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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
2区画目 少年時代
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解呪

「これは……徐々に呪いを解除していく魔法なのです」


ツムジさんから受け取った本を最後まで読み進んだラタン姉が本を閉じてそう言う。僕はというとアンちゃんに町で買ってきたお菓子を並べて見せていた所であった。


「それってどういう事なのラタン姉?」


「命の灯火でいうならば、一瞬の治療と引き換えに寿命を削るという魔法でした。その寿命のコストをある程度なかったことにする代わりに治療も解除されていく、そんな感じになるんですかね」


延命した時点で寿命は削られている。ロスしたぶん含めて全てをなかったことにするというわけにはいかないそうだ。


「他の触媒を介した黒魔法とかの儀式や呪いならば症状が治るだけで良かったのかもしれませんがね、厄介なのはこれが回復魔法ということです。解除されていくということは怪我した状態に戻していくということです」


「それって、激痛を伴いませんか!?」


命の灯火をかけられる前クロムがどんな有様であったかを伝え聞いていたモーリーさんがその言葉に食いついた。実際にこの目で見た僕としても生きているのが不思議なレベルだったし不安なモーリーさんの気持ちもわかる。


「もちろん、痛むでしょうね。スズ、解除は緩やかにされていきます。普通の回復魔法で解除されて傷に戻った所へ治療をかけていってください。できなければクロムは死ぬこととなるでしょう」


聞いてる分にはリスクが高すぎる。これで進めてしまって良いのだろうか?他に方法を見つけることはできないだろうか?誰からともなくクロムの方を見る。視線が自分へと集まった事を感じるとクロムは腕を組んで少し考えたようであった。


「私は、何が何でも生きたいです。それに対して2年というのはあまりに短すぎると思ってます。ツムジさんという一流の商人が自分の持てる全てを持ってしても見つけることのできなかったあるかもわからない他の解決策を探すギャンブルよりは、その治療、試して見たいと思います」


本人の出した答えはこうであった。ならば僕達は本人の意思を尊重するほかあるまい。


「回復魔法なら私の力も使ってください。これでもそこそこの使い手なのです」


話を聞いていたグミさんが立ち上がり、そういってくれる。ニニさんも立候補してくれようとしたが、流石にどんな負荷がかかるかわからないものに妊婦を参加させるわけには行かないと気持ちだけ受け取ることにする。


「しかしトトさん、私達にも何か手伝えることはないかなー?」


少ししょんぼりした様子のニニさんの頭を撫でながらトトさんは僕の方に向き直る。


「台所と食材を貸してもらいたいなー。今の私達に出来ることはこんなことくらいで申し訳ないけども」


どうやら調理をしてくれるそうだ。使用人の2人が動けなくなるこの状況に対してそれは素直にありがたいことであった。


「はてさて困りました。私にも手伝える事がないですかね?」


セラーノさんがそういってくれる。


「では、薪などを用意していただけないでしょうか?火の魔法を使う2人がこちらにかかりっきりとなると暖をとるのが難しくなると思いますし」


「それならばおやすいご用です。ちょっと森に出かけてきますね」


「わっ、私も出るぞ。セラーノ殿は万全の体調ではないのだからな」


森へと出かけるセラーノさんについて行くようにカシスさんが慌てて飛び出していった。


「モーリー、悪いがちょっと見せられない姿になってしまうから部屋に戻ってくれないかな?」


クロムがモーリーさんを気遣い、そう告げるとギュッとクロムの手を取ってイヤイヤするモーリーさん。


「私には大それた回復魔法を使う事はできませんが、せめて貴方のそばにいさせて下さい」


「モーリー……ありがとう、近くにいてくれて。本当は不安で仕方がないんだ。でも、君が近くにいるならば頑張れるよ」


そして、覚悟を決めた顔でこちらに向き直るクロム。


「キルヴィ、この治療には魔力も集中力も時間もかかります。ボクの魔力では心許ないので以前ボクがアンジュにして見せたように魔力供給をお願いします」


おそらくここにいる全員を足しても、僕の方が魔力が多いのだ。それくらいの役にはたとう。


かくして治療は始まったのであった。ラタン姉が僕の魔力を使って解呪の魔法を使い始めると、クロムの鍛えられた、健康だった肌がだんだんと青黒く変色していく。中から壊されていくのだろうか?想像できない痛みに対してクロムが必死に声を押し殺していた。


すぐにスズちゃんとグミさんが回復魔法を始める。今できた傷は治ったが、次から次へと傷が浮かび上がってくる。


「クロムさん!しっかり!私はここにいますから!」


モーリーさんが叫んでいるのが遠くに聞こえる。魔力の供給だけだというのに少しでも気を抜いたら他のものも全て持っていかれてしまいそうな、そんな感覚。


果たしてどれだけの時間が経っただろうか?1時間?2時間?本当はまだ1分も経っていないかもしれない。そんな感じに感覚が麻痺してきた頃、ラタン姉がもういいですよと言った。


「お疲れ様なのです。無事、解呪できたのです」


いつの間にか戻ってきていた他の皆からの歓声が上がる。クロムはどうやら失神しているようだった。無理もないだろう、むしろ声も出さずによく耐えたと褒めてあげないといけないくらいだ。


「モーリーさんもお疲れ様なのです。見ていて辛かったでしょう?」


「いえ、私は何もできず本当に近くにいただけで」


「十分なのですよ。それがクロムにとってどれだけ心の支えとなったことか。力はあっても、こういうのは最後は本人の力なのです。クロムが貴方を想い、この世にとどまりたいと強く願うからこそ成功できたのですよ」


「そう、だと嬉しいですね」


その時やり切れたと気が緩んだのか、ラタン姉のお腹が可愛く鳴いてみせた。あちゃあ、締まらないのですと恥ずかしそうにするラタン姉に対して皆自然と笑みが零れた。


「さあ皆さん疲れたでしょうー?腕によりをかけて作らせていただきました。早速食べましょうか!」


疲れた体にアムストルでも美味であったトトさんの料理が振舞われ、僕達は舌鼓をうつのであった。

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