞いたこともないのですがね」
「まあ何かわかっただけすっきりしたじゃないか。しかし、改めてすごいステータスだねぇ。一部なんかそこらの大人顔負けだよ」
聞いていたことをいつの間にかメモしていたのか、アンジュは紙を眺めながらそういう。
「ほらキルヴィ、あんたのステータスだ。自分でも見てみるといいさ」
キルヴィは紙を渡されたがよくわからなかった。というよりは――
「すみません、この絵はなんなんでしょう?」
と文字を指して尋ねたので、この時2人ははじめてキルヴィが字を読めないことに気がついた。
「いや、ごめんね。普通に受け答えできてるから字を読めるもんだと勝手に思ってしまっていたよ」
「いいですかキルヴィ、これは文字といって絵じゃなく……絵じゃなく?な、なんといえば伝わるでしょう?アンジュちゃ〜ん」
得意げに説明しようとして言葉につまり、涙目でアンジュに助けを求めるラタン。
「記号なんだ、絵と説明しても問題ないだろ。キルヴィや、これはきめられた記号を組み合わせて意味のある言葉を表す絵なんだよ」
「これひとつひとつが意味のある記号……?」
「そうさ。賢さ5ってのは単純に知識が足りないだけのように感じるね。この子は化けるよラタン」
「さすがはボクがパートナーにしたいと思った子なのです!」
ふんす!と得意げにするラタン。その様子を少し引き気味に見ながらアンジュは続ける。
「……今のであんたがなんか危ない奴に感じてしまったよ。でもまあ、私もこの子が気に入ったんだ。知ってることは教えてあげようかねぇ」
「あ、ボクもなのです!」
こうしてキルヴィは2人からものを教わることになったのだった。
ここからある程度作中の時間は加速予定です。