団欒
だいぶ間が空いてしまいました……1週間に一回のペースも難しいかもしれません
あの後もヨッカさん達と話し合いを続けていたら辺りはすっかり暗くなってしまっていた。これは皆に、特にラタン姉に心配かけてしまうからとクロムに促され、ひとまずは解散しまた会合を開こうということになった。
「全員でやる必要はないだろうし、グループを作ってその代表の寄り合いとしよう……悪いけどヨッカさんは代表確定ね」
なんて言ってみせたら、無関心も友好反応も慌ただしく動きを見せ始めた。友好反応はただ単に自分が代表になりたいという話し合いに感じたが、無関心の反応は……なんらかのアクションがあるかもしれないな、次回は用心しておこう。ヨッカさんは自分が代表にされるとは思っていなかったらしく目を白黒させていた。
「光栄ですが……でもなぜ私を?お恥ずかしながら実力からいえばこのメンバーの中で下の方だと感じていますが」
その言葉に首を振る。
「あの場で質問してみせた上に、気にかけていることが自分のことじゃないなら、僕は実力がないようには思いません。貴方のような人はこれから新しく傭兵団を設立する上で代表に選ばない訳にはいかないでしょう」
繰り返すがグリムの設立は戦力だけが目的ではないのだ。
「でも……いいえ、せっかく選ばれたのですもの、これ以上困らせてはいけませんね。代表の件、謹んでお受けさせていただきます」
よし、優秀な人をまずは1人確保できた。ヨッカさんには年少組とのパイプ役も担当してもらいたいし、こうやって決めておけば次回の寄り合いの時に話をふりやすくなる。後はどのような人物が代表として選ばれるのか、次回を楽しみにしようと思う。
今日1日ついてきてくれたツムジさんとラドンさんにお礼を言い、2人帰路につく。人目につかない場所へと移動し、我が家へと転移するとやわらかな明かりが灯っていた。微かに漂う美味しそうな夕餉の匂い。MAPで確認するとどうやらスズちゃんが作っているようだ。
そして近づく2つの反応。
「おかえりなさい、なのです」
「ただいま、ラタン姉」
◇
「『泣くのはこれっきり』とは、大層な名前をつけたのですね。でもキルヴィらしいのですね」
いつものように食卓を囲み、グミさんたちやトトさんたちも話を聞こうと集まったところで今日の出来事を話す。メンバーに早速絡まれたとクロムが口を滑らせた時はしまったと思ったが、ラタン姉は笑ってこれを流し、話を続けたのだった。
「意外だ……『また危ないことをして』って怒られると身構えたのですが」
クロムがたまらず突っ込むと、何故かラタン姉を見ながらスズちゃん、モーリーさんがニヤニヤしながら顔を見合わせる。
「だそうですよラタン姉?」
「心配のあまり陽が傾いた頃に町へと向かおうとしていた、なんて口が裂けても言えそうにありませんねラタンさん!」
酷いネタバレの声に、ラタン姉は先ほどまで余裕を感じられた笑顔を静かに赤く染めていく。
「あー、昼間の屋敷中を歩き回る忙しない足音はラタンさんだったんだねー?なんなんだろうってトトさんと気にしていたんだよー」
「ニニ、追い討ちをかけちゃいけないよ」
「うわぁぁぁん!」
ニコニコとニニさんがそう突っ込むと、溜息をつきながらトトさんがそう諌めた所でラタン姉の笑顔は決壊し、テーブルに突っ伏してしまった。口には出さないが、こうやってラタン姉が恥ずかしがっている姿を見ると皆なごむようで、くっくっとグミさんたちも声を抑えて笑っていた。
「まあまあ、無事なんだしいいじゃないですか。それで、近いうちにまた行くんですか?」
ラタン姉が崩壊した原因のモーリーさんがそう尋ねてくる。
「ええ。年少組と顔合わせがすんでませんし方針なんかも決めておきたいですからね」
「ならその時には私もスフェンに行ってみたいです。私今までアムストル以外の町へ行ったことがないのでどんなどころかずっと気になっていたんですよ」
「じゃあ一緒に行きましょう。クロム、モーリーさんに案内してあげたら?」
「ではそうさせていただきます。となると次は私以外の付き人がいないと困りますね」
別に僕一人でもいいのに、と言おうとしたらスズちゃんと復帰したらしいラタン姉に睨まれた。解せぬ。
「ボク達もついて行きます。クロム以外にもこんな顔が居るのだと知ってもらういい機会ですしね」
町に行くのは僕、ラタン姉、スズちゃん、クロム、モーリーさんか。食事も終えたし解散かなと思った時だった。
「でしたら、私も同行させて下さい」
最後に手を挙げたのはなんとグミさんだった。