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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
2区画目 少年時代
155/302

ガールズトーク

◇ラタン姉視点◇


キルヴィがトトさんとセラーノさんを連れて近くを案内してくると出ていったその日の昼下がり。


「アンジュ、聞いてくれますか?ボクの想い人はすごく身近な存在でしたのです」


なぜか埋めなおしたような跡があるアンジュのお墓に向かって語りかける。


ボクの想う相手がキルヴィだと知った時。


そしてその想いが今の所は結ばれていると聞いたなら。


……多分アンジュなら驚いた後で嬉しそうな顔になり祝ってくれたんじゃないかと思う。なーんて、ボクの勝手な想像でしかないんですけどね。もしかしたら歳の差考えなさいと笑うかも知れないですが。


「あ、ラタン姉ここに居たんだ。アンジュ様とお話?」


後ろから声をかけられ、振り返るとスズがこちらを覗き込んでいた。頷きながら立ち上がり、墓に背を向ける。


「ええ、風邪でダウンして遅れてしまいましたけど報告しておこうかなって。スズは体調どうですか?」


「んー、なんかお腹が重くて……まだ本調子じゃないかも」


お腹が重い?風邪の症状ではないような……ああ、そういえばこの子はまだだったか。ちょうど身内であるクロム以外男連中がいない時でよかったかも知れない。精霊であるボクでは体の作りが違うし、周期もあまり参考にならないでしょう。他の女性陣に教えてもらうように頼んでみますか。



今は誰もいない食堂でボクとスズ、モーリーさん、グミさん、カシスさん、それからニニさんという6人で集まる。アンにはまだ早いだろうとクロムに任せてきた。スズの体調についてある程度のことを年齢も近いモーリーさんに説明してもらうと、本人は目を白黒させていた。


「えぇー、じゃこの怠さって続くんですか?」


げんなりとした顔でボク達の顔を見回すので頷いて見せると机に伏せこんでしまった。


「まあまあー、誰しも通る道なんだから大人になれたって思わないとこの先やってられないよー?」


ニニさんが少し困ったような笑顔を浮かべながらそう述べる。他にどう言っていいのやらわからない、そんな顔だった。


「スズちゃんはまだいい方だと思うけどねー?回復魔法で多少は誤魔化せるんだから」


話に上がったが回復魔法が使えるのと使えないのとではこの期間の辛さにかなり差がある。生活魔法の一部で代用することができなくもないが、あくまで代用でしかないのだ。


「さっ、この話は話すほどに気が重くなっていくのでやめにしましょう!解散にしますか?」


モーリーさんがボクにそう尋ねてくる。この会を開いたのがボクなので伺いを立てているのだろう。まぁ解散でもいいかな?と口を開こうとした時伏せていたスズが起きあがった。


「うーん、長いお付き合いになるのですしこの場で親交を深めませんか?せっかく女の子だけで集まれたんですし」


女の子、という言葉にボクが適応されていいものかやや悩んでしまうそぶりをして見せると同じようなそぶりをしているグミさんと目が合ってしまった。途端に無表情になりこちらをまじまじとみてくるので無言で手を差し出してみる。


「同志でしたか!」


「気になっちゃいますよね?仕方ないですよね!?」


ガシリと固い握手と心で結ばれるボクとグミさん。今の間に何が起こったのか、周りがついていけなかったらしくポカンとした表情を見せるのだった。未婚のまま半世紀くらいを過ごしたことのない人々にはわかるまい。くそう、本当の若さっていいなぁ。


「ん?ああ、ガールズトークだから自分がガールなのかと自分の年齢を気にしていたのか!確かグミっちはよ」


ガイン!と鈍い音が食堂に響く。何かを口走りそうになったカシスさんのすぐ隣の床を、火かき棒が貫いていた。


「カシスちゃーん、すっかり空気の読めない元のおつむに戻ったようで何より。後で時間はあるかしらー?」


黒い笑顔が張り付いた同志がそこにはいた。自分が地雷を踏み抜いたのだと気がついたカシスさんが真っ青な顔になる。


「ひゃい!?ごめんなさい、許してください!」


「うふふー、ダーメ」


いい笑顔のまま、グミさんは首の前で親指を引いてみせた。自分で思うのと人に言われるのとはまた違うものだ。ボクはまあ事実であるからと割り切れるがグミさんは嫌だ、それだけのことである。


ともあれ床に穴が開いてしまった。せっかく直したのにと後でアンが泣きそうだなぁ。


「……で、話すといってもなにを話します?いざ話すとなるとこれといったものが浮かんでこなくて」


モーリーさんがそう言う。こういう話はどこの店が美味しいか、とかあの店の服飾は綺麗だとか話すのが定番だそうだがその店も無くなってしまった人々である。……キルヴィに無理はさせたくないけど、できればスフェンの町に連れていってもらって案内してあげたいなぁ。


話題について悩んでいるとスズが指を立てるのでそちらに注目する。


「んふふー、実は私気になることはあるんだ!そのものズバリ、好きな人について!さあモーリーさん、お兄ちゃんのどこが好きになったの!?」


「えっ、えぇー!?この場で、ですか」


あっ、スズやっぱりまだ風邪気味かもしれない。そんなこと質問したら……


「じゃあじゃあ!スズちゃんがキルヴィ君のどこが好きになったのか教えてくれたなら!言うの考える、けど」


「んえぇ!?キ、キルヴィ様を好きになった理由!?」


そら言わんこっちゃないのです。カウンター食らうに決まってるじゃないですか。何気に言うではなく考えると言葉を変えているあたりモーリーさんも賢い。


「いやー、初々しいねー?ねー、ラタンさん?」


お互いに譲らない2人をニニさんは余裕の表情で眺めている。というかボクに話をふらないでほしいのです。人妻で妊婦なあなたと同じ高みにボクはいないのです。


「キルヴィ様についてだったら!ラタン姉だって好きなんだからそっちのが面白いかもしれないよ!?」


あーほら、ニニさんが名前あげたからいつかのようにヤケになり始めたスズがこちらに飛び火させてきましたですよ。無差別爆撃ですよ。


「えぇっ!?ラタンさんはキルヴィさんのお姉さんなのでしょう?意味が違うのでは?」


呆気にとられた様子のモーリーさんがそんなことを言うので、


「いや?ボクはキルヴィを愛してますよ」


ついついそう言ってしまった。僕の発言でざわめく場内。知ってたと言う顔のニニさん、やはりそうかといった感じに頷くグミさんとなんと!と言ったきりこちらをまじまじとみてくるカシスさん。したり顔になるスズとモーリーさん。しまった、いつの間にか共闘をしていた2人に謀られたのです!


その後の記憶は曖昧ですがアンを寝かしつけたクロムがそろそろ食事の用意をしていいかと様子を見に食堂へと訪れた所、そこには崩壊し荒れ果てた姿の部屋に真っ白に燃え尽きたボク達がいたそうなのです。

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